リピートにつながる美容師のカウンセリング方法|確認事項や接客のコツは?

更新日:2024/02/12
美容室社長中村英二

新規のお客様がリピーターになり、指名してもらうために重要なカウンセリング方法について、当社美容室Anphiの統括マネージャーと一緒に絶対に聴くべき確認事項や流れ、接客時のコツを具体的にご紹介します。「なかなか思う様に指名に繋がらない。」とお悩みの美容師さんは必見です!

今回話を聞いた人

マネージャー・野口翔一朗

都内の美容学校を卒業後、複数の店舗を経験。その後、Anphiサロンのオープニングスタッフとして参加。現在はサロンワークを続けながら統括マネージャーとしても奮闘中。日々、お客様のお悩みに耳を傾けている。趣味は育児。

美容室におけるカウンセリングの重要性

『美容師はヘアデザインが命だ。』とお考えの美容師さんは多いと思います。確かに、ヘアデザイン・技術力はなくてはならない重要なものです。それがなければ「お客様の望むヘアスタイル」や、「なりたいイメージ」を実現することは困難でしょう。

それと同じくらい重要なのが、その「お客様の望むヘアスタイル」や、「なりたいイメージ」を聴きだす能力だと私たちは考えます。これを聴きだせないと、いくら技術力が高くても、お客様から満足してもらうことはできません。

そのためにはカウンセリングがとても重要です。カウンセリングでお客様の話を聴き、お客様を理解し、本当の意味でお客様の望むヘアスタイルを提案することができて初めて、あなたのヘアデザイン力、技術力が活きてきます。お客様が心からやってほしいと望んでいることに耳を傾け、それに合った提案をすることができればお客様満足につながるでしょう。

満足して下されば、再来店につながり、あなたの指名客は増え、美容師の仕事がより楽しくやりがいのあるものになりますよ。

売上が高く、指名が多い美容師さんほど、技術だけでなくカウンセリング力や接客力が高いですよね。

カウンセリングからクロージングまでの流れ

おすすめしたいカウンセリングからクロージングまでの基本的な流れは下記の通りです。

  1. 希望のヘアスタイルを聴く
  2. 今の髪の状態で気になっているところを聴く
  3. 家での普段のヘアケア・セット方法等を聴く
  4. 写真を使ってイメージを絞っていく
  5. 鏡を使ったスタイルの確認と共有
  6. 予約時より価格が上がる場合は必ず確認を
  7. カットの途中でお客様にヘアを触って確認してもらう
  8. 施術後はお手入れ方法をアドバイス
  9. クロージング

1番から6番が施術前のプレカウンセリング、7番が施術中のミドルカウンセリング、8番が施術後のアフターカウンセリングです。

プレカウンセリングで確認することが多いですね。では、一項目ずつ具体的に解説をお願いします。

希望のヘアスタイルを聴く

まずはお客様の希望のヘアスタイルを聴きます。スタイルチェンジを望んでいる人、少し整えるだけで良い人、コンプレックスがあってそれを何とかしたい人など色々なタイプのお客様がいらっしゃいますが、どのタイプのお客様でも、ここで美容師のあなた自身がきっちりヘアスタイルをイメージできるまで聴き出せるかが鍵です。

お客様の最初の一言が第一の希望!必ずカルテに書く

「希望のヘアスタイルはありますか?」とお伺いした際に、お客様が発する第一声は来店の目的、つまり「心の悩み」が凝縮されています。ですので、必ずカルテに書き留めましょう。

この後のカウンセリングの過程で、お客様が私たち美容師の意見を聞いて「お任せします」となった場合でも、この最初の一言は絶対に忘れないで下さいね!

新規のお客様は、とにかく深くまで聴き出す!

例えば「ショートにしたい」という人でも、どんなショートなのか?を掘り下げて聴き出す必要があります。

どういうショートを見てショートになりたいと思ったのか、ヘアカタログやSNSなどで参考写真を探すところから始めましょう。

また、ショートは過去にやったことがあるスタイルなのかも聴き、それが気に入っていたのか、気に入っていなかったのか、その理由まで聴いていくと、お客様がやってほしいこと、やられたくないことが明確になっていきます。

参考写真を探している時に否定しないでまずは共感してあげて下さい。初対面の美容師に、自分の意見を否定されたとたん、お客様は心を閉ざしてしまいます。

持ってきてくれたヘアスタイル写真を否定しない

お客様の中にはヘアスタイル写真を予め用意して持ってきて下さる方がいらっしゃいます。ここで見た瞬間に「これはちょっとお客様だと難しいですね」等と、いきなり否定から入る美容師さんが結構いらっしゃいますがこれはNGです。

