美容室開業に必要なこと全て!流れと準備や手続き、資金を解説

更新日:2024/03/19
美容室社長中村英二

世の中の美容師さんは「いつかは独立して、自分の美容室を開業したい」と考えてる人も多いかと思いますが、いざ実際に独立開業しようと思うと「何から手を付けて良いか分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな方の為に、現在美容室を複数店舗を経営している私が考える、美容室開業の流れや必要な手続き、資金、準備などを詳しくご紹介します。実際に使用している工程表やスケジュール表も必見です!

美容室開業に必要な資格

まず美容室を開業するためには下記の資格が必要です。

美容師免許

必須なのが美容師免許です。保健所で開設届を提出する際にも美容師免許証が必要になります。なお、オーナーであるあなたが美容師免許を取得していなくても、実際に現場で働く従業員が所持していれば問題ありません。

管理美容師

1人のお店ではなく、スタッフを雇用する場合は管理美容師の資格も必要になります。管理美容師は、美容師免許を取得してから3年以上の実務経験があり、かつ全3日間の管理美容師講習会を受講した人のみが取得できる免許です。

管理美容師講習会は毎年開催されますが、地域によっては年1回だけですし、エントリーしても抽選にこぼれる場合があるので、取ろうと思ったらすぐに取れるという免許ではありません。その為、今すぐに美容室を開業しようとは考えていない方でも、前もって早めに講習会を受講しておくことをおすすめします。

開業までのおおまかな流れ

美容室を開業する為に必要な資格が揃ったら、いよいよ開業準備となります。まずは、おおまかな流れについてお伝えします。私のおすすめは下記の手順となります。

美容室開業の流れ
  1. 開業への想いや理念の確認&ゴール設定
  2. 日本政策金融公庫で資金調達可能額を相談
  3. 事業計画の作成
  4. ディーラーの選定&契約
  5. 資金調達&物件の確保&内外装業者の選定
  6. 保健所・消防署への事前確認
  7. 電気ガス水道ネット周りの契約
  8. 内外装工事&美容機器・備品調達
  9. ポータルサイトとの契約&広告物の準備
  10. ゴミ業者・キャッシュレス決済会社の選定&契約
  11. 保健所と消防署での手続き&検査
  12. 美容室オープン
  13. 税務署へ開業届等を提出

まずは独立への想いや理念の確認をした上でゴール設定を行いましょう。ゴールが決まったら、続いて自分は開業資金としていくら使えるのかを確認します。自己資金だけで開業できれば良いですが、足りない場合は資金調達を考えなければいけません

スタンダートなのは国の機関である日本政策金融公庫に借りる方法です。ですので、初期のタイミングで日本政策金融公庫へ出向いて、自己資金や保証人&担保の状況を伝えて調達見込み額を確認しておきましょう。

ゴール設定と初めの開業資金額が決まったら、そこからの逆算で事業計画を作成します。その事業計画を基に、資金調達、物件の確保、内外装業者の選定を行います。

無事物件が契約できたら、工事スタート。それと同時進行で美容機器や備品を調達し、ロゴやショップカードなどの広告物を準備しましょう。

オープン前には保健所と消防署の検査が必要ですし、オープン後は税務署へ開業届等を提出するなど、様々な手続きも必要になってきます。

③~⑦は複数のことを同時に進めなければいけないのでかなり大変。また、仲間を誘って複数人で独立をする場合には、上記の他に「従業員の心のケア」が入ります。

独立への想いや理念の確認&ゴール地点の設定

美容室で働く男性スタイリスト

開業への想いや理念の確認

まず第一に行っていただきたいのは、美容室開業への思いや理念に関して自分自身への確認です。そもそもなんで開業したいのか?するのか?もしくはしなければならないのか?を考えましょう。「年収一千万以上を稼ぎたい。」でも「他にはないおしゃれな美容室を造りたい。」でも、自分の理想を言語化できればOKです。

ゴール地点の設定

理念が固まったら次はゴール地点の設定をしましょう。意外とこのゴール地点の設定無しでなんとなくお店を開業してしまう美容師さんが多いと感じます。

例えば30歳で独立開業したら人生100年時代と言われてるので、70年ありますね…と言っても流石に100歳になった時の自分は想像しづらいとは思いますが、せめて”その独立開業のゴール設定”はしなければなりません。

「一人で自分のお店をもって生涯現役美容師でい続ける。」なのか「50店舗以上のチェーン店を目指す。」のか「企業価値を高めて、将来は数億円で売却する。」のか、人によって様々なゴールがあるとは思います。言い換えれば『出口戦略』とも言えますね。

