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業務委託美容師は稼げる?平均月収は?実際の収入を公開!

更新日:2024/02/11
美容室社長中村英二

「業務委託美容室は気になるけど、本当に稼げるのか不安。」「完全歩合だから実際月収がいくらになるのか分からない。」という方の為に、よくある業務委託美容室の報酬形態や、実際に業務委託美容師として活躍している人がいくら稼いでいるのか、正社員美容室とどのくらい変わるのかなどを詳しく解説します。

よくある業務委託美容室の報酬形態

業務委託美容室は基本的に完全歩合で、売上に対して40~60%バックというサロンが多いです。その中で、税込み計算なのか税抜き計算なのか、材料費を抜かれるのか抜かれないのかという違いがあります。

売上のバック率 消費税計算 材料費 売上80万円時の報酬
A社 フリー40%/指名50% 税込み計算 材料費込み 36万円
B社 フリー40%/指名50% 税抜き計算 32万4千円
C社 フリー40%+指名料1,000円 33万8千円
D社 フリー50%/指名60% 材料費別 35万2千円
※売上の内50%がフリー、50%が指名の場合とする。C社の場合は指名人数50人とする。 ※消費税は10%、材料費も10%の場合とする。

A社とB社は売上のバック率がフリー40%・指名50%で、材料費も込みで共通していますが、一方は消費税込みの計算、他方は消費税抜きの計算となっています。

「消費税抜き」の計算ということは、売上80万円から消費税の8万円を引いた72万円からのフリー40%・指名50%計算となるため、報酬は32万4千円となり、「消費税込み」の場合の報酬36万円と比べて3万6千円下がることが分かります。

C社の場合は、まず「消費税抜き」ですので売上80万円-8万円で72万円となります。その40%バックの28,8000円に指名料50人分の5万円を足すので 33万8千円が報酬で、こちらもA社よりは低くなります。

指名客の施術内容がカットシャンプーなどの低単価メニューの場合は指名料1,000円は美容師にとって良いですが、カラー+パーマ+トリートメントなどの内容で施術内容が1万円を超えてくる場合は、指名50%バックの方が実際に手にする報酬額が高くなります

D社の場合はフリー50%/指名60%とかなり高歩合ですが、「消費税抜き」かつ「材料費別」です。この「材料費別」というのは、売上の10%程を材料費として差し引いて計算されることで、たいてい「※歩合より諸経費を頂いております。」と募集要項に記載があります。計算式は下記のようになります。

フリー:(売上40万円ー消費税4万円ー材料費4万円)×0.5=160,000円 指名:(売上40万円ー消費税4万円ー材料費4万円)×0.6=192,000円 合計:352,000円

合計で報酬額は35万2千円となり、A社よりも報酬額が8千円安い結果となりました!このように、同じ業務委託サロンでも報酬計算式が異なり、それによって同じ仕事量でももらえる報酬額が変わってきます。より「稼ぎたい」人は契約前にしっかり確認する必要がありますね。

実際の業務委託美容師さんの報酬例。正社員サロンの時との差は?

実際に業務委託サロンで働く美容師さんはどのくらい稼いでいるのでしょうか?私が経営している美容室Anphiのスタイリストの報酬例をご紹介します。

業務委託サロンの報酬例【週休2日の方】

週休2日の業務委託美容師の請求書
項目 売上 報酬
指名 686,600円 377,630円
フリー 336,000円 147,840円
店販 18,480円 3,696円
合計 1,041,080円 529,166円
その他諸手当
口コミ手当 1,000円
勉強手当 10,000円
役職手当 18,000円
保険手当 1,936円
請求報酬額 560,102円

こちらは週休2日で働いているスタイリストの報酬例です。当社はフリー44%、指名55%、店販20%バックに各種手当が付きます口コミ手当はホットペッパービューティ口コミ評価オール5で返信済みの投稿に関して1件に付き500円支給するものです。役職手当は、店長や副店長、チーフに支給される手当です。この請求書の方の場合はチーフとしてお店の売上の数%にあたる18,000円が支給されています。

保険手当は会社指定の収入補償保険に入会した場合、その半額を会社が支給するというものです。もしも病気や怪我で長期的に働けなくなった際に、保険料が定額支払われます。「業務委託美容師は個人事業主だから労災などがなく不安…」という方の為に設けている制度です。

正社員サロンの場合の給与例

正社員サロンの場合、上記の働き方でどのくらい稼げるのかも見てみましょう。もちろん給与体系はサロンによりけりではありますが、今回は一例として、固定給25万円+指名歩合30%+店販10%の場合とします。