せっかく一生懸命探して持ってきたのに否定されたら良い気持ちはしないでしょう。それに多くのお客様は「このモデルと自分は違うから、全く同じようにならない。」と分かった上で持ってきています。それなのに開口一番に「これはちょっとお客様だと難しいですね」と言われたら「そんなこと分かっているわよ!感じ悪いわね!」となってしまうでしょう。

実際に私のお客様でも、「前の美容室で美容師さんに持参したヘアスタイル写真を否定されてから、写真を持って行かなくなった…。」という方がいらっしゃいました。

確かに当サロンの1万人のお客様に行ったアンケート結果でも、スタイル写真を持参したお客様の約半数の方が、「スタイル写真を持参したからそれと同じにしてほしい」と同時に「自分に似合うヘアスタイル(カラー)を提案して欲しい」を選択していました。

野口さんの言う通り、お客様は意外と「このモデルと自分は違うから、全く同じようにならない。」と思っているのかもしれませんね。

まずは写真を持ってきたことを褒める

ヘアスタイル写真を持参して下さったら、それが可能か不可能かに関わらずまずはそのことを褒めましょう。「素敵なヘアスタイル写真ですね!」でも「持ってきて下さってありがとうございます!助かります!」でもいいです。お客様が「良いな」と思って持ってきて下さったのですから、まずは否定せずに共感して褒める、これを心掛けてみて下さい。

そして、褒めた後に代案を提案しましょう。代案の提案の仕方については、後ほど「ヘアカタログやSNSなどの写真を使ってイメージを絞っていく」のところで解説します。

 

今の髪の状態で気になっているところを聴く

ご新規で来店されるお客様の場合、前のサロンで何かしら気に入らないことがあったと想定ができます。それはサロンの雰囲気やスタイリストの接客かもしれませんが、今のヘアスタイルが気に入っていない可能性もあります。なので「髪の状態で気になっていることはありますか?」と聴いてみましょう。

今のヘアスタイルに気に入っていない箇所があるなら、それは予め知っておきたいですよね。

7割以上のお客様はヘアの悩みを持っている

くせ毛を気にしていたり、髪が割れることを気にしていたり、ヘアダメージを気にしていたり、お客様の多くがヘアに関するお悩みをお持ちです。

実際に、私の所属する美容室Anphiでお客様1万人にアンケートを行ったところ、全体の7割以上の方がヘアに関するお悩みをお持ちで、さらに全体の3割の方が2つ以上の複数のお悩みを持っていることが分かりました。

髪の状態で気になっているところやお悩みは、ほぼ皆さまにあるという考えの元、お客様のお悩みを聴き、共感し、提案や、ヘアケアのアドバイスをしてあげると良いでしょう。

家での普段のヘアケア・セット方法を聴く

「希望のヘアスタイルを聴く」の過程でもお話ししましたが、カウンセリング時に普段家でどんなヘアケアをしているのか、セットに時間をかけられるのかを聴くことをおすすめします。普段ワックスやコテを使用してセットをしない人に、セットができないと完成しない髪型を提案したら、お客様は翌朝鏡の前でがっかりするでしょう。がっかりされたら、再来店はまず望めませんよね。

例えば、30代の女性はまだお子さんが幼くて家事・育児に追われていて、風呂上りのドライヤーすらまともにできないなんて方も少なくありません。そんな方に、コテを使用したヘアスタイル提案は間違ってもしてはいけません。なので、「朝セットにどのくらい時間をかけますか?」「スタイリング剤などは使用しますか?」というように普段のヘアケア・セット方法はしっかりと確認しましょう。

不躾にならないように、「今日の仕上がりはもちろんですが、明日以降もお客様に素敵な髪形を楽しんでいただきたいと思っています。家で再現することが大切だと思っていますので、普段のヘアケアやセット方法を教えていただきたいのですが」などと前置きを入れてもいいでしょう。

そうすると「私のことをしっかり考えてくれているのね!」と好感度が上がるはずです。

そんな風に聴かれたら嫌な顔をするお客様はいないでしょうね。

ヘアカタログやSNSなどの写真を使ってイメージを絞っていく

希望のヘアスタイルを聴き、今の髪の状態で気になっているところ、家での普段のヘアケア・セット方法を聴いたら、それに基づいたヘアスタイルの写真をヘアカタログやSNSから探し出して提案しましょう。

要望はしっかりと聴いても、全てを実行する必要はない

お客様の要望を全て叶えようとすると、髪質的に仕上がりが変になってしまったり、実現が困難な場合があります。叶えられる要望とそうでない要望をしっかりと見極めて、プロとしての提案をすることが必要となってきます。