僕たちのサロンに相談に来られる方で1人でお店を初めて、最初は楽しかったけど10年以上経過して今後何をやればいいのかわからなくなり相談に来られる方が本当に多いです。ですので独立開業はしっかりと事前にゴール地点を決めて、高い志を持ってそこに邁進していって下さい。

もちろん途中で軌道修正はあっても良いのです。一番大事なのは独立開業が【目的】にならないようにすることです。

事業計画の作成

事業計画書

理念やゴール地点が決まったら、そこまで到達するまでのプロセスである事業計画を作成しましょう。これは後で解説する資金調達の際にも必要になります。事業計画で決めるべき内容について詳しくお話しします。

サロン名とコンセプトを決める

事業計画策定をするにあたって、まずはサロンの名前とコンセプトを決めます。美容師さんは拘りが強い人が多いので、どうしても自分よがりなサロン名やコンセプトを掲げてしまう印象があります。

もちろん自分の理想は大事ですが、世の中の人達に受け入れられやすいコンセプトや、わかりやすいサロン名にした方が無難でしょう。

商標登録のチェックを忘れずに

皆さん見落としがちですが、サロン名は商標登録のチェックもしておいた方がよいと思います。

商標に関して飲食業界では訴訟まで発展しているケースが多々あり、近年美容業界でもトラブルに巻き込まれてるサロンが増えてきてます。

特許庁のホームページや商標絡みの団体が運営しているホームページにて簡単に検索できますので、希望のサロン名で検索してみて下さい。

検索してみて特に該当なければ商標の申請を先に行いましょう。自分でも出来ますが、それらの申請業務を行えるプロに依頼する事も可能。

サロン名だけの申請でしたら10万~15万前後の報酬で行ってくれる所が多いので近場の弁護士さんや弁理士さんを探して相談してみるのが良いと思います。

先ほど決めたサロンのコンセプトを基に、メニュー内容と価格設定を決めましょう。

やりがちな失敗は、今自分が所属しているお店のメニュー内容や価格設定をそのまま適用してしまうケース

「既存顧客を連れてきたいから前と同じメニューや価格にしないと。」という気持ちは分かりますが、メニューや価格を同じにしても既存のお客様が全員来てくれることはありませんし、来てくれてもいずれは自然失客する可能性があります。

ですので、今所属しているお店の内容に合わせるよりも、出店する地域の特徴や、近隣のお店のメニュー構成、マーケティング結果に基づいて、メニュー内容を価格を決めた方が、長続きする美容室になるでしょう。

初期投資を算定する

続いて初期投資を算定しましょう。美容室は開業するにあたっては、主に物件取得費、内外装工事費、美容機器、材料代、備品代、広告宣伝費、求人費、運転資金の8つのお金が必要になります。

その内、ボリュームゾーンは物件取得費、内外装工事費、美容機器です。1人で開業する場合と複数の仲間を集めて開業するパターンでは初期費用も大きく変わってきますので2パターンに分けて解説します。

1人独立のパターン

まずは1人独立のパターンでの初期投資額を考えていきましょう。ここでは、10坪程度、賃料10万円の物件で、セット面は3席、シャンプー台1台とします。

また、スケルトンにてお店を造る想定で、広告宣伝費としてHotpepper Beauty代を10万円、その他ロゴやショップカード等で10万円の合計20万円とした場合とします。

項目費用
物件取得費110万円
内外装工事費400万円
美容機器80万円
材料代20万円
備品代30万円
広告宣伝費20万円
求人費0円
運転資金100万円
合計760万円

合計で760万円かかりますね。物件取得費は交渉して低く抑える事ができますが、今回は一般的にかかる保証金賃料の6ヶ月分、空家賃2ヶ月分、礼金1ヵ月分、仲介手数料1ヵ月分、保証会社手数料1ヵ月分費用を計上してます。

内外装工事費はふり幅があるのですが、一般的な工事費として坪あたり40万円にて計算をしてます。

求人費は1人なので必要ではないですね。運転資金に関しては自分の最低限度の生活費は覗いて100万程用意しておくのが目安でしょう。その他抑えられる項目はまだありますが、一般的にはこれぐらいはかかります。

仲間を複数人集めての独立パターン

続いて仲間を複数人集めての独立パターンの初期投資額を考えていきましょう。お店は20坪程度で賃料20万円の物件で、セット面6~7席、シャンプー台3台とします。スケルトンにてお店を造る場合で、広告宣伝費としてHotpepper Beauty代を30万円、その他ロゴやショップカード等で10万円の合計40万円とした場合です。

項目費用
物件取得費220万円
内外装工事費800万円
美容機器160万円
材料代40万円
備品代60万円
広告宣伝費40万円
求人費0円
運転資金150万円
合計1,470万円

