美容師が独立開業するのに必要な準備や流れ。開業費はいくら?

更新日:2021/08/08
美容室社長中村英二

世の中の美容師さんは「いつかは独立したい」と考えてる人も多いかと思いますが、いざ実際に独立開業しようと思うと「何から手を付けて良いか分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方の為に、現在複数店舗の美容室を経営している私が考える、必要な準備や流れを詳しくご紹介します。

独立開業までのおおまかな流れ

まずは独立開業までのおおまかな流れについてお伝えします。私のおすすめは下記の手順となります。

  1. 独立への想いや理念の確認
  2. ゴール設定
  3. 事業計画の作成
  4. 資金調達&物件の確保&内外装業者の選定
  5. 内外装工事&美容機器・備品調達&広告物の準備
  6. お店オープン

まずは独立への想いや理念の確認をした上でゴール設定を行いましょう。ゴールが決まったら、そこからの逆算で事業計画を作成します。その事業計画を基に、資金調達、物件の確保、内外装業者の選定を行います。

無事物件が契約できたら、工事スタート。それと同時進行で美容機器や備品を調達し、ロゴやショップカードなどの広告物を準備しましょう。

中村英二

仲間を誘って複数人で独立をする場合には、上記の④に「仲間のケア」が入ります。④、⑤は複数のことを同時に進めなければいけないのでかなり大変ですね。

独立への想いや理念の確認

美容室で働く男性スタイリスト

まず第一に行っていただきたいのは、独立への思いや理念に関して自分自身への確認です。そもそもなんで独立したいのか?するのか?もしくはしなければならないのか?を考えましょう。「年収一千万以上を稼ぎたい。」でも「他にはないおしゃれな美容室を造りたい。」でも、自分の理想を言語化できればOKです。

ゴール地点の設定

理念が固まったら次はゴール地点の設定をしましょう。意外とこのゴール地点の設定無しでなんとなくお店を開業してしまう美容師さんが多いと感じます。

例えば30歳で独立開業したら人生100年時代と言われてるので、70年ありますね…と言っても流石に100歳になった時の自分は想像しづらいとは思いますが、せめて”その独立開業のゴール設定”はしなければなりません。「一人で自分のお店をもって生涯現役美容師でい続ける。」なのか「50店舗以上のチェーン店を目指す。」のか「企業価値を高めて、将来は数億円で売却する。」のか、人によって様々なゴールがあるとは思います。言い換えれば『出口戦略』とも言えますね。

中村英二

僕たちのサロンに相談に来られる方で1人でお店を初めて、最初は楽しかったけど10年以上経過して今後何をやればいいのかわからなくなり相談に来られる方が本当に多いです。ですので独立開業はしっかりと事前にゴール地点を決めて、高い志を持ってそこに邁進していって下さい。もちろん途中で軌道修正はあっても良いのです。一番大事なのは独立開業が【目的】にならないようにすることです。

事業計画の作成

事業計画書

理念やゴール地点が決まったら、そこまで到達するまでのプロセスである事業計画を作成しましょう。これは後で解説する資金調達の際にも必要になります。事業計画で決めるべき内容について詳しくお話しします。

サロン名とコンセプトを決める

事業計画策定をするにあたって、まずはサロンの名前とコンセプトを決めます。美容師さんは拘りが強い人が多いので、どうしても自分よがりなサロン名やコンセプトを掲げてしまう印象があります。もちろん自分の理想は大事ですが、世の中の人達に受け入れられやすいコンセプトや、わかりやすいサロン名にした方が無難です。

そしてサロン名に関しては皆さん見落としがちですが商標登録のチェックもしておいた方がよいと思います。商標に関して飲食業界では訴訟まで発展しているケースが多々あり、近年美容業界でもトラブルに巻き込まれてるサロンが増えてきてます。

特許庁のホームページや商標絡みの団体が運営しているホームページにて簡単に検索できますのでサロン名は、そちらで検索してみるのがお勧めです。

そして検索してみて特に該当なければ商標の申請を先に行いましょう。自分でも出来ますがそれらの申請業務を行えるプロの弁理士に依頼する事もできます。サロン名だけの申請でしたら10万~20万前後の報酬で行ってくれる所が多いので近場の弁理士さんを探して相談してみるのが良いと思います。

初期投資を算定する

続いて初期投資を算定しましょう。美容室は開業するにあたっては、主に物件取得費、内外装工事費、美容機器、材料代、備品代、広告宣伝費、求人費、運転資金の8つのお金が必要になります。その内、ボリュームゾーンは物件取得費、内外装工事費、美容機器です。1人で開業する場合と複数の仲間を集めて開業するパターンでは初期費用も大きく変わってきますので2パターンに分けて解説します。

