美容師で年収1000万円になる方法|稼いでいる人は何をしている?

更新日:2024/02/12
美容室社長中村英二

多くの人が憧れる年収1000万円。美容師でそれを達成することは可能なのでしょうか?ずばり答えは「YES」です。ただし、当たり前ですが誰でもなれるわけではありません。なれるのはトップ数%です。

美容室を複数店舗運営する私中村が、実際に年収1000万円美容師の報酬の内訳や、彼らの行動、お話しから、彼らがなぜ稼げているのかを徹底分析し、年収1000万円になる方法を紐解きます

そうなるには何をしたら良いのか?どのようなキャリアプランを描くべきなのか?を詳しく解説します。長くなりますが、ぜひ最後まで読んでみて下さい!

美容師の平均年収は?

まず、そもそも現在日本の美容師の平均年収はいくらなのでしょうか?厚生労働省の「令和4年賃金基本統計調査」を見てみましょう。

結果はご覧の通り、理容・美容師の平均年収は男性が356.12万円、女性が303.39万円です。(企業規模計10人以上)

日本人の平均給与は、「令和4年分民間給与実態統計調査結果について」によると男性は563万円、女性は314万円ですので、美容師の年収は平均よりも男性で約200万円、女性は約9万円低いことが分かります。

美容師で年収1000万円は不可能?

平均年収約323万円と聞くと、年収1000万円なんていうのは夢のまた夢と感じますよね。そもそも年収1000万円の人はどのくらいいるのでしょうか?

国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、年収1000万円以上の方は、わずか4.6%と狭き門であることが分かります。では、美容師に絞ると何%なのでしょうか?ここで、別の調査結果を見てみましょう。

現役スタイリストの1%は年収1000万円

当社が2022年2月にインターネットリサーチ会社を通して行った現役美容師500人への調査で月収を聞いた結果です。

現役スタイリストの給料調査

現在正社員雇用または個人事業主のスタイリストとして活躍していると答えた方の月収は上記の結果となりました。

正社員雇用と個人事業主として働くスタイリストで一番多かったのは月収20万円以上~25万円未満で23.7%。

続いて25万円以上~30万円未満が22.7%と多い結果となり、20万円以上~30万円未満を合計すると46.4%とほぼ半数にのぼり、ここがスタイリストの給与のボリュームゾーンと言えるでしょう。

厚生労働省の「令和2年賃金基本統計調査」の結果、男女合計の平均月収26.37万円とも一致しますね。

注目したいのは月収80万円以上の欄です。回答した方が1%いらっしゃり、これは年間で考えれば80万円×12=960万円以上ということになりますので、年収1000万円の可能性が高いでしょう。

つまり、年収1,000万円の美容師はスタイリストの1%、100人に1人はいるということが分かります。 実際に、私が経営する美容室にも年収1,000万円超えの方がいらっしゃいます。現在スタイリストは全部で70人ですので割合は1.4%。1%台であることは調査結果とも一致します。

あなたがスタイリストで年収1000万円を目指したいのなら、トップ1%になる必要があるということです。

年収1000万円美容師の個人売上はいくら?

では、年収1000万円美容師になるには、いったいどれほどの個人売上を叩き出す必要があるのでしょうか?

分かり易く月ベースで考えてみましょう。年収1000万円ということは、月収は約84万円ですので、月84万円の収入を得る場合で個人売上を考えます。なお、働く美容室の報酬体系によって差が出る為、今回2パターンの報酬体系に分けて算出しました。

固定給20万円+指名歩合30%+店販10%の場合

まずは、報酬体系が固定給20万円+指名歩合30%+店販10%の場合です。よく見かける正社員サロンの給料体系ですね。

月収84万円の内訳を下記とします。

固定給20万円+指名歩合給62万円+店販給2万円

指名歩合30%で62万円を稼ぐためには、指名売上は207万円、店販10%で2万円を稼ぐためには、店販売上は20万円、 合計227万円を売り上げる必要があります。

フリー歩合40%+指名歩合50%+店販20%の場合

続いて、フリー歩合40%+指名歩合50%+店販20%の場合です。これは業務委託サロンの報酬体系の想定です。

月収84万円の内訳を下記とします。

フリー歩合給20万円+指名歩合給62万円+店販給2万円

フリー歩合40%で20万円を稼ぐには、フリー売上は50万円、 指名歩合50%で62万円を稼ぐには、指名売上は124万円、 店販20%で2万円を稼ぐには、店販売上は10万円、 合計184万円を売り上げる必要があります。