ちなみに正社員サロンで働いた経験がある方はご存じでしょうが、固定給がある代わりにフリー客の売上に関してはバックがない場合がほとんどですので、今回もその法則で算出していきます。

項目 売上 給与
固定給 250,000円
指名 460,300円 125,536円
フリー 483,300円 0円
店販 13,970円 1,270円
合計 957,570円 388,236円

正社員サロンは給与計算の際、税抜きで計算するのが基本です。指名売上が460,300円の場合、税抜きは418,455円で、その指名歩合30%は125,536円となります。店販は税込み13,970円ですので、税抜きで127,00円となり、その店販歩合10%は1,270円です。よって、固定給25万円+指名125,536円+店販1,270円=合計388,236円が給与となります。

私が経営している業務委託サロンでは報酬額が560,102円ですので、約17万円の差がでることがお分かりいただけるかと思います。

業務委託サロンの報酬例【月4日休み】

月4日休みの業務委託美容師の請求書
項目 売上 報酬
指名 1,428,400円 785,620円
フリー 210,000円 92,400円
店販 45,100円 9,020円
合計 1,683,500円 887,040円
その他諸手当
特別手当(遅番手当) 10,000円
メディア手当 50,000円
達成手当 70,000円
請求報酬額 ¥1,017,040

上記は、当サロンでもトップの報酬額を誇るスタイリストの例です。月4日休みです。遅番手当は、遅番で月15日以上勤務してくれた人に対して支給している手当です。シフト上早番に偏りやすいので、Anphiでは遅番スタッフに遅番手当を支給致しております。

メディア手当は、当社で運営中の「美容師さんのためのお役立ち知識」を発信するメディアの取材に応じ、知識や技術を披露してくれる方に支給する報酬です。

達成手当というのは月の総売が100万円かつ指名人数120名を達成した場合の特別手当で、7万円を支給しています。繁忙月の12月や3月は達成手当対象者が多くいらっしゃいます。

業務委託サロンの報酬例【週4日出勤】

週4日出勤の業務委託美容師の請求書
項目 売上 報酬
指名 ¥408,260 ¥224,543
フリー ¥54,700 ¥24,068
店販 ¥11,880 ¥2,376
口コミ手当 ¥1,000
個人発注 -¥3,784
請求報酬額 ¥248,203

上記は、ママさん美容師さんで週4日出勤、勤務時間が9時~15時の時短勤務の方の報酬例です。指名顧客の心をしっかりつかんでいて、報酬額の約90%が指名売上です。

個人発注は自身の名刺やコーム、手袋等を会社経由で購入した場合に、報酬から差し引かれる額です。

この様な自由な働き方を正社員サロンでする場合、正社員ではなくパート等の雇用形態になりますので、給与は時給計算となるでしょう。上記の方は月96時間勤務です。仮にパート時給が2,500円の場合、給与は240,000円ですので、約8,000円低い額となります。時給が2,600円で上記の報酬と同額程度の稼ぎになりますね。

時給2,600円のパート・アルバイトはなかなかないですよね。そう考えると、この方はかなり効率よく稼げていることが分かります。家事育児に忙しいママさん美容師さんにとって、シフトを自由に組める業務委託サロンは働きやすいようです。

業務委託美容室を選ぶ際に確認すべき注意点

美容室で働く女性美容師

業務委託サロンに転職する際、入店前に確認しないと後々損をする場合があります。業務委託サロンでも報酬形態は様々、募集要項の記載の仕方も様々で、歩率が良い様に見えて実は受け取る報酬額が低いなんてこともあるのです。ここでは「稼ぎたい!」という方が業務委託美容室を選ぶ際に注意すべき点をご紹介します。

求人サイト等で提示しているそのサロンの報酬体系の確認

まずは、求人サイトや公式ホームページ等で募集要項の報酬体系をしっかりと確認しましょう。どの会社もフリー・指名・店販のバック率が記載されていますね。

ここで気を付けたいのは「~」という表記です。例えばフリー40%~50%と記載されている場合、ほとんどが40%だと思っておいた方が良いです。この書き方で50%もらえるのは、長年勤めているごく一部のスタイリストだけでしょう。

報酬は税込み計算なのか税抜きなのか、材料費込みなのか別なのか

続いて、その報酬が税込み計算なのか税抜き計算なのかをチェックしましょう。これについては求人サイトに記載されていないため、問い合わせかサロン見学時に質問する必要があります。

