美容師の平均年収は?データから読み解く役職別給料と収入アップの方法

更新日:2024/04/04
美容室社長中村英二

美容師というと何となく「安月給」というイメージを持っているものの、正確な数字は把握していないという方が多いのではないでしょうか。このページでは最新の調査データを基に、美容師の平均年収をはじめ、経験年数や年齢による年収の推移、役職によって給料がどのくらい変わるのかなどを詳しく解説。ひとえに美容師といっても収入は人それぞれ、美容師として収入アップする方法についても具体例を交えながら紐解いていきます。ぜひ美容室業界の実情を把握して、将来設計に役立てて下さい!

理容・美容師の平均月収・年間賞与・年収

厚生労働省が行った「令和4年賃金基本統計調査」によると、理容・美容師の平均月収は、男性が28.74万円、女性が24.6万円で、年間賞与その他特別給与額は男性が11.24万円、女性が8.19万円でした。そして、理容・美容師の平均年収は男性が356.12万円、女性303.39万円となります。

なお、男女合計で見ると、理容・美容師の平均年収は319.82万円ということになります。

企業規模別の年収

企業規模別に平均年収を見比べてみると、年収は10~99人規模が最も低く307.97万円、続いて100~999人が350.11万円、1000人以上規模が387.89万円という結果でした。

企業規模に関わらず年収は300万円代でしたが、規模が大きいほど年収は高くなり、10~99人規模と1,000人以上規模は80万円の差がありました。。

年齢・経験年数毎の年収の推移

年齢別で理容・美容師の年収を見てみると、専門学校を卒業して美容室に勤め始めの20~24歳が最も低く平均年収253.46万円で、その後25~29歳は315.5万円、30~34歳は366.25万円、35~39歳は375.04万円、40~44歳は386.84歳と上がっていき、45~49歳がピークで395.81万円となり、以降は下降傾向にあることが分かります。

経験年数による年収の推移を見ていきましょう。美容室に勤めはじめてすぐのアシスタント時代である「経験年数0年」は年収250万円程が一般的だとわかります。

アシスタントからスタイリストデビューが見込める経験年数1~4年でもあまり上がらず256.68万円でした。

その後、経験年数5~9年は平均年収322.33万円、10~14年は360.87万円、15年以上は395.67万円と、年齢が上がると共に順調に上昇しています。

国家資格の中でも年収が低い?

美容師は国家資格です。国家資格と言えば、医師や弁護士、一級建築士、公認会計士、歯科医師、薬剤師、診療放射線技師等々、さまざまな資格があります。平均年収を一覧で比べてみましょう。

医師1278.53万円
公認会計士,税理士701.28万円
歯科医師800.09万円
獣医師650.02万円
薬剤師551.11万円
診療放射線技師410.93万円
臨床検査技師469.2万円
看護師467.81万円
保育士456.2万円
栄養士365.27万円
理容・美容師319.82万円

令和4年賃金構造基本統計調査の企業規模10人以上で見た時、医師の平均年収(所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額)は1278.53万円、公認会計士・税理士は701.28万円、薬剤師は551.11万円です。

栄養士や保育士は平均年収が下がり、栄養士365.27万円、保育士は384.17万円となりますが、理容・美容師の319.82万円よりも高いことが分かります。残念ながら、美容師は給与が低いという結果になりました…。

なぜ美容師の給料は安い?

なぜこのように美容師の給料水準が低いのでしょうか?美容師の仕事は、美容師1人以上に対してお客様1人を担当して、1,000円~20,000円ほどの対価をいただくお仕事です。1人の美容師が、10人や100人のお客様を同時に施術することは不可能ですので、1人が複数人同時に接することで対価を得る職種よりも売上や利益が上がりくい商売と言えます。また、その金額も30分~3時間の労働に対して安くて1,000円、高くて20,000円程が相場です。1人のお客様が1回で10万、20万円といった金額を払ってくれる商売と比べると、やはり利率が良くないことがお分かりいただけるかと思います。そのため、どうしても業界水準が低くなってしまうのです。その上で、データからは下記のポイントが読み取れます。