同じ報酬額でも、報酬体系によって必須売上額は異なる

同じ年収1000万円でも、前者の方は売上なければいけない合計額が227万円なのに対し、後者の方は合計額が184万円と、働くサロンの報酬体系によって、必須売上額が大きく変わってくることがわかります。

必須売上額だけみると、後者の方が絶対に良い様に感じますが、これは働き方や生活スタイルによって合う合わないを見極めた方が良いでしょう。

前者の正社員サロンの場合は、アシスタントに多くの業務を手伝ってもらって、ご自身はカウンセリングとカットなどの業務だけ行い、お客様を同時に複数人掛けもちしながら担当するスタイルです。一日8時間労働が基本で月換算ですと160時間が原則。これに残業時間が追加であります。正社員サロンは、社会保険や年金に会社で入ってくれます。

後者の業務委託サロンの場合は、お客様と美容師がマンツーマンで施術を行うスタイルです。マンツーマン施術のためお客様と深く関われ、指名がつき易いというメリットがある一方、お手伝いのアシスタントさんは基本いないためそれが「大変」と感じる方もいらっしゃいます。

サロンにもよりますが、フリーランスですので原則シフトは自由に組めます。1日何時間以上何時間以内とか、週休〇日という決まりは法律上はありません。

個人事業主の契約ですので、ご自身で国民健康保険へ入り、国民年金を支払い、確定申告をする必要があります。

個人売上の目安は、月180~230万円と考えておけばよいでしょう。ただし、これはあくまでも”額面”の値で、実際はここから社会保険料や年金等が引かれますので、手取り額を年収1000万円にしたいのなら、さらに多くの売上を上げる必要があります。

実際の年収1000万円美容師の報酬明細から分かる高収入の理由

実際に当社が運営する美容室Anphiで、年収1000万円を稼いでいる方の報酬明細を見てみましょう。

2022年4月の報酬明細

直近の2022年4月の月収は929,030円です。繁忙月でもないのに、この成績は素晴らしいですよね。続いて内訳を分析していきます。

総売上の8割以上が指名売上

報酬明細を見ると、総売上1,605,964円の内、指名売上が1,337,182円と圧倒的に高いです。総売上の83%は指名売上ということです。

年収1000万円の美容師は指名率が高く、指名売上が高いのです。つまり、フリー客ばかりやっても年収1000万円は難しい、指名を付ける努力をするべきだと言えます。これは美容師の報酬体系が、正社員サロン・業務委託サロンに関わらず歩合制によることが要因ですね。

勤めている美容室の手当が充実している

報酬明細の中段に諸手当の項目があり、口コミ手当500円、遅番手当10,000円、達成手当70,000円が支給されていることが分かります。

この月の手当の合計は80,500円となり、月の報酬929,030円の約8.6%を占めています。

口コミ手当や達成手当は指名売上が高いスタイリストだから付く手当ではありますが、こういった手当があるとないとでは1割弱収入が変わってくるわけですから、大切な要素だと言えるでしょう。

働く職場を検討する際は、単に売上のバック率だけでなく、手当の内容もしっかり確認したいですね。

一等立地や有名サロンでなくても実力で勝負できる

例に挙げた美容師が働いているのは神奈川県横浜市の二等駅です。銀座や表参道、新宿といった一等地の超有名店というわけではありません。

言い換えれば、そういった一等地の有名店でなくても年収1000万円は可能ということ。

あたなが今の給与・報酬に満足がいっていないのなら、今より給与体系が良い美容室へ転職するのも一つの手です。

指名が取れるスタイリストの5つの共通点

前項で、年収1000万円足る理由を3つ記載しましたが、中でも最重要なのは、指名売上の高さです。指名が取れない美容師が年収1000万円になるのは難しいでしょう。では、どうやったら指名が付くようになるのでしょうか?

