美容師が1人独立する際の資金や収入|メリット・デメリットは?

更新日:2021/11/19
美容室社長中村英二

1人で独立して美容室を開業する美容師さんが、近年増加しています。以前から「将来は一人でお店を持ちたい!」という想いを抱いて、満を持して独立した方ももちろんいらっしゃいます。一方で、今居るお店に魅力がなくなり、辞めるにあたって「転職するくらいなら、一人で独立しよう。」という方や、「人間関係に疲れた。」「自分はマネジメント業は向いていない。一人で気楽にやりたい。」という方も意外と多い印象です。

ネット集客やSNS等の個人発信が主流になり、お店の立地・視認性で呼ばずとも、お客様を呼べる時代になったのが1人独立に拍車がかかっている要因かと考えます。

このページではこれから一人で美容室を開業しようと考えている方へ向けて、必要な開業資金や、実際どのくらいの売上でどのくらいの収入になるのか、一人サロンのメリット・デメリットなどを詳しく解説していきます。

1人美容室の開業資金はいくら?

1人美容室を開業する場合、開業資金は何にどのくらい必要なのでしょうか。必要な項目は、物件取得費、内外装工事費、美容機器代、材料代、備品代、広告宣伝費、運転資金などです。それぞれの相場を表にしてみました。

項目費用
物件取得費110万円
内外装工事費400万円
美容機器80万円
材料代20万円
備品代30万円
広告宣伝費20万円
運転資金100万円
合計760万円

例えば、10坪の1人美容室で、スケルトンからお店を造る場合、開業資金は800万円前後かかると考えておけば良いでしょう。ただし、もちろん物件の場所や、内装工事の内容によって、金額は前後します。それぞれの詳細については、開業資金について詳しく解説しているページを参照して下さい。

1人美容室の売上と収入の実際

一番気になるのが、開業後の売上と収入でしょう。一つずつシミュレーションしていきます。

売上・客数シミュレーション

まず、月の売上、客単価¥8,000の場合の客数を予想してシミュレーションしてみましょう。なお、1人オーナーが月6日休みで24日営業した場合とします。

売上月間客数1日客数
80万円100人4.16人
90万円112人4.66人
100万円125人5.2人
110万円137人5.7人
120万円150人6.25人

売上が月80万円の場合、客単価が8,000円なので、1日4人以上施術する必要があります。1人美容室オーナーさんなら、体力的に1日6人までが限界かなと思います。つまり、売上120万円がこのお店の天井ということです。それ以上を望むなら、客単価を上げるか、休みの日数を減らすかのいずれかが必要になります。

利益シミュレーション

続いて上記の売上の時、お店の利益はいくらになるのかをシミュレーションしていきましょう。美容室経営で発生する経費は下記の項目となります。

  • 原価(材料費):10%
  • 家賃:7~10%
  • 広告費:0~10%
  • 光熱費:2~4%
  • 備品代:1~3%

「材料費」は売上に対して10%程が相場。「家賃」も売上の10%以内の場所を借りないと、経営を圧迫してしまいます。

「広告費」は一人ならかからない場合もあるでしょう。SNSや顧客からの紹介などで集客が十分であれば0%となります。一方、ホットペッパービューティーや楽天ビューティーなどのポータルサイトを利用するなら売上の10%ほどは見ておきましょう。

「光熱費」は2~4%、その他、文房具や掃除用具など「備品代」として1~3%を想定します。

【例】月の売上80万円の場合の利益・税金・給与

売上80万円
原価8万円
家賃10万円
広告費8万円
光熱費2万円
備品代2万円
利益50万円
税金2万円
借入返済7万円
お店の内部留保5万円
オーナーの給与36万円

月80万円の1人美容室の収支の内訳例です。原価8万円、家賃10万円、広告費8万円、光熱費2万円、備品代2万円がかかり、利益が50万円だとします。

税金は月の利益が50万円の個人事業主オーナーの場合、所得税、住民税、個人事業税が発生します。毎年確定申告後に支払うことになります。実際の税額は控除内容によって大きく変わってきますが、ここでは仮に月2万円とします。

借入返済は、開業時に日本政策金融公庫から1,000万円借入れた想定とし、月7万円返済していることとします。

お店の内部留保とは、お店の為の貯金のことです。突発的な支払いを想定して、日々貯金をしておく必要があります。ここでは5万円を内部留保として計上しています。

結果、月の売上が80万円の美容室の場合、手残りつまりオーナーの給与は36万円になりました。

中村英二

月80万円程度の売上だと、ご自身の給与は36万円前後です。売上の45%が報酬という結果ですね。ご自身の今の給与・報酬と比べていかがでしょうか?「思っていたより残らないな」と感じる方も多いかと思います。お店に所属していた時は、お店側が支払ってくれていた家賃や光熱費、広告費、備品を全て1人で支払わなければいけないため、どうしてもこのくらいになってしまいます。ちなみにご自身の持ち家の1階部分を改装してお店を開くのでしたら、家賃はかかりませんのでもっと手残りは多くなりますね。