ボーナスが少ない

美容室業界は他業界にくらべ賞与つまりボーナスが少ないです。正社員として働く美容師の平均賞与は年間6万円程度で、他業界が給与の1カ月分や2カ月分が一般的ですので、かなり低い水準であることが分かります。

勤続年数が低い

その勤続年数の低さも、給与が低い理由の一つとして挙げられます。同じ師業でも、医師は7.1年、歯科医師は7.7年、公認会計士は10.6年、臨床検査技師にいたっては12.7年なのに対し、理容・美容師はたったの5.2年です。給与が同水準の保育士でも7.7年ですから、理容・美容師は勤続年数が少ないと言えるでしょう。つまり、同じ美容室に長く務めることなく、職場を変えるか、独立したり、転職する方が多いと考えられます。

平均年収は低いとは言え、これはあくまで平均で、美容師みんなが安月給という訳ではありません。美容師ランクや、役職、働くサロンによって年収は大きく変わってきますよ!

美容師ランクや役職によって給料はどのくらい変わる?

美容師は、アシスタントからはじまり、ジュニアスタイリスト、スタイリスト、トップスタイリストのようにランク付けされることがほとんど。給料もランクによって左右されます。

さらにスタイリスト以降は、副店長や店長、マネージャーといった役職に抜擢されれば給与体系が変わってきますし、美容室のオーナーになればさらに収入に変化があるでしょう。ここでは美容師ランクや役職によって給与はどのくらい変わるのか、当社イーグラント・コーポレーションが2022年2月に行った現役美容師500人へのアンケート調査結果を基に説明します。

アシスタント

アシスタントは美容室の中であくまでも「見習い」扱いで、給料は低く設定されています。サロンにもよりますが、業界平均では月収19万円程が一般的。

現役美容師500人へのアンケート調査によると、アシスタントは、月収15万円未満と答えた方が10人、15~20万円未満と答えた方が10人、20~25万円未満と答えた方が1人となりました。

傾向として、地方の美容室にお勤めのアシスタントは月収15万円未満の方が多く、東京・神奈川・名古屋・大阪などの都会のサロンに勤めるアシスタントは月収15万円以上が多いです。

当社が運営する美容室Anphiがある東京や神奈川などでは、アシスタントの初任給20万円以上のサロンも最近では増加傾向にあります。かくいうAnphiも初任給21万円です。

ジュニアスタイリスト

サロンによって設けられているのが「ジュニアスタイリスト」。アシスタントとスタイリストの中間に位置付けられ、簡単なカットは施術できるという場合が多いです。見習いであるアシスタントよりは給料が少し上がり、月収は20~25万円ほどになります。

スタイリスト

現役スタイリストの給料調査

当社が2022年2月に行った現役美容師500人への調査で月収を聞いたところ、正社員雇用と個人事業主として働くスタイリストで一番多かったのは月収20万円以上~25万円未満で23.7%でした。続いて25万円以上~30万円未満が22.7%と多い結果となり、20万円以上~30万円未満を合計すると46.4%とほぼ半数にのぼり、ここがスタイリストの給与のボリュームゾーンと言えるでしょう。厚生労働省の「令和2年賃金基本統計調査」の平均月収男性29.7万円、女性23.74万円の結果とも一致しますね。

ただ、平均以下となる20万円未満も29.85%と一定数いらっしゃいます。また逆に平均以上となる30万円以上の方も合計で23.7%いて、中には月収80円以上と回答した方もいらっしゃいました。

同じスタイリストでも技術力や接客力、勤めるサロンによって給料が大きく変わってくることが分かりますね。

トップスタイリスト

スタイリストのなかには月収45~50万円程の方や、中には80万円以上を選択した方もいらっしゃいました。80万円×12カ月=960万円ですので、この方は年収1,000万円稼いでいる可能性が高いでしょう。これらの方々がいわゆる「トップスタイリスト」。技術力はもちろん、接客力や提案力も高く、多くのお客様から支持される美容師さんですね。

