【美容室の経費削減の極意】材料費を適切に下げる5つのステップ

更新日:2024/03/21
美容室社長中村英二

美容室を経営しているけど経費がかさんで思っていたより利益が残っていないという方も多いでしょう。そんなお悩みを抱えている方のために、業界平均で10%に抑えれば良いとされている美容室の材料原価率を6%台に削減することができたAnphi南町田店の店長に、その秘訣を聞きました。これを読めば材料費を適切に下げる方法が分かります!

今回話を聞いた人

渡辺勇人マネージャー

美容師歴15年、ファイナンシャルプランナーの資格も持つ異色の秀才美容師。大手サロンから都内有名サロン等を経てAnphiへ参加。店長職を任されてからわずか数カ月で、原価率を通常の10%台から6%台まで引き下げた実績を持つ。

そもそも原価率って何?

美容室の材料

美容室経営においての原価率とは、施術で使用する薬剤や店販商材等の材料費の売上に対しての%のこと。

期首棚卸高+期中仕入れ高ー期末の棚卸高=原価

式の通り、月頭の材料の在庫状況に、その月に仕入れた材料を足し、月末の材料の在庫状況を引いたものが「原価」です。そして、その月の売上で割れば、原価率が出ます。

原価÷売上=原価率

一般的に、美容室の原価率は10%(店販込み)を超えなければ適正と言えるでしょう。

材料原価率を削減しようと思った理由

渡辺店長は何故原価を削減しようと考えたんですか?

店長を任された時、美容室の経費の中で自分が取り組める範囲がどこまであるんだろうと考えました。家賃や電気代、水道光熱費は変えられない。お客様が来るかは確かなことではなく、業務委託スタイリストは出勤日数が月によりバラつきがあるので売上も不確定。広告費は本部が管理していて担当外。という中で、自分がテコ入れできるところが材料費、つまり原価率だったという感じです。

原価率や美容室の経費削減との向き合い方

店長としての原価率や美容室の経費削減との向き合い方について教えて下さい。

経費の削減という概念ではなく、スタッフがよりスムーズに働いてもらうために、必要最低限の数を見極めるという意識で原価率に向き合っています。

「スタッフが滞りなくお客様に技術が提供でき、品物の入れ替えをスタッフ発信で出来る状態」にするために材料の仕入れを数値で管理している

パソコンで数値感をしている渡辺勇人

単に「経費削減のためだけに原価率を下げよう。」と考えてしまうと、スタッフが使いたい時に物がなかったり、新しい商材を取り入れにくい環境になってしまったりと、スタッフがストレスを抱えてしまうことになりがちです。それでは、スタッフが働きにくさを感じて辞めてしまったりと、お店にとって良くない状態になってしまい、店長の仕事としては本末転倒でしょう。

確かに、経費削減ができても、スタッフが辞めてしまったら意味がないですよね。

私が材料の発注において大事にしているのは、スタッフが滞りなくお客様に技術が提供できる状態、スタッフが有意義に物が使える状態、品物の入れ替えをスタッフ発信で出来る状態です。

しっかりと在庫状況を管理して数値を把握し、原価率を6%程にキープできていれば、使って良い材料費額に余裕が生まれますそうすれば、スタッフが「新しく〇〇を使ってみたい。」や、「お客様が△△を希望しているから、卸してほしい。」といった、スタッフ発信の商材の発注を許可することが常時可能になります

そして、それらをお客様に提供することで、お客様も「新しいものが入る美容室だな。」と感じていただいたり、お客様のご要望にかなったものが提供できてお客様が喜んで下さり、スタッフは自身の使いたい商材が使えることでより意欲的に働いてくれるようになると、私は考えています。これが私の原価率削減との向き合い方です。

なるほど。スタッフがのびのび活きいきと働くために行っていらっしゃるんですね!ちなみに5%や7%、8%ではなく6%にしようと考えた理由を教えてもらえますか?