1人独立のパターン

まずは1人独立のパターンでの初期投資額を考えていきましょう。ここでは、10坪程度、賃料10万円の物件で、セット面は3席、シャンプー台1台とします。また、スケルトンにてお店を造る想定で、広告宣伝費としてHotpepper Beauty代を10万円、その他ロゴやショップカード等で10万円の合計20万円とした場合とします。

項目費用
物件取得費110万円
内外装工事費400万円
美容機器80万円
材料代20万円
備品代30万円
広告宣伝費20万円
求人費0円
運転資金100万円
合計760万円

合計で760万円かかりますね。物件取得費は交渉して低く抑える事ができますが、今回は一般的にかかる保証金賃料の6ヶ月分、空家賃2ヶ月分、礼金1ヵ月分、仲介手数料1ヵ月分、保証会社手数料1ヵ月分費用を計上してます。

内外装工事費はふり幅があるのですが、一般的な工事費として坪あたり40万円にて計算をしてます。

求人費は1人なので必要ではないですね。運転資金に関しては自分の最低限度の生活費は覗いて100万程用意しておくのが目安でしょう。その他抑えられる項目はまだありますが、一般的にはこれぐらいはかかります。

仲間を複数人集めての独立パターン

続いて仲間を複数人集めての独立パターンの初期投資額を考えていきましょう。お店は20坪程度で賃料20万円の物件で、セット面6~7席、シャンプー台3台とします。スケルトンにてお店を造る場合で、広告宣伝費としてHotpepper Beauty代を30万円、その他ロゴやショップカード等で10万円の合計40万円とした場合です。

項目費用
物件取得費220万円
内外装工事費800万円
美容機器160万円
材料代40万円
備品代60万円
広告宣伝費40万円
求人費0円
運転資金150万円
合計1,470万円

求人費はスタート時は縁故にてスタートするのが多いので経費に入れていませんが、合計で1,460万円かかりました。1人独立のパターンの倍程かかるイメージですね。

中村英二

ご覧いただいて分かると思いますが、一番経費がかさむのは内装工事費です。ですので経費削減したい場合は、ここを抑えれば良いということになります。例えばスケルトンから内装工事をするのではなく、潰れた美容室を居抜で買い取ればかなり内装工事費を抑えられますね。

開業費0円で済ませたいなら独立支援制度を活用するのも有効

上記の通り独立開業には結構なお金がかかります。こういった開業費をかけずに独立する方法として「独立支援制度」を利用するという手もあります。多店舗展開している美容室会社で制度を設けている場合が多いです。

制度の内容は会社によって様々ですが、私の経営するイーグラント・コーポレーションでは、開業費0円で既存店を引き継いで独立できるという内容になっています。毎月固定費を納めてもらうことになりますが、既にお客様もスタッフも定着している利益店を引き継げるので、独立後の自身の収入の目途が立ちやすいのがメリットです。

売上と利益の計画を立てる

初期投資の算定を終えたら売上と利益の計画を立てましょう。

1人独立のパターン

オーナーさんが1人で営業して1日平均35,000円の売上で月6日休みで24日営業。1ヵ月84万円で材料費は売上の10%と想定します。

売上84万円
原価8万4千円
家賃10万円
広告費10万円
光熱費2万円
備品代2万円
利益51万6千円

「51万が収入になるんだ!」と思った方は要注意です!ここから初期開業時に借り入れた返済額を引いたお金がオーナーさんの手残りです。そしてお店の為の内部留保を積み上げておきたいですし税金の支払いもあるので、実際これぐらいの利益でしたら30万~35万円ぐらいが純粋にオーナーさんが給料としてとれる額になるかと思います。

仲間を複数人集めての独立パターン

固定費は初期投資時に設定した額で、営業日数24日、スタッフはオーナースタイリスト入れてスタイリスト3人の場合とします。1ヵ月1人当たり売上70万円で店月商210万円。原価率10%、人件費50%にて算出しました。1人当たり売上に関して、1人でやっている所より複数人集まっているサロンの方が低い傾向があるので、今回は70万円にて想定しています。

売上210万円
原価21万円
人件費105万円
家賃20万円
広告費30万円
光熱費5万円
備品代4万円
利益25万円

25万円が利益となります。こちらが借り入れ返済やお店の内部留保と税金の支払いにまわす原資となります。なお、オーナーさんの給料は自分で売り上げた70万円の50%の35万円を取ってる想定です。

返済計画の作成

各々のサロンパターンでの売上と利益の算定が完了したら、その利益を元に返済計画の作成を行いましょう。これはもちろん、開業資金や運転資金を資金調達している方向けのお話ですので、ご自身の貯金で開業される方には必要ありません