店長

スタイリストから副店長や店長といった役職に上がると、給与がアップします。スタイリストとしての給与に上乗せで店長手当が付くのが一般的。店長手当の額は、サロンによりけりですがその店舗の売上の1%前後の場合が多いです。例えば、月間の売上が500万円の店舗なら、給与が5万円アップするイメージです。

マネージャー

美容室チェーン店になると、店長職の上はマネージャーという場合が多いです。マネージャー職はハサミを置いて、店舗周りをしたり、本部業務をおこなったりするのが一般的ですので、歩合給ではなく固定給となります。給与は40万円くらいが下限で、大手で担当店舗数が多ければ100万円も可能でしょう。

経営者・オーナー

現役美容師へのアンケートによると、「オーナー」と答えた193人の内、月収50万円以上と答えた方が合計で26人つまり全体の約13.5%を占めました。月収50万円なら年収は600万円です。月収が80万円以上と答えた方も9人、全体の約4.6%いらっしゃり、この方々はおそらく年収は1,000万円以上と想定できます。

一方で、一番選択された数が多かったのは月収15万円未満で46人、つまり全体の23.8%に上りました。美容室オーナーの月収がこのように低い理由として考えられるのは、下記の3つです。

  1. そもそもサロンの売上が少ない
  2. 売上は立っているが、お店にお金を残すために自身の給与は低く設定している
  3. 売上は立っているが、確定申告時に様々なものを経費計上して所得を圧縮して申告している

一概に「オーナー」だから高給取りであるという訳でなく、同じオーナーでも年収は人によってかなり変わってきます。

美容師で年収1000万円稼ぐことは不可能?

美容師の平均年収は322.99万円ですが、実際に年収1,000万円以上の美容師はいます

一等立地の美容室のトッププレイヤーなら、アシスタントに手伝ってもらいながら一度に複数名のお客様を担当して売上3,000万円を叩き出し、年収1,000万円を手にしていますし、業務委託サロンでマンツーマン施術を行っている美容師さんでも、歩率が高いサロンなら年収1,000万円の方はいらっしゃいます。実際に業務委託サロンAnphiにも1,000万円スタイリストがいます。

業界の平均年収は低いですが、スタイリスト以上ならご自身の腕一本で年収1,000万円も可能であるところが美容師という職業の夢のある部分ですね。

収入アップの3つの方法

給料がアップして喜んでいる女性美容師

では、美容師の平均年収より多く稼ぎたいのならどうしたら良いのでしょうか?最後に収入アップのための方法を解説します。

指名率が高い美容師になる

まず月収50万円以上稼いでいるスタイリストに共通しているのは、その指名率の高さです。技術はもちろん、接客、カウンセリング力を駆使して、フリーでご来店した新規のお客様を指名客にし、入店して1年ほど経てば、入客する8割以上の方は指名客で占めています。

ほとんどの美容室は、フリー客と指名客で報酬のバック率が異なり、もちろん指名の場合の方がバック率が高いです。その為、いくらサロンの集客力が高くても、あなたに指名が付かなければ収入は伸び悩んでしまいます。

また、正社員サロンで指名がつかないと、指名が付くスタイリストのヘルプ要因にされてしまい、いつまでたっても給料がアップしないループにはまってしまいます。

稼げる美容師を目指すなら、まずはお客様に指名される美容師を目指して下さいね!

働くサロンを変える

同じ美容師でもランクによって年収が変わることをお伝えしましたが、実は働くサロンによっても年収は大きく変わってきます。 美容室の給与システムは、正社員サロンであれ業務委託サロンであれ歩合制ですので、歩率が高いサロンで働くことが、年収アップの近道です。

ただし、歩率の高さだけで判断すると、実はそこから材料費や消費税分を抜かれたりして、想像よりも給与が低くなる恐れがありますので、注意が必要です。ここでよくある美容室の報酬体系を見比べてみましょう。