経験則ですね。Anphiの前に勤めていたお店で、材料費を削減するように言われ、何%までいけるかとにかく試行錯誤しました。5%台も試しましたが、スタッフから「足りない!」と不満が出てしまったので、6%が限界だなと思ったという訳です。

適切な原価率はサロンの方針によって異なる

もちろん、この6%という数値が適切かどうかは会社の運営方針やサロンのコンセプトによって変わってくるはずです。

格安を売りにしているサロンと、高品質な技術やサロンの高級感を売り得にしているサロンでは、適正な原価率は変わって当然でしょう。ただいずれの場合でも、材料費の削減をし原価率を下げる為に行うべきことは変わりません。数値と向き合うことです。

そういうことですね。それではいよいよ、「数値と向き合う」内容を教えていただきましょう!

材料費を適切に下げるための5つのステップ

渡辺店長が実践している材料費を削減するための方法を順を追って説明します。

来月の売上予算を、スタイリストのシフトベースで作成する

まず、月の売上の予算を考えましょう。 美容室の場合、スタイリストのシフト状況次第で売り上げは大きく変わるので、シフト状況から予算を考える必要があります。 スタイリストによって、売り上げる額は変わってきますので、スタイリスト毎に1日にいくら売り上げるのかを把握することが大切です。計算式は、下記の通りです。

スタイリストAさんの月の売上÷勤務日数=スタイリストAさんの1日の生産性

1日の売上が分かったら、それに来月の勤務日数を掛けてあげれば、来月の売上予想が見えてきます。

スタイリストAさんの1日の生産性×来月の勤務日数=スタイリストAさんの来月の売上予想

上記の方法で、スタイリスト毎の来月の売上予想を算出したら、それを全員分足しましょう。

Aさんの来月の売上予想+Bさんの来月の売上予想+Cさんの来月の売上予想=サロンの来月の売上予想

時短勤務と1日勤務が混在している人が多い場合は注意

時短勤務と1日勤務が混在している方が多いサロンの場合は、できれば1日の売上ではなく1時間毎の売上で算出できればより精度の高い数値になりますね。数式としては下記の通りです。

スタイリストAさんの月の売上÷勤務時間=スタイリストAさんの1時間の生産性

上記の算出方法で出る売上予想の数値は、指名売上率が高い人ほど正確になります。一方、サロンに入りたてで、指名客が少なく、フリー売上ばかりのスタイリストの売上予想は、ズレる可能性が高いということを頭に入れておきましょう。

少しでも精度を高めたければ、繁忙月なのか閑散月なのか等の要因も踏まえて、売上予想を変えることをおすすめします。

来月の売上予想から、材料費に使って良い金額を算出する

来月の売上予想を立てたら、次はその内いくらを材料費に使って良いかという金額目標を決めます。目標ですので、現在の材料費率が11%のところを7%にしたいなら、売上予想額の7%を材料費に使って良い金額と定めれば言いわけです。

材料費率7%が目標の場合

来月の売上予想×0.07=来月の材料費に使って良い金額

先に目標額を決めるというのが大切なポイントです。初めから7%を目指すのは不安であれば、まずは9%、翌月は8%と下げていくのも良いかもしれません。

なるほど。シフトベースの売上予想からの逆算で、材料費額を事前に定めるわけですね。

材料毎の適正な発注数を仮定する

続いて算出したいのは、材料毎の適切な発注数です。算出方法は下記の通りです。もちろん、材料毎に算出して下さいね。

月初の材料数+月中の発注数-月末の材料数=月に使用した材料数(適切な発注数【仮】)

まず月初に、材料が何個あるのか数えます。そしてその月に発注した数を足し、最後月末に残った数を引けば、月に使用した材料の数が出ます。一旦は、これを材料毎の適切な発注数と仮定します。

目標値との乖離がないかを確認しよう

上記で材料毎の適切な発注数が出せたら、価格と掛け算をして、合計金額はいくらになる見込みなのか計算して下さい。そして、それが一つ前で算出した目標の材料費額とどのくらい乖離があるのか確認してみましょう。

乖離がない、もしくは目標額を下回るようなら問題ありませんが、目標額を大きく上回っているのなら、今までの発注数を頼りに発注しても、材料費は削減できません。また、乖離が+5%もあるのなら、それは目標額を見直すべきかもしれません。

これまでの発注数から材料の適正な発注数を仮定しましたが、これはあくまでも平均値から導き出した数値ですので、実際に運営をしていると、はじめのうちは過不足が出てくるでしょう。「〇〇は結構在庫が残ったけど、△△は途中で足りなくなって、慌ててディーラーさんに持ってきてもらうことになっちゃったな」などですね。