美容室を複数店舗経営し、多くの美容師・美容室オーナーと関わって来た私が、指名される割合が高く、指名売上が高いスタイリストを観察したところ下記5つの共通点が見えてきました。

【1】踏み込んだカウンセリングができている

指名売上の高い美容師の共通点として挙げられるのが、まずカウンセリングを丁寧に行い、お客様の要望の本質を捉えようとしている点です。

お客様の言葉をうのみにせずにしっかりヒアリングを行っています。例えば「ショートにしたい」と言った時には、お客様の言う「ショート」とはどのくらいの長さなのか写真を使って確認したり、なぜショートにしたいのかその理由を確認したりしています。

もしショートにしたい理由が「今の髪型が気に入らないから、思いっきり変えたい!」のなら、今の髪型のどこが気に入らないのか具体的に聴き出す必要がありますよね。

また、お客様のライフスタイルにあった提案をするために、職業や毎朝のヘアセットにかける時間なども上手に聴き出しています。

もちろん、この踏み込んだカウンセリングをするには“感じの良い接客”が出来ていることが第一条件ですよ。

【2】ただ言われた通りにやるのではなく、プラスワンの提案ができる

お客様に「こういうスタイルにしたい。」と言われて、ただその通りにやるだけでは、お客様はある程度満足はしても感動はしません。その他大勢のスタイリストと同じになってしまいます。

例えば安さが売りのカット専門店でも、言われた通りにカットするだけならやってもらえます。つまり、言い方は悪いかもしれませんが、言われた通りのヘアカットをするだけなら、1,000円カットと同等になってしまうというわけです。それだと、次回指名で帰っては来る可能性は低いですよね。

指名売上が高いスタイリストは、お客様のライフスタイルや顔の形、髪質などを考慮して、ご要望プラスワンの提案ができています

この提案をするには【1】のヒアリングが不十分だと出来ませんので、【2】ができる人は自然と【1】が出来ているということになりますね。

【3】自宅での再現性を大切にしている

指名売上が高いスタイリストは皆さん、ヘアスタイルの自宅での再現性も大切にされていますね。お客様が普段朝のヘアセットにどのくらい時間をかけるのか聴き出し、それに合わせたヘアスタイルを提案し、必ずヘアセットの方法を詳しくレクチャーされています。

サロンでどれだけキレイに仕上がっても、家に帰ってそれが再現できないと、お客様はがっかりしてしまうもの。サロンで綺麗になって、帰って翌朝家で上手にセットができて、職場や家族に「その髪素敵だね!」と褒められて、はじめてお客様は「あの美容師さんにやってもらって良かった!」と思えるのです。

お客様の中には「美容師とあまり話したくない。」「静かに過ごしたい。」という方もいらっしゃいます。そういう方は確かに「今日はどちらに行かれるんですか?」などといった雑談を好みませんが、一方で「自分のヘアについての話はしたい。アドバイスをもらいたい。」と考えている方は多いものです。

だからこそ、お客様の髪についてお話ししたり、日常のヘアケア、ヘアセット方法をしっかりとアドバイスできている美容師は指名売上が高いのでしょう。

【4】美容師の仕事を楽しんでいる

トップスタイリストの共通点として、皆さん美容師の仕事をとても楽しんでいらっしゃいます

「美容師の仕事はとてもやりがいがあって楽しい。」「仕事というより毎日遊びに来る感覚でお店に来ている。」と皆さん一様に口を揃えて言います。

逆に年収1000万円超えで、「美容師の仕事は大変でつまらない。」「収入の為だけに仕方なくやっている。」と言う方に、私は出会ったことがありません。

【5】若い頃にめちゃくちゃ努力している

指名が取れて年収1000万円を得ている方にお話しを伺うと、皆さん若い頃にめちゃくちゃ努力されています。営業後や営業前に誰よりも練習し、休みの日にも練習し、講習会にも出席して技術の習得に余念がありませんし、大会にも出場して賞を取ったりしています。

そして若いころだけでなく、トップスタイリストとなって何年経っても勉強し続けている方が多いです。

会社で外部講師を呼んだ講習会を開催する場合、講師が自分よりはるかに年下だったとしても、既にご自身で出来ている分野だとしても、参加されているのが印象的でした。

スタイリストのトップ1%になるには、99%の方がされていない努力をされているという事実が、実際にご本人にお話を聞くとよく分かりますよ。

サロンワーク以外の副業で稼ぐ例

上記の内容を見て、「サロンワークで年収1000万円は自分には難しいかも…」という方は、副収入を合計して年収1000万円を稼ぐという手もあります。

副業NGのサロンだと難しいですが、最近は正社員雇用でも副業OKの会社が増えてきましたし、業務委託サロンならWワークOKの場合が半数以上でしょう。

副収入で一定額稼いでいる美容師さんには、下記のことをやっている方が多いです。

  • モデル
  • Youtuber
  • Instagramer
  • OEMで商品開発&販売
  • アフィリエイター
  • ブライダルのヘアメイク

美容師をしながらモデルとしても活躍している方。

Youtubeでチャンネル登録者数が増え、広告で収入を得られるようになっている方。

Instagramで人気になり、そこから高単価の予約が入っていたり、アフィリエイト広告で収入を得ている方。

人気モデル、Youtuber、Instagramerになり、OEMでシャンプーやトリートメント、カラー剤などを商品開発し販売して収入を得ている方などがいらっしゃいます。