売上のバック率 消費税計算 材料費 売上88万円時の報酬
A社 フリー40%/指名50% 税込み計算 材料費込み 39万6千円
B社 フリー40%/指名50% 税抜き計算 36万円
C社 フリー40%+指名料1,000円 37万円
D社 フリー50%/指名60% 材料費別 38万7千2百円
※売上の内50%がフリー、50%が指名の場合とする。C社の場合は指名人数50人とする。 ※消費税は10%、材料費も10%の場合とする。

A社は、フリー40%バック、指名50%バックです。売上88万円で、半分がフリー客からの売上、もう半分が指名客からの売上の想定ですので、44万円×0.4+44万円×0.5=39万6千円が報酬となります。

B社は、A社とバック率は同じですが、消費税抜き計算方式です。これはつまり、「売上の消費税分はあなたの報酬にはなりません。」ということです。ですので、報酬は40万円×0.4+40万円×0.5=36万円となります。

C社は、フリー40%バック、指名は40%バック+指名料1,000円。B社同様消費税抜き計算方式です。指名数が50人だとして計算すると、80万円×0.4+1,000円×50人=37万円が報酬となります。

D社は、フリー50%バック、指名60%バックです。ただし、消費税抜き計算方式かつ材料費別です。材料費別とは「売上から材料費を引いた額を報酬とします。」という意味で、大抵材料費は10%の場合が多いです。よって消費税10%と材料費10%を引いた売上額から計算され、35万2千円×0.5+35万2千円×0.6=387,200円が報酬となります。

歩率だけで見ると、圧倒的にD社が良いですが、D社は消費税抜き計算方式かつ材料費別なので、計算してみると収入はそこまで高くありません。結果、この4社の中で一番報酬が高いのはA社ということになります。

上記の表は月収ですが、12倍して年収になおすと、一番高いA社は年収4,752,000円で、一番低いB社は4,320,000円と、40万円以上の差があることが分かりますね。

働き方は同じでも、給料が3倍になる人も

勤務時間は全く変わっていなくても、働くサロンを変えたら給料が3倍になった方がいらっしゃいます。平日は9時~16時で3日、土曜は9時~14時か16時までの時短勤務をしているママ美容師の力武さんは、以前のサロンではパート勤めで月収7万円だったそうですが、サロンを変えて業務委託美容師として働いている今では、月収21万円になったそう。

このように全く同じ働き方でも、働くサロンによって収入が変わってきますので、入社前にしっかりとチェックすることが大切です。

昇格して人をマネジメントする役職に就く

一スタイリストから昇格して、店長やマネージャー、オーナーなど、マネジメントをする役職に就くのも、収入アップの方法の一つです。規模の大きい企業で、複数店舗をマネジメントするマネージャーになったり、ご自身がオーナとして複数店舗を黒字で経営できれば、高収入も夢ではありません。

ただし、マネジメント職は、スタイリストの時に培ったスキルとはまた違う能力が必要で、スタイリストとして輝いていた人=マネジメントに適した人とは限りません。野球で言う「名選手、名監督にあらず」と同じです。

スタイリストとしての技術や接客を極めて収入アップを目指すのか、マネジメント側にいって収入アップを目指すのか、自分はどちらが向いているのか見極めて、人生設計を立てて下さいね。

まとめ

ここまで美容師の年収等についてまとめてみましたが、いかがでしたか?思っていた収入より低かったでしょうか?それとも高かったでしょうか?思う所は人それぞれですよね。最後に、このページの内容をまとめておさらいしましょう。

2022年現在、世の中の流れや昨今の人手不足を背景にして、美容師の給与水準その物も上がり続けてます。働くサロン選びの際にしっかり給与体系を見極め、計画的にキャリアアップができれば、満足のいく収入が得られるでしょう。

美容師はスタイリストになれば自分の腕でバリバリと稼ぐことも可能で、とてもやりがいのあるお仕事です。僕自身、これからも経営者として、美容師さんの給与水準には向き合って素晴らしい業界になるように努めて参りますので一緒に業界を盛り上げましょうね☆彡

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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