【例】月の売上120万円の場合の利益・税金・給与

売上120万円
原価12万円
家賃10万円
広告費8万円
光熱費2万円
備品代2万円
利益76万円
税金9万円
借入返済7万円
お店の内部留保5万円
オーナーの給与55万円

月の売上が120万円で、利益が76万円の美容室オーナーの場合、年間の所得が1,000万円を超えるため、税金は所得税、住民税、個人事業税の他に「消費税」を支払う必要があります。そのため、先ほどの月収80万円の例よりも税額が結構高くなります。だいたい売上の4~5%を消費税として支払うことになると想定しておきましょう。

中村英二

諸々引いて、オーナーの給与は55万円になる計算ですね。このくらいになってくると「結構稼いでるな!」と感じる方が多いのではないでしょうか。家賃や広告費は同じですので、売上が上がれば、オーナーの給与の増加に直結します。

メリット

笑顔の美容師とお客様

1人美容室を経営するメリットを見ていきましょう。

好きなお店を造ることができる

まず第一に、立地から内装、価格設定、コンセプトなど、何から何まで自分の好みのお店をつくることができます。あなた1人の美容室ですので、誰からも反対を受けることはありません。お店に所属していた頃は決められたルールの中でしか動けず、思い通りにいかないこともあったかもしれませんが、1人美容室でしたらそのような心配はありません。

人間関係に悩まされない

美容師が複数人いると、どうしても人間関係の摩擦がつきものです。さらに、副店長や店長などの管理職の立場になれば、スタッフ間のいざこざがあれば仲介に入らなければいけませんし、入退店の度に対応しなければならず、エネルギーを使いますよね。

そういった人間関係の悩みに疲れてしまった人にとっては、1人美容室はとても魅力的なのではないでしょうか。1人美容室なら、お客様にのみエネルギーをそそげます

勤務日や勤務時間も自由

勤務日、勤務時間も、もちろん全て自由に決定できます。また、予約が入っていなければ自由時間で、漫画を読むなり、動画を見るなり、好きに行動できます。もちろん「夜予約が入っていないから、今日は早めに締めちゃおう。」といったこともできます。

売上が一定額を超えてくると、正社員サロンや業務委託サロンより稼げるようになる

先の例で説明した通り、売上が一定額を超えてくると、正社員サロンや業務委託サロンより稼げるようになります。売上が月120万円を超えてくると、サロンに所属しているころより稼げるようになるイメージでしょう。

複数人で営業する美容室よりも初期投資や経費がかからない

1人美容室の開業資金は約800万円と最初にお話しをしましたが、これがスタッフを2人抱えて3人サロンを開業しようとすると資金約は1,500万円程必要になってきます。単純に面積が広く、倍くらい必要になりますので、その分費用も嵩むわけです。

また、スタッフを雇う以上、人件費、福利厚生費が必要ですし、辞めた場合は求人広告費が発生してきますので、経費も1人美容室よりも圧倒的にかかります。1人美容室でしたら、そういった経費は発生しません。

デメリット

孤独な美容師

1人美容室を経営するデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?実際に1人美容室をやっている方や、やっていた方から聞いた内容をまとめておきます。

長期的なビジョンが持ちにくい

テナントでお店を借りている1人美容室オーナーさんの中には「この場所でこの先何十年も1人でお店をやるイメージが湧かない。」という方がいらっしゃいます。逆に家兼店で美容室をやる方は、腹を据えてずっとやろうと決めていることが多いですね。ただそれでも「30年後もハサミを持ち続けられるのか?」と聞かれて「自分はこの仕事が大好きだから絶対に大丈夫!」と自信をもって答えられる人はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

いつまでも今の様にハサミを持って働ける体力があるわけではありません。ハサミを置くまでに老後の資金が貯まっていれば全く問題はありませんが、貯まる前に「ハサミを置いてマネジメント業務に徹したい。」となった時、お店の設計がそもそも1人の設計なので、仲間も受け入れづらいし、方向転換がし辛いのが1人美容室のデメリットと言えるでしょう。

店を辞める時に費用が発生する

初めからお店を辞めるつもりの方はいらっしゃらないでしょうが、それでも様々な事情からお店を閉める決断が必要な場合があります。 そうなった時、お店を閉めるための費用が必要になってきます。造作の撤去費用、解約を出してからの空家賃、また銀行や金融公庫から借りていた開業資金の支払いが残っていたら、その返済は閉店後も続きます。