自身で商品開発に動かなくても、メーカー側からオファーが来て、「人気Youtuber美容師〇〇さんプロデュース」というかたちでプロデュース料金をもらっている方も多いですね。

このように、美容師としての知識・実績を活かしながら上手に副収入を得れるのは素敵ですよね。ただし、発信力やブランディングの上手さといった、ヘアを作る以外の能力が必要になります。

週末はブライダルのヘアメイクとして働いているという方も一定数いらっしゃいますね。美容室の客単価は3,000円~20,000円ほどですが、ブライダルの客単価は10万円以上が相場ですので、良い副収入になりそうです。

店長やマネージャーになったら稼げる?

今は一スタイリストだけど、店長やマネージャーなどの役職がつけば、年収1000万円もらえるのでは?とお考えの方もいらっしゃるでしょう。

店長だと年収1000万円は難しい

今のあなたの給料にもよりますが、店長になったら給料が倍になるということはないので、年収1000万円は難しいとお考え下さい。(仮にあなたが既に年収900万円なら話は別ですが)美容室にもよりますが、店長になると基本給に加え、店長手当として店舗売上の1%程が相場です。

マネージャー以上なら可能性有り

マネージャー以上になると年収1000万円の可能性が出てきます。ただし、年商1億円規模くらいの美容室だと厳しいです。管轄する美容室の売上総額が5億円以上だと可能性が出てきますし、年商10億でかつ適正な営業利益が上がっているなら、そのマネージャーや役員は年収1000万円以上をもらえているでしょう

あなたは今勤めている美容室の年商と利益をご存じですか?

独立して美容室を開業すれば1000万円は可能?

「美容師が稼げるようになるには、独立して美容室を開業するしかない!」というご意見や、「美容師は独立さえすれば1000万円稼げる!」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

確かにご自身がオーナーのお店なら、お客様からいただく売上がまるっと自分のものになるのですから、高収入になりそうな気がしますが、実際のところどうなのでしょうか?アンケート結果を見てみましょう。

美容室オーナーで年収1000万円以上は約4.6%

現役美容師へのアンケートによると、「オーナー」と答えた193人の内、月収が80万円以上と答えた方は9人、約4.6%いらっしゃり、この方々はおそらく年収は1000万円以上と想定できます。

スタイリストで年収1000万円以上の方は1%でしたので、それよりも高い割合になりますが、「期待していたよりも少なかった…」というのが皆さんの感想なのではないでしょうか?

美容室オーナーで最も多いのは年収180万円未満!?

一方で、一番多く選択されたのは月収15万円未満で46人、つまり23.8%に上りました…。年収になおすと180万円未満となってしまいます。

美容室オーナーの月収がこのように低い理由として考えられるのは、下記の3つです。

【1】そもそもサロンの売上が少ない

一つがそもそもサロンの売上が少ないケースです。お客様からいただく売上が丸っと自分の収入になるかと言えばそうではなく、そこから家賃、水道高熱費、材料費、広告費などが引かれますので、売上が一定額以上いかないと利益は出ません。

よくある1人美容室の場合でシミュレーションをしてみましょう。

1人美容室の収支シミュレーション

オーナーの1人店舗の美容室を想定します。客単価8,000円で、月間100人のお客様が来店するサロンとしましょう。

売上80万円
材料原価8万円
家賃10万円
広告費8万円
光熱費2万円
備品代2万円
利益50万円
税金2万円
借入返済7万円
お店の内部留保5万円
オーナーの給与36万円

月間の売上が80万円の場合、カラー剤などの材料費の原価率の理想は10%以下ですので、80万円の10%の8万円、家賃は10万円のお店で、ポータルサイト等の集客サイトへの支払いを広告費として8万円、光熱費2万円、備品代2万円がかかり、月の利益が50万円だとします。