中村英二

日本政策金融公庫で借りた場合は、借入期間は基本5年で、最長7年まで引き延ばせます。会社のキャッシュフロー(資金繰り)を良くするためにも、7年返済で考えると良いと思います。また「据置期間」といって元金の返済が猶予される期間もありますので、公庫の担当の方に相談してみるといいでしょう。

資金調達&物件の確保&内外装業者の選定

美容室の内装

独立に対する思いや理念の整理、ゴール設定、事業計画が揃ったら、今度は資金調達と物件の確保と内外装業者の選定です。これは少し大変ですが全て同時に行う必要があります。また、仲間を集めて行うパターンの場合はプラスで仲間のケアが必要になります。

資金調達

資金調達は国の銀行である日本政策金融公庫の新創業融資制度を活用するのが一般的です。無担保無保証での調達が可能です。設定した初期投資額に合わせて融資の申請を行います。調達規模にもよりますが、最低でも200万円~300万円の自己資金は準備しておきましょう。ある程度の自己資金の準備は融資を受ける際の評価対象にもなります。

物件の確保

物件に関しては事業設計に合わせた経済条件の物件を探さないとなりません。定めた街や沿線等、インターネットで検索すると店舗物件専門のサイトなどでも探す事はできますが、インターネット上に公開されてない物件も多数あるので実際に街歩きをしてみるのも一つの手です。

街歩きをしてるとインターネット上に公開されてないけど【テナント募集】の張り紙をしている物件をみつける事もありますし、町場の小さな不動産屋さんが、地元のビルオーナーや地主と仲がよくて一般公開されていない店舗物件を扱っていたりします。なので、街歩きしながらそう言う不動産屋さんに飛び込んでみたら思わぬ収穫を得られる可能もあるので、そちらもお勧めです。

内装業者の選定

内装業者の選定に関しては、ネットで『美容室 内装』等で検索すると様々な業者さんがヒットしますし、知り合いの美容師さんや美容室経営者の方に信頼できる内装屋さんを紹介してもらうのも一つの手です。初期投資の算定時に例として内外装工事は坪あたり40万と出しましたが、内外装は高くしようとすればいくらでも高くなりますし、安くしようとすればいくらでも安くはなります。ただ、高いのは高いなりですし、安いのは安いなりのクオリティとなります。そして坪数が増えれば増えるほど坪当たり単価は低くなる傾向があります。

業者選定時に捻出できる予算と抑えてほしいポイント(これは具体的に細かく伝えられるだけ伝えた方が良いですね)を伝えて、その予算内でどこまでのクオリティで造れるかを2~3社にて相見積もりをとった方が良いです。相見積もりを取る場合はその業者にはマナーとして必ず伝えましょう。

仲間のケア

仲間を集めて開業するパターンの場合は仲間のケアが必要になってきます。声掛けしてる仲間は現状でどこかのサロンに勤めてると思いますが、まず第一前提として、そこのサロンを【変な辞め方】はさせないようにしましょう。

退職にあたってはサロン独自のルールがある所がほとんどです(退職の時期だったり既存顧客の対応や移籍する店舗の場所だったり)。そのルールには則ってもらい、なるべく迷惑にならない退職を進めて、キチンと働かせて頂いている職場への感謝の心は持たせましょう。『労基的には関係ないから良いっしょ!!』と言う考えだと道義的によくはないですし、そう言う心構えのサロンオーナーはいつか必ず自分にそのまま返ってきますね…。

もう一つ大事な点は、仲間を集めてサロン開業を行う場合は必ずその仲間の将来を考えるということです。人は歳をとりますし、歳と共に物事の考え方やライフステージも変化するものです。仲間を誘う場合はその人の一生を背負う覚悟がないと、いずれその人達は離れていってしまいますね。将来が明るくないと、その人達も『ここにいても先がないなぁ…』となり、オープニングメンバーで集まってくれた仲間が、1人辞め、2人辞め、最後はオーナーただ一人だけが残る、、、なんてサロンも世の中多い印象です。売上の頭数だけ揃える考えでしたら仲間集めは止めて1人でお店をオープンさせましょう。その方が賢明です。

中村英二

これらを経て、仲間が集まって来てくれる事が確定していたら、その仲間達のケアもしっかり行いましょう。特に物件も何もかも決まってない段階でしたら『結局いつお店やるの?』と不安になってしまいます。マメに連絡取り合ったり理念を共有したりと集まってくれる仲間達がテンション上がる行動は常にして行く必要があると思います。

実際に使用している美容室オープンまでの工程表を公開!