とはいえ税込み計算で報酬を払っているサロンは、その分報酬額が高いため、聞かなくても説明してくれるところが多いです。逆に言えば、そこについて何も触れてこないサロンは税抜きの可能性が高いと言えます。

材料費込みか別なのかも同様です。材料費別のサロンは、売上の10%を材料費として引かれることが多いです。バック率が高いサロン程材料費別な場合が多い為、「稼ぎたい」と思っている人は要注意事項となります。求人サイトや公式ホームページ等に「※歩合より諸経費を頂いております。」と記載がある場合は大抵が材料費別ですね。

指名料100%バックの罠

業務委託サロンによっては、報酬体系に「指名料100%バック」と記載がある場合があります。これは一見すると「指名歩合100%バック」の様に見えて、ものすごく稼げそうですが、あくまでも「指名料」が100%バックですので、お客様からいただく指名料500円や1,000円をそのままバックされるだけです。

その他手当の内容

その他にどんな手当があるのかでも受け取る報酬額は結構変わってきますのでよく確認しましょう。業務委託サロンでよくある手当は下記の通りです。

口コミ手当
1件500円
交通費
5,000円
店長手当
お店の総売上の1%
副店長手当
お店の総売上の0.5%
レジ締手当
1回1,000円
紹介手当
5万円

サロンによっては、他にも様々な手当があります。例として、私の経営するお店の上記以外の手当例を記載しておきます。

遅番手当
10,000円
ブログ手当
3,000円
ミーティング手当
2,000円
メディア手当
2万円~10万円
収入補償保険手当
保険料に応じて
達成手当
70,000円
撮影手当
各1,000円
教育者手当
30,000円
引っ越し手当
30万円

遅番勤務予定の方は遅番手当があるサロンの方がないサロンよりも稼げますよね。また口コミに自信がある人は口コミ手当があるサロンが、ブログを書くのが得意な人はブログ手当がある方が稼げるわけです。逆にブログに関しては、手当ではなく、決められた投稿数を書かなければ罰金というサロンもあります。とにかく「稼ぎたい!」という方は、ご自身の働き方にあった手当のあるサロンを選ぶことをおすすめします。

一店舗当たりの月間動員数とその内訳

バック率や手当がいくらよくても、そのサロンにお客様がいらしていなければ稼げません。サロン見学時に、その店舗の月間動員数と、新規と再来の割合を聞いておきましょう。当たり前ですが、転職者にとっては新規のお客様が多い方がすぐに稼げるようになります。

ただし、オープンして半年のお店とオープンして8年経過したお店では、新規と再来の割合は変わってきます。8年経過しているにも関わらず、新規の割合がかなり高いというのは顧客がついていないということになり、サービスの質が低かったり、人が大量に辞めているということも考えられますので注意が必要です。

自分の希望する働き方でどのくらい稼げるのか

人によってそれぞれ希望する勤務日数や時間帯、曜日は違いますよね。それによってどのサロンがより稼げるかも変わってきます。 例えば、平日の日中に働きたい人が、平日にお客様が少ないサロンで働いても稼げません。そのサロンの客層や集客状況を聞いて、自分の希望する働き方でどのくらい稼げるのかを見極める必要があります。サロン見学時に、自分と同じような働き方をしている人がどのくらい稼いでいるのかを聞いても良いでしょう。

また、入客時に売り上げを上げるために掛け持ち有りきで働きたいか、マンツーマン接客をしたいかでも、稼ぎ方が大きく変わってきます。例えば、バック率が高い業務委託サロンには掛け持ちありきで入客を詰め込むサロンが少なくありません。1時間で何人ものお客様を同時にノーヘルプで施術するため、かなり忙しいですが、その分稼げます。「とにかく稼ぎたい!」「どんどん入客したい!」という方にはこのタイプのサロンが向いているでしょう。一方「お客様一人ひとりと向きあって施術をしたい。」という方にとっては、掛け持ちなしで入客するスタイルの業務委託サロンに勤めることをおすすめします。サロンによって入客ルールがありますので、こちらもサロン見学時に確認した方がいいでしょう。

まとめ

業務委託美容師はどれくらい稼げるのか?よくある報酬体系や実際の業務委託美容師の報酬例を交えながらお話しをしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

先述の通り、同じ業務委託サロンでも、報酬体系や手当内容は千差万別で、同じ働き方でも報酬は変わってきます。その為、求人サイトに書いてある良い記述だけではなく、実際にサロン見学などで内情をしっかり把握することをおすすめします。

ぜひ就職・転職先選びで後悔しないで、充実した美容師ライフを送ってくださいね。

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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