複数案提案してお客様の反応を見ながら、最終的なイメージを絞っていきます。

スタイル写真の実現が難しい場合は、気に入っているポイントを聴いて実現可能なヘアスタイルの代案を提案する

お客様が持参されたスタイル写真も同様です。お客様の髪質的に実現が難しかったり、撮影用につくりこまれたヘアスタイルだから、毎朝のセットが必須になったりと、やはりその通りは難しいという場合が多いのが実情でしょう。

その場合、私は直接的に「これはちょっとお客様だと難しいですね」とは言わずに、そのスタイルのどこを気に入っているのかを聴き出します。フォルムなのか、前髪なのか、色なのか、”可愛らしい”雰囲気なのか?

そして、その気に入っているポイントを押さえてた上で、かつこれまで伺った内容を踏まえて、実際に可能なヘアスタイルの代案を3つほど写真を見せて提案します。

「お客様の場合、〇〇な髪質で、セットにあまり時間をかけられないのでしたら、こういった髪型も良いと思うのですが、いかがですか?」という具合ですね。

理由を説明しながら複数提案すれば、お客様はほとんどの場合「あ、確かにこれも良いですね。」という反応をして下さいますよ。

なるほど。写真を否定するのではなく、褒めて、聴いて、代案を提案するわけですね!

美容室に来店するお客様の約6割は、美容師からの積極的な提案を待っている

当社のお客様アンケート結果によると、10,675人の内6,123人のお客様が「自分に似合うヘアスタイル(カラー)を提案してほしい」を選択していて、美容室にいらっしゃる約6割の方が美容師からの積極的な提案を望んでいることが分かりました。また、これは特に30~60代の女性に顕著で、7割近い方が希望されていました。

ただ言われた通りにやるよりも、プロとしての提案をすることでお客様満足度は高まり、指名に繋がり易くなるということですね。

鏡を使ったスタイルの共有と提案

お客様から色々と聴き出したら、鏡を使いながらまずは現状の確認を行います。ここでお客様の髪に触りましょう。

ご新規のお客様は、あなたに髪に触れられるのは初めてで緊張しているでしょうから、ここで緊張をやわらげるためにも、プロから見たお客様の良い点をたくさん伝えてあげましょう

「まとまりやすい髪質ですよ」「頭の形がいいので、ショートが似合いますよ」など、気付く限りの良いところをほめます。

実際に髪を触って、お客様には鏡を見ながら確認してもらう

続いていよいよ、今日のスタイルを確認します。これまでで聴いた内容で、ヘアスタイルの概要は固まっているでしょうから、鏡で見せながら、お客様の髪を実際に触って「長さはこれくらいですね」と確認します。サイドやバックも合わせ鏡できちんと見せて確認すると、後で「こんなはずではなかった!」を防げます。

仕上がりイメージはこの時に頭の中に完成させておく

この確認作業は美容師側が仕上がりのイメージを固める為にも役立ちます。「考えながら切ろう」と、仕上がりがイメージできないまま施術に入ってしまうと、大抵失敗します。必ずしっかりとイメージを固めてから施術に入りましょう。

確かに私も若い頃、これをやって失敗しました…。

予約時より価格が上がる場合は必ず確認を

ヘアスタイルの確認時には、当然メニュー内容が固まるはずです。その時、お客様の予約時の価格よりも、値段が上がる場合は、必ず確認するようにしましょう。

美容師さんによっては、価格がいくら上がるか言わずに施術をはじめ、お客様はお会計時にちゃんとした価格を知るということがあります。これだと信用を失い、カウンセリングや技術がよくてもリピートしてくれる可能性はかなり下がってしまいますので、絶対にやらないようにして下さいね。

新規のお客様には、大幅に価格を上げるメニュー提案はしない

そもそもご新規のお客様に、予約時の内容より価格が大幅に上がるような提案はしない方が無難です。そうすると「ここは高いメニューを勧めてくる美容室。」と思われて敬遠されてしまうでしょう。そういうメニュー提案はリピーターになって、信頼を勝ち取ってからの方がおすすめです。

お客様の髪の状態によってはより良いトリートメニューを勧めたくなる場合もありますが、私の場合は初回で無理に値上げを提案しません。

「今日はこちらのトリートメントで予約いただいてますが、カラー持ちを良くしたいなら次回はあちらのトリートメントをすると良いかもしれませんね。手触りもツルツルになってとってもおすすめですよ。」などと、次回へ期待を持たせるような提案をしています。

カットの途中でお客様にヘアを触って確認してもらう

ほとんどのお客様が施術中に髪に触ってはいけないと感じているのか、髪を触ろうとはしません。さらに初対面の美容師さんだと、「切りすぎなのでは?」や「明るすぎない?」などと不安に思っても口には出せないものです。だからこそ、大抵クレームは、終わった後、帰った後に言われますよね。

それを防ぐ為におすすめなのが、施術の途中でお客様にヘアを触って確認してもらう、ミドルカウンセリングです。カットの途中で「触ってみて、どこか気になるところはありませんか?長さはいかがですか?」と聴いてみましょう。

カットが終わった後に「切りすぎ!」と言われるよりも、カットの途中で「もう少し切って下さい。」と言われる方が、はるかに効率的ですよね?

