シリコンは毛穴に詰まって肌荒れ・薄毛の原因になる?
シャンプー、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤など、様々なヘアケア製品に配合されるシリコン。正式名称はシリコーンと言います。
このシリコーン、一時「毛穴に詰まって身体に悪影響」や「抜け毛・薄毛の原因になる」という噂が流れ、それから「ノンシリコン」を謳う商品が多く発売されるようになりました。
美容師さんの中にも、「シリコンは良くない」と思っている方、いらっしゃいませんか?
実際、シリコーンは体に悪影響を及ぼすものなのか?このページで詳しく解説します。
この記事を書いた専門家
公益社団法人日本毛髪科学協会の毛髪診断士®講師、日本コスメティック協会のスキンケアマイスター兼、日本化粧品検定特級コスメコンシェルジュを有する美髪・美肌研究家。日々、頭皮や毛髪、お肌について研究し、正しい情報を広める活動を行っている。
シリコーンは毛穴に詰まって抜け毛・薄毛の原因になる?
シリコーンは優秀なコーティング剤です。ヘアケア製品に配合されることで、髪の毛の指通りがなめらかになったり、髪にツヤを与えてくれたりします。
その優秀さゆえに、「シリコーンが髪や肌の毛穴までパックのように強力におおいつくしてしまう。」や「毛穴詰まりの原因になり、頭髪の成長を妨げる」というイメージを持たれている方がいらっしゃいます。
結論から申しますと、シャンプーやトリートメント等に配合されているシリコーンが、頭皮の毛穴に詰まることはまずあり得ません。
毛穴の詰まりを起こさないことが研究で明らかに
シリコーンは、『毛髪や頭皮に薄い皮膜を形成するものの、酸素や水蒸気などの透過性に優れ、特定の箇所に留まりにくく、頭皮の皮脂とはなじまない』という性質から、毛穴の詰まりを起こさないことが、大手化粧品会社花王さんなど、複数の研究で明らかになっています。
※参考:「改訂新版:ヘアケアってなに?」繊維応用技術研究会編|花王株式会社ヘアケア研究所著(2014) ※参考:「シリコーンヘアコンディショニング剤」化粧品の安全・安心の科学 -パラベン・シリコーン・新原料|堀江 豊(2014)よって、シリコーンが毛穴を詰まらせて、抜け毛や薄毛の原因になるということはあり得ません。
洗髪時に毛髪に残っても、次のシャンプーで洗い流される
大手化粧品会社資生堂の研究では、コンディショナーの成分として毛髪に残ったシリコーンは、シャンプーによって綺麗に洗い流されることが確認されています。
つまり、トリートメントやコンディショナーで髪にシリコーンが少し残ったとしても、次回のシャンプーの時には洗い流されています。
シャンプートリートメントの過程で、肌にシリコーンが付着したとしても、その後に身体を洗えば落ちるということ。
もっと極端な噂だと「毛穴から身体にとりこまれて蓄積する。」という話もあります。
シリコーンの粒子は確かに細かいですが、毛穴から身体にとりこまれるような細かさではありませんし、毛穴から身体にとりこまれることを証明する研究データも存在しません。
シリコーンのせいで、パーマやカラーの効き目が悪くなる?
美容師さんの中には、「シリコーンのせいで、パーマやカラーの効き目が悪くなる」と先輩から聞て、パーマ・カラー前後1週間シリコーン配合製品を控えるようにお客様にアドバイスする方がいらっしゃると思います。
これ、実は一部は正解、一部は不正解です。
シャンプートリートメントに配合されているシリコーンがパーマ施術の邪魔をする可能性はほぼない
普通に販売されているシャンプートリートメントに配合されているシリコーン程度では、美容室でのパーアやカラーへの影響を心配する必要はありません。
そもそも毛髪が濡れた状態では、シリコーンが毛髪表面を隙間なくおおうことはありません。
ワックス・ムースなどのスタイリング剤によっては邪魔するケースも
一部のコーティング力の非常に強力なワックスやムースなどのスタイリング剤のなかには、一度洗ったくらいでは全て落とせない多種多量のシリコーンを含むものがあります。
そういう、コーティング力の非常に強いスタイリング剤を普段使っているお客様には、確かにパーマやカラー施術前の一週間は、使用を控えてもらう方が賢明でしょう。
シリコーンは、化学合成品だから人体に対して有害?
ここまで、シリコーンは毛穴には詰まらないこと、シャンプーやトリートメントに配合されているシリコーンが髪や身体に付着しても洗えば落ちること、ワックスなどの種類によってはパーマ施術等の邪魔になる可能性があることなどをお話ししてきましたが、そもそもシリコーンは、残るとよくない有害な物質なのでしょうか?