求人費はスタート時は縁故にてスタートするのが多いので経費に入れていませんが、合計で1,460万円かかりました。1人独立のパターンの倍程かかるイメージですね。

ご覧いただいて分かると思いますが、一番経費がかさむのは内装工事費です。ですので経費削減したい場合は、ここを抑えれば良いということになります。例えばスケルトンから内装工事をするのではなく、潰れた美容室を居抜で買い取ればかなり内装工事費を抑えられますね。

開業費0円で済ませたいなら独立支援制度を活用するのも有効

上記の通り独立開業には結構なお金がかかります。こういった開業費をかけずに独立する方法として「独立支援制度」を利用するという手も。多店舗展開している美容室会社で制度を設けている場合が多いです。

制度の内容は会社によって様々ですが、私の経営するイーグラント・コーポレーションでは、開業費0円で既存店を引き継いで独立できるという内容になっています。

毎月固定費を納めてもらうことになりますが、既にお客様もスタッフも定着している利益店を引き継げるので、独立後の自身の収入の目途が立ちやすいのがメリットです。

売上と利益の計画を立てる

初期投資の算定を終えたら売上と利益の計画を立てましょう。

1人独立のパターン

オーナーさんが1人で営業して1日平均35,000円の売上で月6日休みで24日営業。1ヵ月84万円で材料費は売上の10%と想定します。

売上84万円
原価8万4千円
家賃10万円
広告費10万円
光熱費2万円
備品代2万円
利益51万6千円

「51万が収入になるんだ!」と思った方は要注意です!ここから初期開業時に借り入れた返済額を引いたお金がオーナーさんの手残りです。

そしてお店の為の内部留保を積み上げておきたいですし税金の支払いもあるので、実際これぐらいの利益でしたら30万~35万円ぐらいが純粋にオーナーさんが給料としてとれる額になるかと思います。

仲間を複数人集めての独立パターン

固定費は初期投資時に設定した額で、営業日数24日、スタッフはオーナースタイリスト入れてスタイリスト3人の場合とします。

1ヵ月1人当たり売上70万円で店月商210万円、原価率10%、人件費50%にて算出しました。1人当たり売上に関して、1人でやっている所より複数人集まっているサロンの方が低い傾向があるので、今回は70万円にて想定しています。

売上210万円
原価21万円
人件費105万円
家賃20万円
広告費30万円
光熱費5万円
備品代4万円
利益25万円

25万円が利益となります。こちらが借り入れ返済やお店の内部留保と税金の支払いにまわす原資となります。なお、オーナーさんの給料は自分で売り上げた70万円の50%の35万円を取ってる想定です。

返済計画の作成

各々のサロンパターンでの売上と利益の算定が完了したら、その利益を元に返済計画の作成を行いましょう。これはもちろん、開業資金や運転資金を資金調達している方向けのお話ですので、ご自身の貯金で開業される方には必要ありません

日本政策金融公庫で借りた場合は、借入期間は基本5年で、最長7年まで引き延ばせます。会社のキャッシュフロー(資金繰り)を良くするためにも、7年返済で考えると良いでしょう。

また、「据置期間」といって元金の返済が猶予される期間もありますので、公庫の担当の方に相談してみることをおすすめします。

税理士と顧問契約を結ぶ

売上・利益の計画や、返済計画は、この後の資金調達の際はもちろん、今後の経営において非常に重要です。事業計画を作成するタイミングで税理士さんと顧問契約を結んでおけば、売上・利益の計画や、返済計画について相談ができるのでおすすめです。

顧問税理士は、今後長い付き合いになりますので、よく考えて選ぶようにしましょう。何人かの人と実際に合って話してみて、比較検討することをおすすめします。

美容室の税務経験がある人だと心強いですよね。さらに欲を言うなら、税務だけでなく財務の相談に乗ってくれる方がベストですよ。

美容ディーラーとの契約&発注材料の決定

美容室を運営するからには、シャンプーやトリートメント、カラー剤、パーマ液などの材料をはじめ、グローブやクロスなどといった仕入れが定期的に必要です。

様々なメーカーの商材をまとめて仕入れるために、一般的には美容室向けの商材を取り扱っているディーラーと契約し、定期的に発注し届けてもらうことになります。

お店のコンセプト、想定客単価、メニュー内容から、仕入れたい材料は自然と絞られてくるでしょう。

希望する材料の取り扱いの有無や、その金額、また送料が1回辺りいくら以上の発注額なら無料になるかなどを確認して、取引するディーラーを決めていきます。

日本の大手美容ディーラー一覧

美容ディーラー会社URL
きくや美粧堂https://www.kikuya-bisyodo.co.jp/
GAMOhttps://www.gamo.co.jp/
ダリアhttps://www.dalia.co.jp/
フジシンhttps://fujishin.co.jp/