こうした過不足は、日々の発注業務できちんと過不足を把握していくことで減らしていきます。そして、数ヶ月かけて理想の材料毎の発注数が決まります。

発注、つまり棚卸は週に2回以上とする

私の店舗では、発注業務を週に2回行っています。週に1回だと、足りない材料が出てきてしまったり、逆に多すぎる材料が出てきてしまうリスクが高いからです。

なお、可能であれば発注業務を毎日する方がミスは少ないでしょう。ただし、送料の兼ね合いがありますので、送料無料になるギリギリをせめることをおすすめします。

発注数は、先ほど出した1日の材料毎の適正な発注数をもとに計算します。むこう4日分の発注とするのなら、下記の計算式で算出できます。

材料毎の4日分の発注数ー現在の棚にある数=この日発注すべき数

つまり、週に2回は棚卸(棚の数の把握)をしなければいけません。初めは大変だなと思うかもしれませんが、この過程の中で、材料毎の適正な発注数が導き出されるようになりますので、おろそかにせず、きちんと数えましょう。

週に2回は棚卸をされているんですね。たしかに美容室でそこまでやっているところは少なく、はじめは億劫に感じるかもしれませんね。

それでも飲食店だったら、当然のように毎日棚卸と発注を行っているわけですから、習慣化してしまえばいいですよね。

そうなんです。慣れるまでは、1人ではなく複数人で協力して棚卸業務を行うことをおすすめします。例えば、店長と副店長の二人で、材料係がいるなら、店長が材料係と一緒に棚卸をするという風にしてみて下さい。

発注した金額はエクセル等で管理し、目標額内に収まるように気を付ける

発注金額はエクセル等のツールでしっかり管理しましょう。下記が実際に使用している管理表です。

材料発注管理表

①売上目標額、②材料費の目標額、③発注額を記入でき、④の合計値は自動計算される数式が入っています。

①と②は月末までに決め、③は発注した日に記入していきます。計算式をいれておき、③の発注額を記入すると、発注額の合計がいくらになるか自動で出るようにしましょう。そうすれば、発注の度に今月の合計発注額を確認することになるので「あ、今月はちょっと頼み過ぎてるな」等、気づき易くなります。

材料毎の発注数もエクセルなどで管理するのがおすすめ

上記の表はディーラーやメーカー毎の合計発注額ですが、その内訳、つまり材料毎の発注数もエクセル等で管理すると良いでしょう。数値を記入すれば発注額が出るような数式を入れておけば計算が楽ですし、在庫状況が上振れたり下振れたりした時、いつの発注が原因だったか確認し易いのでおすすめです。

5つのステップはご理解いただけましたでしょうか?上記の要領で、しっかり在庫管理を行いながら発注をしていけば、過不足なく材料を頼めるようになり、材料費が削減できるはずです。

そうすれば、先に話したとおり、使用できる材料費額に余裕ができるため、スタッフ発信の材料の発注が常時可能になりますよ。

原価率が1%違うだけで、利益は大きく変わってくる

原価率が1%違うだけで、利益は大きく変わってきますよね?

そうですね。例えば月商700万円で、原価率が10%だったら単純計算で70万円、一方原価率が6%だったら42万円となり、その差額は28万円になります。28万円はまるっと純利益ですね。

28万円の利益を出すのに、どれだけ施術で売上を行わないといけないか考えてみましょう。例えば40%バックのお店の場合、施術で28万円の利益を出すためには、 280,000÷0.4=700,000 となり、70万円の売上が必要ということになります。

ほぼスタイリスト1人分の売上ですよね。この利益の確保が原価管理で行えるわけですので、やらない手はないですね。

材料費の経費削減を目指している美容師さんに一言

笑顔の渡辺勇人

最後に材料費の経費削減を目指している美容師さんに、渡辺店長から一言お願いします。

数字に意識を持つことが全てです。感覚でやるのではなく、数字と向き合ってみて下さい

渡辺店長、貴重なお話をありがとうございました!数字と向き合い、売上予想の逆算から材料の在庫管理をしっかり行えば、原価率の削減ができ、経費削減につながるのはもちろんのこと、スタッフ発信で材料を追加できる環境を整えることも可能なことが分かりましたね。

美容室の経費削減でお悩みのみなさん、ぜひ試してみて下さいね!

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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