「じゃあ50万円が自分の収入?」と思うかもしれませんが、その考え方は危険です! ここから税金や、借入返済、内部留保などを引かないと正常な経営はできません。

まず税金は、月の利益が50万円の個人事業主オーナーの場合、所得税、住民税、個人事業税が発生し、毎年確定申告後に支払うことになります。実際の税額は控除内容によって大きく変わってきますが、ここでは仮に月2万円とします。

借入返済は、開業時に日本政策金融公庫から700万円借入れた想定として、月7万円返済していることとします。

お店の内部留保とは、お店の為の貯金のことです。美容機器が故障するなど突発的な支払いを想定して、日々貯金をしておく必要があります。ここでは5万円を内部留保として計上しています。

結果、月の売上が80万円の美容室の場合、手残りつまりオーナーの給与は36万円になりました。36万円というのは、上記のアンケート結果の中では良い方ですよね。

ということは、実情は月間100人を見込んでいたのに80人しか来なかったり、単価8,000円ではなく6,000円になってしまったり、家賃が高いところにしてしまって経費を圧迫してしまっていたりということが考えられます。

【2】売上は立っているが、お店にお金を残すために自身の給与は低く設定している

【2】は、【1】のシミュレーション通り月の売上や利益が上がっていても、お店の貯金を残すために、ご自身の給料を低く設定している場合です。

先程のシミュレーションで「内部留保」は5万円でした。これは突発的な出費や、年月が経った時に内装の改装工事をするための想定で出した金額ですが、もしあなたが店舗をここから拡大しようとお考えならば、内部留保は5万円では足りないでしょう。

1人店から3人~5人のスタイリストを雇う店舗にアップグレードしたいと考えているならば、内部留保は多いに越したことはありませんよね。

先のシミュレーションで内部留保を20万円と設定したら、オーナーの給料は25万円ですし、内部留保を30万円と設定したら、オーナーの給料は15万円ということとになります。

いかがでしょう?先のアンケート結果に近づいてきましたね?

【3】売上は立っているが、確定申告時に様々なものを経費計上して所得を圧縮して申告している

【3】は【1】のシミュレーション通りの売上だったとしても、確定申告時に様々なものを経費計上して所得を圧縮して申告している場合です。

美容室オーナーは初め個人事業主として開業する場合が多いと思います。税金はお店の売上に対して払うものではなく、そこから諸経費をもろもろ引いた所得に対して支払います。

美容師という職業は、ハサミやウィッグ、エプロンなどの仕事道具や備品の購入がつきものですし、最新のトレンドをキャッチする為に雑誌を購入したり、勉強のために競合のお店や都内の人気店へお客様として行ったり、外部の講習会に参加したりと、大変お金がかかりますが、サラリーマン美容師時代は、これらの出費は全て自費で支払っていて、経費として計上させてもらえなかったでしょう。

ですが個人事業主だと、これらを経費計上できるようになります。

洋服だって、仕事着としてだけ使うなら経費計上できますし、普段お使いのスマートフォンの使用料金も、それで業者さんやお客様とやり取りしているなら家事按分で一部経費処理ができるのです。

その為、確定申告後に支払う税金の額を少しでも減らしたいために、できる限りレシートを集めて経費計上するオーナーさんが多いです。そして所得をぎりぎりに抑えているため、結果「収入」と言える金額は低くなるというわけです。

ここまで、オーナー美容師の収入がなぜ低いかに焦点を当ててお話ししましたが、アンケート結果からも分かるように、美容室オーナーの4.6%は年収1000万円を超えています。ですのでここで、年収1000万円を超えるシミュレーションもしてみましょう。

オーナー年収が1000万円を超える美容室の収支シミュレーション

売上200万円
人件費35万円
材料原価20万円
家賃20万円
広告費8万円
光熱費4万円
備品代2万円
利益111万円
税金10万円
借入返済7万円
お店の内部留保10万円
オーナーの給与84万円

今回は、オーナーが1人スタイリストを雇った場合でシミュレーションをしてみました。先程の項目に「人件費」が追加されます。

想定として、そのスタイリストは月80万円を売り上げてくれ、月収35万円を支払っていることとしました。なお、オーナーの月間売上は120万円です。

上記の通り、月の売上が200万円なら1人雇ってもオーナーは月収84万円を取ることが可能でしょう。

ただし人を1人以上雇う場合、その人の将来を考えなければいけません。中には一生同じ給料で満足ですと言う方もいらっしゃるでしょうが、大抵は昇級、昇格を求め、それが叶わないと感じたら辞めてしまいます。人を雇う美容室オーナーになる以上は、そういった「人事」のお仕事も必要になってきます。