大手で有名な美容ディーラーと言えば上記4社ですが、他にも地域に根差した小規模なディーラーさんならたくさんあります。同じ商材でもディーラーさんによって、契約内容などによって卸値は変わってきますから、複数社から話を聞いてみることをおすすめします。

美容機器の調達

美容機器に関しては最寄りのディーラーでも良いですし、そこまで拘りが無ければビューティーガレージなどでも中古品が安く出揃っているので、そちらも上手に活用することをおすすめします。

資金調達&物件の確保&内外装業者の選定

美容室の内装

独立に対する思いや理念の整理、ゴール設定、事業計画が揃ったら、今度は資金調達と物件の確保と内外装業者の選定です。これは少し大変ですが全て同時に行う必要があります

資金調達

資金調達は国の銀行である日本政策金融公庫の新創業融資制度を活用するのが一般的。無担保無保証での調達が可能です。

設定した初期投資額に合わせて融資の申請を行います。融資審査では自己資金・信用情報・事業計画の三つで審査されます。ここで、先ほど作成した事業計画書が活きてくるわけです。結果は、融資審査の申し込みから1ヶ月ほどで出ます。

十分な自己資金があるか

調達規模にもよりますが、自己資金は最低でも200万円~300万円は準備しておいて下さい。具体的には、必要な資金のうち約1/3は自分で用意することをおすすめします。

公庫の審査基準には「創業資金総額の1/10以上の自己資金がある」と記載がありますが、多いに越したことはありません。

信用に値する経営者か

審査の際、あなた個人の信用情報も必ず審査させます。見られるポイントは主に以下の3点です。

  • クレジットカードやローンの残高や返済状況
  • 公共料金などの支払いの遅延はあるか
  • 税金の支払いの遅延はあるか

なお、個人の信用情報は株式会社CICという信用情報機関から照会することができます。

相談は事前にしておくと吉!

実際に借り入れを申し込むのはこのタイミングになりますが、融資相談自体は事前にしておくことをおすすめします。

事前に融資相談をしておくことで、融資担当の方と顔見知りになれますし、創業計画書もかける範囲で埋めたものを持っていけば添削してくれたり、他にどのような書類があったら良いかなどもアドバイスをくれるでしょう。

物件の確保

物件は事業設計に合わせた経済条件の物件を探さないとなりません。お客様に足を運んでいただかないといけない『店舗ビジネス』である美容室は、この物件次第で勝敗が分かれると言っても過言ではありません

人口規模がどのくらいの街で、競合となる美容室がどのくらいある街でやるのか。駅から徒歩何分の立地にするか、路面店にするか2階より上の物件でするか、そして家賃はいくらなのか、ホットペッパーの掲載費はいくらなのか…(ホットペッパーの掲載費は地域により異なりますので物件を決める前に必ず確認しましょう)。

家賃は毎月固定費でかかってきますし、お店は作ったら簡単に移転することはできません。そのため、物件探しは焦って妥協したりせず、よくよく考えた上で決めることをおすすめします。

ネット情報だけでなく、街歩きで掘り出し物件を探して!

インターネットで検索すると店舗物件専門のサイトなどでも探す事はできますが、インターネット上に公開されてない物件も多数あるので実際に街歩きをしてみるのも良いでしょう。

街歩きをしてるとインターネット上に公開されてないけど【テナント募集】の張り紙をしている物件をみつける事もありますし、町場の小さな不動産屋さんが、地元のビルオーナーや地主と仲がよくて一般公開されていない店舗物件を扱っていたりします。

街歩きしながら不動産屋さんに飛び込んでみたら思わぬ収穫を得られることもありますよ。

内装業者の選定

内装業者は、美容室の施工実績が豊富な業者の中から選ぶことをおすすめします。後ほど、保健所での手続きと必要書類のところで詳しくお話ししますが、美容室として開業するには、面積や床材、照明、換気等様々な規定をクリアしなければいけません。その為、美容室の施工に慣れた業者を選ぶ必要があるのです。

ネットで『美容室 内装』等で検索すると様々な業者さんがヒットします。また、知り合いの美容師さんや美容室経営者の方に信頼できる内装屋さんを紹介してもらうのも一つの手です。

内装費用はピンキリ。必ず複数社から見積りを取って

初期投資の算定時に例として内外装工事は坪あたり40万と出しましたが、内外装は高くしようとすればいくらでも高くなりますし、安くしようとすればいくらでも安くはなります。

はっきり言って、高いのは高いなりですし、安いのは安いなりのクオリティです。そして坪数が増えれば増えるほど坪当たり単価は低くなる傾向があります。

業者選定時に捻出できる予算、抑えてほしいポイント(これは具体的に細かく伝えられるだけ伝えた方が良いですね)、現地調査後の見積もり提出日の期日を伝えて、その予算内でどこまでのクオリティで造れるかを2~3社にて相見積もりをとりましょうマナーとして、相見積もりを取る場合はその旨を業者に必ず伝えて下さいね。

見積り時に業者に必ず伝えること

内装工事でやりがちなミス

上記のミスは、私が実際にやってしまったミスです…。みなさんは間違わないようにお気を付けくださいね!