こちらが普段私たちのサロンが使用してるオープンまでのやるべき事の工程表です。私たちのサロンは個人のサロンよりかは規模感があり大きめのサロンなので、やるべき事で当てはまらない項目もあるのかなと思いますが、参考にして頂けたらと思います。

オープンまでの工程表

保健所への申請

保健所の申請は内外装のレイアウトが確定した時点で、まずは先に相談をした方が良いでしょう。換気扇の数や面積当たりのシャンプー台の数や消毒器の数等、細かく規定があるので事前に相談した方が良いですね。

美容機器の調達

美容機器に関しては最寄りのディーラーでも良いですし、そこまで拘りが無ければビューティーガレージなどでも中古品が安く出揃っているので、そちらも上手に活用することをおすすめします。

備品の調達

美容機器以外の備品周りの購入は、ネットショッピングだとAmazonや楽天、アスクルソロエルアリーナでの購入が私たちは多いです。

リアル店舗での購入は100円均一ショップ、ホームセンター、家電量販店での購入が主です。なので、サロンの近くにこれらの店舗が揃っているのは嬉しいポイントですね。

中村英二

ネットの発注もそうですし、100均もちょこちょこ行くのは凄く大変ですから(特に100均は必ずちょこちょこ行く羽目になります)、エクセル等で買う物をリスト化しておく事をおすすめします。

実際に使用している内外装工事のスケジュール表

内外装工事の工程やオープンまでのスケジュール表はこちらです。見ていただいて分かる通り、内外装の工事は1カ月~1カ月半くらいは要します。工事完了後からオープンまでの準備期間は、通常で搬入や機材の整理、追加の買い出しや予期せぬ事態もあるので予備日も含めて10日間程度はみておいた方が良いと思いでしょう。短くても一週間以上はとっておいた方が確実ですね。

内外装工事のスケジュール表

工事期間中は業者さんの邪魔にならない程度に工事のチェックをしに行っても良いと思います(床貼りしている時は中に入れないですが)。その時に何か工事期間中に気になる箇所があった場合で、その場に元請けの会社が居ない場合は現場の職人さんに伝えるのではなく必ず元請けの会社に連絡して伝えましょう。意思伝達は一本化しないと現場が混乱してしまいますね。

ただ、後出しで追加要望を出してしまうと工期が遅れてしまったり、追加料金がかかってしまう場合があるので、最初の現地調査の時や見積りを提出してくれる時に出来るだけ細かく掘り下げて擦り合わせはしておいた方が良いです。

カットシャンプーで来店されたお客様がカット中に突然カラーもしたいと言われたら戸惑ってしまいますし、料金も別でかかってしまいますよね?それと一緒です。お互い『後だしジャンケンはトラブルの元』と言うのは念頭においておいた方が良いでしょう。

とは言え業者さんによっては、その場のアドリブで工期内&予算内にて追加要望を聞いてくれるパターンもあります。どうしても妥協できない箇所があった際は交渉してみるのも良いと思います。

中村英二

仲間を集めて開業する際には、工事中の現場を見せるのも良いでしょう。『ここでオープニングで働くんだ』とイメージが湧いて、モチベーションが上がるかもしれません。

工事中の郵送物に注意

ちょっと細かいですが、ネット発注した備品を店舗に郵送する際に工事完了後に到着設定が出来ない場合があります。その場合は、郵送の備考欄に『工事中ですが中で作業してる人に渡して下さい』と書いておく事をおすすめします。

そうしておかないと配送屋さんは「まだお店が無いのかな」と勘違いして持って帰ってしまい2度手間になってしまいます。中で作業してる人には、郵送物を受け取ったら、お店の隅の邪魔にならない場所に置いておくように事前にお願いしておきましょう。

ご近所さんへの挨拶回りを忘れずに

商売をやる上でご近所付き合いは大事です。自分の店舗近隣でお店屋さんがあったら、そちらへの挨拶周りも菓子折りを持参してマメに行いましょう。その時にお店のリーフやパンフレットも置かせてもらえるようでしたら置かせてもらった方が良いですね。

さて、いよいよグランドオープン!末永く地域に根差したサロンにしていってくださいね★

まとめ

ここまで独立を思い立ってから新店舗オープンまでの一通りの流れを解説しましたが、いかがでしたでしょうか?1店舗の美容室を出店するのに色々とやるべき事はありますが、2号店目以降に関してはやるべき事は変わらなくなるかわりに『集客』『求人』『組織の構築』『財務』がもっとも大事なテーマになるのかなと思います。「独立したい!」という美容師さんのお役に少しでも立てたら嬉しいです。

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

Home > 美容室の独立開業に関するお役立ち知識 > 美容師が独立開業するのに必要な準備や流れ。開業費はいくら?