さびしくなる

スタッフの人間関係や出入りに悩まなくなり、はじめは楽しいのですが、数年経つとそれが寂しくなってくるそうです…。美容師さんの多くがもともと人が好きで、美容師さんになる方が多いので、お客さんとの関係だけだとどうしても寂しくなるのではないでしょうか。私が聞いた1人美容室を閉じた方の話だと「お店で仲間と楽しく仕事をしている美容師さんのSNSなどを見ると羨ましくなる。」のだとか。

勤務時間の概念がなくなりダラダラしてしまう

1人美容室は、時間が自由に設定でき楽な反面、明確な「勤務時間」と「休みの日」の境目がなくなり、ついダラダラと営業してしまうことが多くなるそうです。

収入のアッパーが限られてくる

メリットで「売上が一定額を超えてくると、正社員サロンや業務委託サロンより稼げるようになる」とお話はしましたが、1人だとどうしても上限が決まってきます。カリスマ美容師で年収1,000万円は可能だとしても、2,000万円を1人美容室で稼ぐのは物理的に難しいでしょう。チーム制で、多くの美容師さんとお客様から支持されるお店のマネジメントをしないと2,000万円以上は稼げないと思います。

中村英二

メリットもデメリットもどちらもあります。後悔しない為にも、いずれもきちんと把握した上で開業することをおすすめします。

1人美容室を開業するか、シェアサロンでフリーランス美容師として働くか

1人美容室を開業する理由が「人間関係に疲れたから、自由にのびのび働きたい。」「勤めているサロンが閉店するから、独立しようかな。」ということでしたら、シェアサロンを選ぶのも一つの手でしょう。シェアサロンは1人美容室とどう違うのか、詳しくみていきます。

働き方の自由度は一緒

1人美容室オーナーも、シェアサロンで働くフリーランス美容師さんも、どちらも「個人事業主」となります。働く時間の自由度もほぼ同じと言えるでしょう。シェアサロンでは、月単位、日単位、時間単位で細かく区切って借りることが可能です。もちろん、正社員時代に必須だった朝礼やミーティングに参加する必要もありません。

メニュー構成の自由度は同じだが、内外装の自由度はシェアサロンが低い

メニュー構成の自由度は1人美容室、シェアサロンで働くフリーランス美容師ともに同じで、自分の好きなように決めることができます。

一方で、シェアサロンの多くは、借りている美容師さんの都合で内外装を変更することができません。月額固定費を払えば、自身の区画はある程度物や飾り付けを自由に行って良いという場合もありますが、日単位や時間単位で借りる場合は基本的に使った後は、道具などは残さず綺麗にして帰るというのが鉄則です。

シェアサロンも1人美容室も集客は自身で行う必要がある

シェアサロンも1人美容室も集客は自身で行う必要があります。シェアサロン側は基本的に集客してくれません。今のお店からお客様を連れていければ良いですが、それでは足りない場合はSNSやポータルサイトを利用して集客をしなければいけません。

1人美容室よりも低リスクで独立できる

シェアサロンなら、1人美容室を開くときに必要な800万円程の開業資金は必要ありません。一般的に、数万円の初期費用に毎月の月額利用料を払えばOKですので、より低リスクで独立できます。

借り入れをする必要もないので「初期投資の回収」を考える必要もありません。もし、上手くいかなかった場合でも、お店を造ったわけではないので閉店資金の必要もありません。辞めようと思えば簡単に辞められるのはシェアサロンの大きなメリットでしょう。

中村英二

もっとシェアサロンについて詳しくしりたいという方は、シェアサロンとは?働く美容師のメリット・デメリットや業務委託サロンとの違いで紹介していますので、ご覧になってみて下さい。

まとめ

1人で美容室を開業する場合の、開業資金や、実際の売上、収入、メリット、デメリット、シェアサロンで働くフリーランス美容師との違いを解説してまいりましたが、いかがでしたか?1人美容室は良い面も悪い面もどちらもありますが、大事なのは、あなた自身が今後どうなっていきたいかでしょう。

1人美容室が向いている方とそうでない方は分かれます。「技術が優れていて顧客の指名率が高く、美容師の仕事が大好き。SNSでの自己発信も得意。けれど、スタッフのマネジメントは苦手で、大人数で過ごすより、1人のお客様と向き合ってもくもくと作業をしていたい。」という方は、1人美容室オーナーにとても向いていると私は思います。

一方で「技術には自信があるけど、SNSでの自己発信は苦手。」という方はいずれ集客で困る時がくるかもしれませんし、「マネジメントは苦手だけど、仲間とワイワイ過ごすのは好き。」という方は、いずれ寂しくなるかもしれません。

ぜひご自身の適正を見極めて判断し、より良い美容師人生を歩んでいってくださいね。最後までお読みくださり、ありがとうございました。

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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