保健所での手続きと必要書類

美容室として開業するためにはお店の所在地を管轄する保健所へ開設届等を提出し、確認検査を受け、営業許可を得る必要があります。必要な提出書類は下記の通りです。

  • 開設届
  • 施設の平面図
  • 構造設備の概要
  • 従業者名簿
  • 医師の診断書
  • 管理美容師講習会の終了証(原本)
  • 理容師・美容師の免許証(原本)

営業許可を得るには、床の面積が13㎡以上であることや、床の素材がコンクリート、タイル、リノリウムなどの不浸透性材料であること、照明の明るさ、換気の十分さ、消毒液の数等、様々な基準をクリアする必要があります。

なお、検査手数料として2万円程が発生します。細かい内容は地域によって異なりますので、管轄の保健所のホームページを参照して下さい。

確認検査の実施

書類を提出したら、確認検査の日時を保健所と相談して決めます。確認検査では保健所の職員が店舗に直接訪問し、届出との間に乖離がないかや、規定に満たされているかを確認されます。

検査に合格すると後日確認書が交付されます。保健所から連絡が来たら、受領印を持って窓口へ受け取りに行きましょう。

工事着工前に事前相談をしよう

確認検査で合格しないと美容室はオープンできません。内装工事が終わってから検査でNGが出て、そこから工事をしなおす必要が出たら、オープンが遅れてしまうでしょうし、無駄なお金が発生してしまいます。そうならない為にも、工事着工前の図面が出来た段階で、保健所へ一度相談しにいくことをおすすめします。

消防署での手続きと必要書類

消防検査の基準もクリアする必要があります。火災報知設備、非常警報設備、誘導等、消火器等、必要となる防火設備は、基準を満たす必要がありますので、内装工事業者や管轄の消防署へ工事着工前に相談・確認をしておきましょう。消防署での手続きの際に提出が必要な書類は下記の通りです。

  • 防火対象物概要表
  • 案内図
  • 詳細図
  • 平面図
  • 立面図
  • 展開図
  • 断面図
  • 室内仕上表及び建具表

集客サイトとの契約~ページ作成&ロゴ・印刷物・HPの作成

美容室をオープンするまでに、集客ツールとしてホットペッパービューティー等のポータルサイトと契約してページを作ったり、お店のロゴやショップカード、名刺を作ったり、ホームページを作ることも同時進行で進めていきます。

集客サイトとの契約~ページ作成

まずは、どういった方法で集客をするのかを決めなければいけません。既存のお客様で十分だったり、SNSで集客の見込みが立っている場合は必要ないでしょうが、OPEN当初は集客サイトと契約するのが一般的ですね。

最も多いのはホットペッパービューティー。後は楽天ビューティーやイーパーク、OZモールなどがメジャーでしょう。

よく使われる美容室向け集客サイト

サイト名支払い方法
ホットペッパービューティー月額固定費型
楽天ビューティー成果課金型
ozモール
イーパーク月額固定費+成果課金

ホットペッパービューティーは、 集客力が高い分、毎月固定費が発生し、お値段も高め。値段は地域・プランによって異なります。

ロゴ・ショップカード・名刺の作成

ロゴやショップカード、名刺はデザイン制作会社へ依頼するか、フリーランスのデザイナーに依頼するのが一般的。

特にツテがないなら、クラウドワークスでコンペ方式でロゴ等の制作を依頼するのも良いでしょう。様々なデザイナーから提案をもらうことが可能です。

最近ではテレビCMでもお馴染みの個人の得意の売り買いサイト「ココナラ」などで依頼する人もいらっしゃいますね。

ホームページの作成

ホームページも作りたい場合は準備が必要です。最近では専門知識がなくてもホームページが簡単に作れる、ホームページ制作サービスや、Wordpressテーマが増えています。ホームページはとりあえず存在してればOKで、お金をあまりかけたくないならこういったサービスで十分でしょう。

