美容室開業時の保健所の検査|必要書類や立入検査のポイントは?

更新日:2024/02/12
美容室社長中村英二

美容室の開業時に必須なのが保健所の立入検査。どんな内容なのか、しないとどうなるのか、ご存じですか?

このページでは、実際に美容室を複数店舗経営している私中村が、保健所の検査に必要な書類や、立入検査で見られるポイントなどを詳しく解説します。保健所の検査に1回で通りたい美容室オーナーさん必見です!

検査時に不備があると再検査が必要になってしまいます。予定通りお店をオープンさせるためにも、事前に美容室に必要な設備基準を確認しておきましょう!

保健所の検査とはどういうもの?しないとどうなる?

美容室は、シャンプーでは美容師がお客様の肌に直接触れ、カットでは刃物を使用する場所です。そのため、カットなどの作業を十分に行うための照明器具の明るさや、換気設備、作業場の面積、床の材質、救急箱の設置などなど、美容室として認められるには様々な規定があります

新しく美容室をオープンする場合は、保健所へ行って「開設届」を届け出、立入検査を受け、美容室の営業許可証となる「美容所適合確認書」を受け取る必要があるのです。

これは厚生労働省の定める「美容師法」の第十一条と第十二条に明記されており、もしも検査に通らないまま営業を開始してしまった場合、事実が判明した時点で30万円以下の罰金が科せられます

美容師法

【第十一条】美容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、美容所の位置、構造設備、第十二条の三第一項に規定する管理美容師その他の従業者の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。

【第十二条】美容所の開設者は、その美容所の構造設備について都道府県知事の検査を受け、その構造設備が第十三条の措置を講ずるに適する旨の確認を受けた後でなければ、当該美容所を使用してはならない。

※引用元:美容師法|e-Gov法令検索

保健所の手続きに必要な書類

保健所の立入検査を受けるために、まずは従業員の美容師免許証の原本や医師の診断書などを持って保健所へ行き、必要書類に記入しなければいけません。ここでは、その手続きに必要になる書類について説明します。

開設届

「美容所開設届」には美容室の名称や所在地、開設者の氏名と住所、生年月日などを記入します。

保健所によって書式が若干異なります。美容室の所在地を管轄する保健所に行くか、ホームページからも入手することができます。

従業者名簿

美容室で働く従業員の氏名と生年月日、美容師免許の登録番号と登録日を記載した従業者名簿も提出する必要があります。こちらも保健所毎に決まった書式があるので、そちらに記入しましょう。

地域によっては、開設届の中に従業員者名簿の記入欄がある場合もありますね。

美容師免許証

名簿に記載した美容師全ての美容師免許証の原本も、照合のために持っていく必要があります。

医師の診断書

従業者名簿に記載した美容師は全て、結核及び皮膚疾患ではないこと明記された医師の診断書も必要になります。

医師の診断書は3カ月以内のものであればOKな場合と、1カ月以内のものでなければいけない場合など、保健所によって異なりますので、事前に管轄の保健所のホームページで確認しておきましょう。

構造設備の概要と施設の平面図

施設が美容所として適切な構造、設備となっているかを確認するための書類として、照明の数や換気の有無、作業室と接待場所、洗い場、施術椅子の数、消毒設備について記載した書類と、平面図を提出する必要があります。

平面図は依頼している内装工事業者からもらいましょう。上の画像は、私の運営する美容室Anphiのオープンの時に保健所に提出した図面です。

管理美容師の講習会の終了証

美容師が常時2名以上従事する場合は、管理美容師の講習会の終了証が必要です。

管理美容師とは

管理美容師とは言わば「美容室の衛生管理のスペシャリスト」。なるためには、以下の2つの条件をクリアする必要があります。

  • 美容師の免許を受けた後3年以上美容の業務に従事した経歴がある
  • 都道府県知事が指定している講習会の課程を修了している

登記事項証明書(法人の場合)

開設者が法人の場合は、登記事項証明書の提出も必要になります。「会社謄本」とも言いますね。

これは「会社名」「本店所在地」など法人の基本情報を証明できる書類で、6カ月以内に発行されたものが必要です。法務局に行って入手しておきましょう。法務局のホームページからも請求できます。

住民票の写し(開設者が外国人の場合)

開設者が外国人の場合は、市町村が発行する住民票の写しの原本が必要です。証明日の翌日から6ヶ月以内のものが有効となります。

検査手数料はいくら?

保健所の開設届を提出する際、検査手数料として2万円前後の支払いを求められます。

こちらの金額も保健所によって異なります。例えば東京都新宿区だと24,000円で、神奈川県小田原市だと16,060円です。

基本現金払いですので、事前に美容室の所在地管轄の保健所のホームページをチェックして現金を用意しておきましょう。

美容室開業に必要な保健所の手続きの流れ

1.事前相談

内外装業者と打合せをし、図面が上がってきたら、一旦保健所に図面を持参して事前相談をしましょう。その時に、後の検査に通らないような点があれば教えてもらえます。工事着工前なら、内装業者もいくらでも図面の引き直しをしてくれますよ。

2.工事

事前相談で保健所からお墨付きをもらえたら、いよいよ工事スタートです。

3.開設届の提出と検査手数料の支払い

開設届は営業開始の2~3週間前に提出しにいきます。この時検査手数料の支払いも必要です。基本現金払いですので、用意しておきましょう。

4.確認検査する日時の調節

3の開設届の時に窓口で検査日を決定します。

5.施設完成

内装工事が終わったら、椅子や消毒設備なども規定通り設置しましょう。

6.立入検査

保健所の職員さんがお店に来て立入検査をします。美容所としての基準に合致しているかを確認されます。30分程度で終わります。 不備事項がある場合は、改善後に再検査となってしまいます。指摘を受けなくて良いように事前に基準を満たしているかきちんと確認しておきましょう。