シリコーンは化学物質です。それゆえに、自然派化粧品をお好きな方々から「シリコーンは身体によくない」というイメージを持たれることがあります。
ですが、そもそもどんなに「自然派」と謡っていても化粧品は全て化学物質であることを忘れてはいけません。
シリコーンの安全性は世界で認められている
シリコーンの安全性に関しては、欧州委員会の消費者安全科学委員会(SCCS)が2010年に、化粧品として使用しても人体には安全であると報告しています。
※参考:European Commission Scientific Committee on Consumer Safty Option on Cyclomethicone Octamethylcyclotetrassoxane and Decamethylclopentasiloxane,SCCS 7th plenary meetisng,22 June 2010シリコーンは具体的にどういう化学物質なのかというと、酸素とケイ素と有機基からなる有機ケイ素化合物のこと。半導体などに使われる金属ケイ素の「シリコン」とは別物です。
シリコーンは熱や光に強く、柔軟性があり、酸素透過性が高いなどの特徴があり、ヘアケア用品だけでなく、肌に直接塗るクリームなどのスキンケア化粧品や、メイクアップ化粧品、日用品・調理器具、医療用にも多く活用されています。
医療の現場でも直接肌に付けるシリコーンテープが使われている
最近、医療用の肌テープとして使われているのがシリコーンテープ。術後などの傷を覆うガーゼをとめるために使うもので、粘着面にシリコーンが使われています。
はがす時に痛くなく、角質も傷つけないので、肌にやさしいすぐれものとして、医療の現場で重宝されているそうです。
※参考:「美容常識の9割はウソ」|落合博子著(2019)これらのエビデンスからも、シリコーンは油性成分ですので落とす必要はありますが、肌につくこと自体に問題はないと私は考えます。
化粧品の「〇〇フリー」は、多くの場合、PR戦略の一環です。見た目やコピーに騙されず、化学的な根拠にもとづいて、選べるようになりたいですね。
代表的なシリコーンの例
ところで、「シリコーン」というのは、成分の固有名称ではありません。シリコーンの中には様々な種類があり、シャンプーやトリートメントなどでよくみかける成分名としては「ジメチコン」や「アモジメチコン」があげられます。
シリコーンの中でも、物によって特徴が異なりますので、代表的なものをいくつかピックアップしてご紹介しましょう。
ジメチコン
代表的な鎖状シリコーンオイル。低粘度タイプから高粘度タイプまであります。
低分子のジメチコンは粘度が低くサラっとしたテクスチャー。揮発性があるため、洗い流さないヘアトリートメントによく配合されいます。
一方、高分子のジメチコンは水あめのように高粘度で、コーティング力・撥水力(表面で水をはじくこと)に優れた皮膜形成成分。お風呂場で使う洗い流すトリートメントにもっともよく配合されているシリコーンです。
ヘアケア製品に使用すると髪表面を皮膜してツヤ・光沢を演出し、指通りのよさ、なめらかさを付与します。
さらには熱にも強いので、ヘアトリートメントやスタイリング剤に使用するとドライヤーの熱から髪を保護してくれます。とっても便利な成分ですよね?
アモジメチコン
アモジメチコンは、ジメチコンのメチル基(-CH3)の一部をアミノ官能基に置き換えたアミノ変性シリコーンの一種。「+」の電子を持つのでジメチコンよりもダメージ毛によく吸着して、ツヤ・光沢、柔らかさ・なめらかさ・しっとり感を与えます。
広がりを抑えたり、まとまりをよくしてくれますから、しっとりタイプのトリートメントによく使われており、もちがよいため集中パックにも使われます。
また薄い皮膜を作り水分を逃がさないため、基礎化粧品や日焼け止めに配合されます。さらに皮膜によって化粧崩れが抑えられるため、メイクアップ化粧品に使われることも。
ジメチコノ―ル
ガム状の変性シリコーンで、滑らかな感触のコンディショニング効果に優れた皮膜を形成します。
基本的な感触や滑りはジメチコンに近いものの、分子両末端にヒドロキシ基(-OH)をもつことでジメチコンと比較して、肌や髪になじみやすく、よりなめらかな感触を有しています。
特にヘアコンディショニング目的で使用されることが多く、ダメージヘアの傷んで親水性になった箇所にも吸着する性質があり、枝毛や切れ毛のある髪のくし通り性をよくしてくれます。
コンセプトや多様なダメージレベルに合わせて、他のシリコーンと組み合わせて配合されていることが多いです。
シクロペンタシロキサン
代表的な環状シリコーン。肌に塗布した後は徐々に揮発することから、揮発性シリコーンとも呼ばれます。ベタつかず、サラっとした使用感が特徴。
ベタつきを残したくないリキッドファンデーションや、日焼け止め、メイクアップ製品によく使われます。
一方でシクロペンタシロキサンは、使用後に洗い流されたシクロペンタシロキサンが水中に蓄積するリスクがあるとして、ヨーロッパでは2020年1月以降、シャンプーなどの洗い流す化粧品で0.1%以上配合できなくなっています。
日本の大手化粧品会社の資生堂も、環境への配慮から、シクロペンタシロキサンを含む「環状シリコーン」を、シャンプーやコンディショナーなどの洗い流すタイプの製品には配合しなくなったそう。
このように、一概に「シリコーン」といっても様々な種類があるのです。
シャンプー&トリートメントはノンシリコーン?シリコーン入り?どっちにすべき?