「他サロンとの差別化のためにブランディングをしっかりと行いたい。」「集客サイトに登録せずに、ホームページとSNSだけで集客をしっかりしたい!」という場合は、きちっと制作会社に頼んで作る方がおすすめです。

ロゴやショップカード、名刺などと一緒にまとめて一社に依頼すれば、少し割引もしてくれますよ。

美容室の広告において写真のクオリティーは超重要

ホットペッパーでページを作る際も、ホームページを作る際も、重要になってくるのが写真です。美容室の宣伝広告において、ヘアスタイル写真や、店内の内装写真のクオリティーは最重要項目で、その質によって新規のお客様をどれくらい集客できるかが変わってきます。

ヘアスタイル写真については、ご自身やスタッフが「得意で、自信がある!」という場合は、それを使用してもOKですが、店内の内装や外装はプロのカメラマンに依頼することをおすすめします。

同じ部屋でも、プロに撮影してもらうと実際より広く見えるように取ってくれます。また、明るい雰囲気を出せたり、カッコイイ雰囲気を出せたりと、お店のコンセプトに合わせて写真を加工してくれますよ。

事業ゴミ業者との契約

美容室から出るゴミは事業ゴミの扱いとなります。そのため、家庭ゴミとして出してしまうと廃棄物処理法違反となり、罰則を受けることになります。美容室のゴミは、事業ゴミ回収業者と契約して定期的に回収してもらう必要があるのです。

ネットで「事業ゴミ回収 地域名」で検索すれば、いくつか業者がヒットしますので、オープン前までに契約を済ませておきましょう。

なお、事業ゴミの処分は行政機関から「一般廃棄物収集運搬業」の許可を得ている会社しか行えません。許可を得ていないのに業務を行っていてゴミを不法投棄している会社も世の中には存在しますので注意して下さい。

しっかりとした会社なら、ホームページ上に許可番号や市から許可を受けている旨を記載していますので、事前に確認の上契約をするようにしましょう。

インターネット回線業者との契約

美容室予約サイトの管理や、POSレジ、店内で流す音楽ストリーミング、さらにはお客様満足度向上のためのフリーwi-fiなど、美容室を開業するなら今やインターネット回線との契約はマストです。

ポケットwi-fiやホームルーターなら、契約をして1週間ほどで端末が届き利用可能になりますが、光回線だと基本的に工事が必要で1~2カ月は見ておいた方が良いので、早めにどの回線と契約するのかを検討しておいた方が良いでしょう。

固定回線である光回線は工事が必要で確かに面倒ですが、無線回線と比べ通信速度が安定して速く、オプションで固定電話も安く同時契約できるので、店舗ビジネスの利用におすすめです。

同じ光回線でも選ぶサービスによって通信速度は大きく変わります。お客様・スタッフ満足度を考えると、しっかりと比較検討した方が良いでしょう。

キャッシュレス決済サービスとの契約

現金のみの美容室だと集客面で機会損失となりかねませんので、キャッシュレス決済サービスを導入することをおすすめします。現在は初期費用や月額利用料、振込手数料が0円で、決済手数料も3%台と割安なサービスが沢山あります。

申し込みをしてから、審査~機器の配送されるまで、早くて10日、時間がかかるサービスだと4週間ほどかかりますので、こちらも早めに検討しておきましょう。

実際に使用している美容室オープンまでの工程表を公開!

こちらが普段私たちのサロンが使用してるオープンまでのやるべき事の工程表です。漏れがないよに、やるべきことを一覧にして、誰がいつまでに行うかを記載し、完了したら印を付けるようにしています。

私たちのサロンは個人のサロンよりかは規模感があり大きめのサロンなので、やるべき事で当てはまらない項目もあるとは思いますが、参考にして頂けたらと思います。

オープンまでの工程表

まずはやるべきことを書き出してみる

内外装工事の施工業者の決定、電気水道ガス業者との契約、電話やネット環境の手配、レジ周りの機器やキャッシュレス決済端末会社との契約、ディーラーとの契約及び商材・メニューの決定、集客用のポータルサイトとの契約、写真撮影、ロゴやメニュー表の作成、保健所や消防署への手続きの準備等、美容室を開業するためにはやるべきことが本当に沢山あります。

ですのでまずは、そのやるべきことを書き出してみることが大切なのです。書き出してみることで、頭の中が整理され、ではどういう順序でかたずけていくべきなのかが考えられますよ。

備品の調達もリスト化して管理して

美容機器以外の備品の購入は、ネットショッピングだとAmazonや楽天、アスクルソロエルアリーナでの購入が私たちは多いです。

リアル店舗での購入は100円均一ショップ、ホームセンター、家電量販店での購入が主です。なので、サロンの近くにこれらの店舗が揃っているのは嬉しいポイントですね。

中村英二

ネットの発注もそうですし、100均もちょこちょこ行くのは凄く大変ですから(特に100均は必ずちょこちょこ行く羽目になります)、エクセル等で買う物をリスト化しておく事をおすすめします。