施術後はお手入れ方法をアドバイス

最後に、ご自宅でのお手入れ方法をアドバイスします。お客様が美容室にやってくるのは、早い人で2週間に一度、ロングヘアの女性なら数カ月に一度程度でしょう。

その間、毎日ヘアに触れ、セットするのはお客様ご自身です。たとえ美容室で綺麗になっても、それが毎日の生活で再現されなければ、お客様は満足してくれません。

だからこそ、家でのスタイリングが上手くいくようにきっちりとアドバイスすることは、美容室を出てから数カ月間、満足できるかできないかの大切な分かれ目なのです。

すでに、お客様のスタイリングの仕方はカウンセリングで聴いているので、それに合わせてアドバイスすれば良いですね。

無料のアドバイスは信頼を得やすい

セットの仕方も大切ですが、ワックスなどの商品を買わなくてもできるドライヤーの掛け方をしっかりアドバイスするとお客様は喜ばれます。

初めてのお客様に、有料メニューや商品の提案をしすぎると敬遠されてしまいがちです。追加料金が必要ない無料のアドバイスをしっかりとすると、お客様はこちらの話しに耳を傾けるようになってくれます。

ドライヤーの時に無料のアドバイスを十分に行った上で、セットの時も「クリームタイプのワックスで、後頭部から~」のように、商品名ではなく、セット剤の特徴とセット方法をしっかりとレクチャーして下さい。そうすると意外とお客様から「そのワックスはこちらで買えますか?」と聞いてくれるものです。

好印象になるための接客のコツ

接客でお客様に好印象だと感じてもらうための3つのコツをお話しします。

第一印象で決まる!入客前に気持ち・表情をしっかり整えて

私は新規のお客様が好印象を抱いてくれるかどうかは、第一印象つまりプレカウンセリングで決まると思っています。ここで「感じ悪いな。」と思われたら、その後いくら挽回しようと努めても報われません。

 

そのため、私はどんなに忙しくても入客前にしっかり気持ちや表情を整えてお迎えするようにしています。「はじめまして担当します〇〇です。よろしくお願いします!」と、マックの店員さんをイメージして笑顔で挨拶

構えすぎても上手くいきませんから、どんなお客様でもフラットな気持ちで対応するように心がけています。

椅子の斜め後ろに座り、鏡の中のお客様の顔を見ながら相槌をうつ

カウンセリング時は施術用の椅子にお客様にかけてもらい、自分はその半歩斜め後ろの辺りに座って、鏡の中のお客様の顔を見ながらお話を聴きます。ここでのポイントは、お客様と目線の位置が鏡越しに合う様にすることです。

話を聴くときは鏡越しでもお客様の方を見ながら相槌を打って、しっかり聴いていることが伝わるようにしましょう。

ここで無反応だったりすると「この人私の話をちゃんと聞いているのかしら?」と思われてしまったり、「う~ん…」と悩む動作ばかり繰り返してしまうと否定されていると感じられてしまいますので、気を付けて下さいね。

お客様が話して下さっているときは途中で遮らない

相槌はうっても、お客様の話しを決して途中で遮らないようにしましょう。お客様の話にかぶせて話し出したりすると、マイナスイメージになってしまいます。

普段の同僚や友人との会話で、話をかぶせがちかどうかチェックしてみると良いかもしれませんね。

カウンセリングが上手くいけば、美容師業はもっと楽しくなる

おすすめのカウンセリング方法や接客のコツについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?

カウンセリングでお客様のことをよく聴き出し、本当に望むヘアスタイルをつくることができれば、お客様は喜び、あなたには指名が増えるでしょう。

指名が増えると、美容師の仕事はどんどんやりがいを感じ、毎日が楽しくなりますよ!「まだまだ指名が伸びないな…。」と感じているなら、ぜひ今日からご自身のカウンセリング方法を見直してみて下さい。この記事を少しでも役立てていただければ幸いです。

みなさんもぜひ楽しい美容師ライフを送ってくださいね!

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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