続いて、シャンプーやトリートメントにシリコーンは入ってるべきか、という問いに対して私の見解を解説します。
トリートメントは、シリコーン入りが無難
基本的にトリートメントは、シリコーンが入っているものを使うのが無難でしょう。なぜなら、シリコーンは優秀な皮膜形成剤で、髪に艶を与えたり、指通りをよくしてくれたり、シャンプーのキシミを緩和してくれるから。
大人で、カラーやパーマ、縮毛矯正などをしている人は、シリコーン入りじゃないと、たいていパサついたり、指通りが悪くなってしまいます。
トリートメントにシリコーンが入っていなくて良いのは、高校生以下で、ケミカルダメージのない人。大人では、短髪の新生毛の人など、髪の毛にパサつく、うねる、広がるなどの悩みが全くない人です。
シャンプーはシリコーン入りじゃなくてOK
よほどのハイダメージ毛ではない限りは、シャンプーは基本的にシリコーンを配合する必要はないでしょう。なぜなら、シャンプーは汚れを落とすものだと私は考えているから。
確かにシリコーン入りだと、しっとりする感じがして良いという方もいると思いますが、泡立ちやさっぱり感を優先したいならノンシリコーンがおすすめ。
シリコーンが入ってないシャンプーだと、パサつく気がするという方は、シリコーンよりも水の次に多く配合されている洗浄成分(アニオン界面活性剤)を確認してみてください。
洗浄力が強すぎる成分が入っていると、ハイダメージ毛の人はシャンプーでパサついたり、ダメージが悪化する可能性があります。
洗浄力が適度な洗浄成分のシャンプーなら、ブリーチ毛の方でも、シリコーン入りじゃないもので大丈夫。髪へ艶を与えたり、しっとり感をプラスする役割はトリートメントに任せましょう。
意外かもしれませんが、シリコーン入りのシャンプーこそ、メインの洗浄成分が洗浄力の強すぎるものであるケースがあります。
洗浄力が強い=刺激も強いということ。シリコーンを気にするなら、洗浄成分も見分けられるようになりましょう!
まとめ
最後に、このページの内容をまとめておきます。明日からのサロンワークに活かしていただけたらとても嬉しいです!
- シリコーンは、毛穴に詰まって薄毛の原因になることはない
- 洗い流す製品に入っているシリコーンがパーマなどの施術を邪魔する可能性は少ない
- 強力なワックス等に入っているシリコーンはパーマなどの施術を邪魔する可能性はある
- シリコーンの安全性は世界的に認められている
- シリコーンは、ジメチコン、アモジメチコン等たくさんの種類がある
- トリートメントはシリコーン入りが無難
- 高校生以下でヘアダメージのない人や、大人でも短髪の新生毛ならノンシリコーントリートメントでもOK
- シャンプーは汚れを落とすのが目的なので、よほどのハイダメージ毛でなければノンシリコーンがおすすめ
- ノンシリコーンシャンプーでも、洗浄力が強すぎない洗浄成分のシャンプーなら、パサつかない
【参考文献】 ※「美容皮膚科医が教える 大人のヘアケア再入門」吉木伸子著(2021)※シリコーン油(シリコーンオイル)の解説と化粧品に使用されるシリコーン油一覧 | 化粧品成分オンライン ※「シリコーンヘアコンディショニング剤」化粧品の安全・安心の科学 -パラベン・シリコーン・新原料|堀江 豊(2014) ※「改訂新版:ヘアケアってなに?」繊維応用技術研究会編|花王株式会社ヘアケア研究所著(2014) ※「美容常識の9割はウソ」|落合博子著(2019)※化粧品成分検定公式テキスト【改訂新版】|化粧品成分検定協会(2019)※European Commission Scientific Committee on Consumer Safty Option on Cyclomethicone Octamethylcyclotetrassoxane and Decamethylclopentasiloxane,SCCS 7th plenary meetisng,22 June 2010