実際に使用している内外装工事のスケジュール表

内外装工事の工程やオープンまでのスケジュール表はこちらです。見ていただいて分かる通り、内外装の工事は1カ月~1カ月半くらいは要します。工事完了後からオープンまでの準備期間は、通常で搬入や機材の整理、追加の買い出しや予期せぬ事態もあるので予備日も含めて10日間程度はみておいた方が良いと思いでしょう。短くても一週間以上はとっておいた方が確実ですね。

内外装工事のスケジュール表

工事期間中は、業者さんの邪魔にならない程度に工事のチェックをしに行っても良いと思います(床貼りしている時は中に入れないですが)。

その時に何か工事期間中に気になる箇所があった場合で、その場に元請けの会社が居ない場合は現場の職人さんに伝えるのではなく必ず元請けの会社に連絡して伝えましょう。意思伝達は一本化しないと現場が混乱してしまいますので。

後出しで追加要望を出してしまうと工期が遅れてしまったり、追加料金がかかってしまう場合があるので、最初の現地調査の時や見積りを提出してくれる時に出来るだけ細かく掘り下げて擦り合わせをしておくことをおすすめします。

カットシャンプーで来店されたお客様がカット中に突然カラーもしたいと言われたら戸惑ってしまいますし、料金も別でかかってしまいますよね?それと一緒です。お互い『後だしジャンケンはトラブルの元』と言うのは念頭においておいた方が良いでしょう。

仲間を集めて開業する際には、工事中の現場を見せるのも良いでしょう。『ここでオープニングで働くんだ』とイメージが湧いて、モチベーションが上がるかもしれません。

工事中の郵送物に注意

ちょっと細かいですが、ネット発注した備品を店舗に郵送する際に工事完了後に到着設定が出来ない場合があります。その場合は、郵送の備考欄に『工事中ですが中で作業してる人に渡して下さい』と書いておく事をおすすめします。

そうしておかないと配送屋さんは「まだお店が無いのかな」と勘違いして持って帰ってしまい2度手間になってしまいます。中で作業してる人には、郵送物を受け取ったら、お店の隅の邪魔にならない場所に置いておくように事前にお願いしておきましょう。

ご近所さんへの挨拶回りを忘れずに

商売をやる上でご近所付き合いは大事です。自分の店舗近隣でお店屋さんがあったら、そちらへの挨拶周りも菓子折りを持参してマメに行いましょう。その時にお店のリーフやパンフレットも置かせてもらえるようでしたら置かせてもらった方が良いですね。

さて、いよいよグランドオープン!末永く地域に根差したサロンにしていってくださいね★

税務署へ開業届等を提出

美容室をはじめて開業するオーナーの場合、開業後1カ月~2カ月以内に、税務署へ開業届等を提出する必要があります。

書類名期限
開廃業等届出書(開業届)開業後1ヶ月以内
所得税の青色申告承認申請書(青色申告する場合)開業後2ヶ月以内

個人事業主で開業するなら、青色申告がおすすめ

確定申告で65万円の青色申告特別控除を受けたい場合は、青色申告承認申請書の提出も必要になってきます。

青色申告は白色申告に比べて申告方法や内容が複雑ではありますが、控除額が大きいですし、他にもメリットがありますので、個人事業主で開業するなら青色申告にすることをおすすめします。

従業員を雇う際に必要な手続き

従業員を雇う場合には、税務署に加え、労働基準監督署やハローワークで様々な書類を提出する必要があります。さらに、法人の場合や、個人事業主でも従業員が5人以上いる場合は年金事務所でも手続きが必要です。

労働基準監督署

書類名期限
労働保険関係成立届人を雇用した翌日から10日以内
概算保険料申告書人を雇用した翌日から50日以内

公共職業安定所(ハローワーク)

書類名期限
雇用保険適用事業所設置届事業所の設置翌日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届資格取得の翌月10日まで

税務署

書類名期限
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書開業後1ヶ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請期限はないがなるべく早めに

ここで注意したいのが「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」です。期限は特にないですがなるべく早めに行うことをおすすめします。

そもそも個人事業主や法人が従業員へ給与などを支払う場合、支払総額から一定額を天引きして徴収した金額を「源泉所得税」と言い、この源泉所得税は原則として翌月10日までに金融機関で納付しなければなりません。

ただし、毎月この事務処理を行うのも結構手間ですので特例があるわけです。給与を支給する人数が10人未満の場合、この「納期の特例の申請書」を事前に提出することで、7月10日と1月20日の年2回にまとめることができます。