美容師で年収1000万円を本気で目指すなら、自分に最適なキャリアプランを見極めて

ここまで、美容師で年収1000万円になる確率や、その方法について詳しく記載しました。まとめると道筋は下記の5種類となります。

  1. バック率が高いお店で指名客を増やす
  2. 関連ビジネスで副業する
  3. 年商5億円以上の美容室でマネージャー・役員になる
  4. 独立して1人美容室のオーナーになる
  5. 独立して複数人の繁盛店のオーナーになる

これらをすべて同時に目指そうとすると、破綻してしまいます。大事なのは、自分にはどれが合っているのかを見極めることです。下記は、私が考えるそれぞれの道に向いている方の特徴です。ものは試しに、ご自身はどれに該当するか考えてみて下さい!

バック率が高いお店で指名客を増やしてトッププレイヤーになるのに向いている方

  • 美容師の仕事がとにかく楽しい
  • 美容師の仕事にとてもやりがいを感じる
  • 現在自身が勤めるサロンで売上No1である
  • 売上No1ではないが、練習が全く苦ではない
  • 常に最新のヘアトレンドや、技術に興味関心がある
  • 体力には自信がある
  • 帰宅後や休みの日でも「あのお客様には次回こういうヘアを提案しようかな」などと考える

美容師+副業で年収1,000万円を目指すのに向いている方

  • 美容師の仕事は好き
  • 自己発信が好きでSNSやYoutubeなどで既に発信をしている
  • フォロワーやチェンネル登録者数が、周りの美容師に比べて多い
  • 美容商材のトレンドに興味関心がとてもある
  • マーケティングやIT関連の知識・技術の習得に興味がある

年商5億円以上の美容室でマネージャーになるのを目指すのに向いている方

  • 既に、副店長や店長などの役職を任されている
  • 会社の意向と現場の意向の調整をすることが苦ではない
  • 人とコミュニケーションを取るのが大好き
  • エクセルやパワーポイント等のPC業務が割と好き、もしくは苦ではない
  • 昔から何かと人から相談されたり、自ら世話を焼くタイプである
  • 仕事ができない人を見てもイライラせずに接することができる
  • 将来はハサミを置いても良いと思っている
  • 独立願望はない

1人独立して美容室オーナーになり年収1000万円を目指すのに向いている方

  • 「トッププレイヤーになるのに向いている方」の7項目に当てはまる
  • 既に年収700万円以上稼げている
  • 売り上げの7割以上は指名客の売上である
  • 大人数の集団生活よりも、1人で気ままに過ごしたい
  • 店長などの管理職を任されているが、自分には向いていない気がする
  • 店長などの管理職を任されたこともあるが、人が次々と辞めてしまった経験がある
  • スタッフのマネジメントで悩みたくない
  • 自分1人のお店を持つことが昔からの自分の夢である

複数人所属する美容室のオーナーになって年収1000万円を目指すのに向いている方

  • ヘアサロンビジネスの分析が好き
  • 数字を見るのが苦じゃない
  • 経理・財務・マーケティング・広告・人事など、ヘアサロンビジネスのバックオフィス関係の勉強が苦ではない
  • エクセルやパワーポイント等のPC業務が割と好き、もしくは苦ではない
  • 将来はハサミを置いても良いと思っている
  • 学生時代からリーダーシップを取ったり、頼られるタイプだ
  • 人を巻き込むのが得意な方だと思う
  • 自分の売上を上げる方法よりも、他人の売上を上げる方法を考えられる
  • スタッフのマネジメントに向き合える

いかがでしょう?ご自身がどの方法で年収1000万円を目指すべきか、道筋は見えてきましたか?

全ての項目に万能な人はめったにいません。「名プレイヤーは名監督にあらず」という言葉がありますが、それは「名監督は名プレイヤーにあらず」とも捉えることができます。プレイヤーにはプレイヤーの輝く場所が、監督には監督の輝く場所が必ずあります

年収1000万円以上は日本人労働者の4.6%です。どの道でもその4.6%に入るのは容易ではありませんが、自身の適正を早い段階で見極め、キャリアプランを考えて、その目標に向かって邁進すれば、きっとたどり着けるでしょう。あなたの将来が明るく素晴らしいものになる事を祈っています!

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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