                                

7.営業許可が出たら、美容所適合確認書を取りに行く

検査で問題なかったら、後日保健所の方から電話で「美容所適合確認書が出来たので取りに来てください。」と連絡がきます。保健所に取りに行きましょう。

美容所適合確認書は、店内の見えるところに飾ってくださいね。

設備基準と検査に1回で通るための注意すべきポイント

保健所の立入検査を1回で済ませる為にも、美容所の設備基準を把握して、事前準備を怠らないようにしましょう。

美容室は常に清潔に保つこと、消毒設備を設けること、照明及び換気を充分行うことが求められ、それらが満たせされているかを保健所の職員さんに目視でチェックされます。ここではチェックされる具体的な内容と、注意すべきポイントをご紹介します。

作業室の面積と椅子の数

作業及び衛生保持に支障を来さないよう原則13.2㎡以上の面積が必要です。ただし、この場合は作業椅子6台までで、それ以降椅子1台増える毎に3㎡の面積が必要となります。

床の素材

床及び腰板にはコンクリート、タイル、リノリューム又は板等、液体が浸透しない不浸透性材料を使用する必要があります。

洗髪設備

洗髪専用の流水設備が必要です。陶器等の不浸透性材料を使用し、洗髪に十分な大きさで、汚水が完全に排水できる構造であることが求められます。こちらはメーカーからシャンプー台を購入すれば特に問題はありません。

まつエクサロンの場合は洗髪設備は免除されます。

器具等の洗浄設備

洗髪設備とは別に器具等を洗うための流水設備を設けてください。

待合スペース

椅子を置き、お客様用の待合設備を設けましょう。

スタッフの休憩室

スタッフの休憩室は、作業に場とは壁やドア等で区画されている必要があります。

採光・照明の状況

美容師が、美容のための直接の作業を行う作業面の照度は100ルクス以上が求められます。

換気設備の構造

美容室は、換気扇や窓などを設置し、十分に換気できる設備構造が求められます。厳密に言うと、美容所内の空気一リットル中の炭酸ガスの濃度を0.5%(5,000ppm)に保つことができるようにしておく必要があります。

使用済器具等収納場所

使用済みで未消毒の器具・タオル等を収納する場所も設ける必要があります。

毛髪箱・汚物箱

ふた付きの汚物箱と毛髪箱は各1個ずつ用意しましょう。

消毒設備とその保管場所

  • フタ付きの消毒用バット
  • メスシリンダー50ml(薬剤用)・500ml(希釈水用)各1本
  • 消毒用エタノール
  • 逆性石けん(塩化ベンサルコニウム溶液)
  • 消毒済みの器具を収納するケース
  • 未消毒の器具を収納するケース
  • タオル格納棚

エタノールやフタ付きの消毒用バットなどの消毒器具の他に、消毒済みの器具や洗濯済みのタオルを、未消毒の物と区別して格納できる保管場所が必要です。専用のガラス張りのケース、または戸棚を設け、十分な量のタオルや器具を収納しておきましょう。

救急箱

美容室の場合、カットなどで誤ってお客様を傷つけてしまうリスクがあります。そのような万が一の事態に備えて、外傷に対する救急処置に必要な薬品及び衛生材料を常備する必要があります。消毒液のマキロンやバンドエード、ガーゼ等が入った救急箱セットを1つ購入しておきましょう。

お客様へのドリンク提供マシーンはNG

現在多くの美容室でお客様へのドリンクの提供が行われていますが、本来店舗で食べ物や飲み物を提供する場合、食品衛生法により”飲食店営業許可”又は”喫茶店営業営業許可”が必要で、美容室でのドリンクや茶菓子の提供は原則NGとなっています。

その為、保健所へ事前相談に持っていく図面に、「ドリンクサーバー」なんて記載があると、職員の方に指摘されますし、立入日当日に作業場にサーバーが置いてあると、再検査の対象となってしまうので注意しましょう。

なお、扉で仕切られているスタッフの休憩スペースに、“スタッフのため”にドリンクサーバーや冷蔵庫を置くのは問題ありません

上記の通り、美容所として保健所から認めてもらうには数多くの基準があります。そのため内装業者を選ぶ際は、美容室施工実績のある業者を選ぶことをおすすめします。

しっかり事前準備をしてスムーズに開店を!

今回は美容室をオープンするために必要な保健所への手続きや、立入検査時の対策についてお話ししましたがいかがでしたか?

オープン予定日にきちんと開店できるように、立入検査を1回で済ませるためのポイントを最後にまとめておきます。

  • 内外装業者は美容室施工実績のある会社へ依頼する
  • 工事着工前に必ず保健所へ事前相談へいく
  • スタッフには美容師免許原本と医師の診断書を準備してもらっておく
  • 美容師が常時2名以上従事する場合は、管理美容師の講習会の終了証の用意も忘れずに
  • ふた付きの汚物箱と毛髪箱。消毒設備、救急箱の準備をしっかりと
  • お客様へのドリンク提供は保健所からNGが出るので気を付けて

初めてのオープンは不安がつきものだと思います。この記事があなたの美容室オープンへの手助けに少しでもなったら幸いです。

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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