そしてこの特例を適用できるのは、原則として申請書の提出日の翌月からとなります。これを提出するまでは、「源泉所得税」を翌月の10日までに支払う必要がありますので、なるべく早めに申請をすることをおすすめします。

年金事務所

日本年金機構への届出が必須なのは、法人として設立している場合と、個人事業主で従業員5名以上の場合です。5名未満の場合は任意となります。所在地の管轄の年金事務所で手続きを行いましょう。必要な提出物は下記の通りです。

  • 新規適用届出
  • 被保険者異動届
  • 被保険者資格取得届
  • 事業主の世帯全員の住民票(個人事業主の場合)
  • 履歴事項全部証明書又は登記簿謄本(法人の場合)

従業員を雇う場合の手続きは数も多く、手間もかかりますので、社会保険労務士などの専門家に依頼して代行してもらうのも手でしょう。

法人化するための手続き&書類

美容室開業の際、ほとんどの方はまずは個人事業として開業するかと思いますが、もし法人化する場合は、定款を作成し公証役場で認証を受ける必要があります。その後、登記申請書を作成し、定款や資本金の払込証明書、役員の就任承諾書など必要な書類を添付して法務局へ提出しましょう。

登記申請書の記載事項は商業登記法で定められており、この法令に従って作成されていなければ申請は却下されてしまいます。ですので、登記実務の専門家である司法書士に作成を依頼するのが一般的です。

なお、株式会社を設立する場合、定款認証にかかる手数料5万円、収入印紙代4万円、登録免許税15万円など、合計で約20~25万円の費用が必要となります。

従業員の心のケア

スタッフを集めて開業する場合は、働いてくれる従業員たちの心のケアもとても大切です。声掛けしてるスタイリストやアシスタントたちは現状でどこかのサロンに勤めてると思いますが、まず第一前提として、そこのサロンを【変な辞め方】はさせないようにしましょう。

退職にあたってはサロン独自のルールがある所がほとんどです(退職の時期だったり既存顧客の対応や移籍する店舗の場所だったり)。そのルールには則ってもらい、なるべく迷惑にならない退職を進めて、キチンと働かせて頂いている職場への感謝の心は持たせましょう。

「労基的には関係ないから良いっしょ!!」という考えだと道義的によくはないですし、そう言う心構えのサロンオーナーはいつか必ず自分にそのまま返ってきますね…。

もう一つ大事な点は、必ずそのスタッフの将来を考えるということ。人は歳をとりますし、歳と共に物事の考え方やライフステージも変化するものです。仲間を誘う場合はその人の一生を背負う覚悟がないと、いずれその人達は離れていってしまいますね。

将来が明るくないと、その人達も『ここにいても先がないな…』となり、オープニングメンバーで集まってくれた仲間が、1人辞め、2人辞め、最後はオーナーただ一人だけが残る…なんてサロンも世の中多い印象です。売上の頭数だけ揃える考えでしたら仲間集めは止めて1人でお店をオープンさせましょう。その方が賢明です。

声がけをして「参加する!」「君のお店で働くよ!」と初めは盛り上がったとしても、物件も何も決まってないと「結局いつお店やるの?」と不安になってしまうでしょう。

マメに連絡を取り合ったり、理念を共有したりと集まってくれる仲間達のテンションが上がる行動は常に行う必要があると思います。

まとめ

ここまで独立を思い立ってから新店舗オープンまでの一通りの流れを解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

美容室を開業するには、事業計画を作り、資金調達をして、物件を借りて内装工事をし、ロゴやカード、HPを作成するのはもちろん、集客のためのポータルサイトとの契約やクレジットカード会社との契約、事業ゴミの業者や電気ガス水道会社との契約が必要です。さらに、保健所や消防署、税務署での手続きが必須ですし、従業員を雇う場合は労働基準監督署やハローワーク、年金事務所でも手続きが必要になってきます。

やることは本当に沢山ありますから、事前準備とスケジュール管理がとても大切です。まだ開業が具体的ではない方も、今からできる準備はたくさんあります。貯金はもちろん、初期投資の算出やコンセプトの立案など、空いている時間にはじめてみてはいかがでしょうか?「独立して自分のお店を開業したい!」という美容師さんのお役に少しでも立てたら嬉しいです。

2号店目以降は開業届などが不要になるかわりに『集客』『求人』『組織の構築』『財務』がもっとも大事なテーマになってきます。店舗展開を目指している方は、今からそういった分野の勉強しておくことをおすすめします。事前準備をしっかりと行い、ぜひ美容室経営を成功させてくださいね。

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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