髪ダメージの原因は洗い方!?美容師さんにこそ知ってほしい正しい洗髪方法
髪のダメージに悩むお客様は年代を問わずいらっしゃいますよね。美容室でトリートメントをしても、2~3カ月も経つとまたダメージが気になり、再度美容室でトリートメントをする方が多いのではないでしょうか?
実はそれ、お客様の毎日の洗髪習慣が原因の可能性が高いです。使用しているシャンプーの成分が洗浄力や脱脂力が強すぎるものだったり、洗い方が不適切だと、毎日お客様ご自身で自分の髪を傷めていることになります。
このページでは、合わないシャンプーで間違った洗い方を続けるとどうなるのか、正しい洗い方はどんな方法なのかを、毛髪診断士認定講師が実証実験の結果を基に詳しく解説します。
この記事を書いた専門家
公益社団法人日本毛髪科学協会の毛髪診断士®講師、日本コスメティック協会のスキンケアマイスター兼、日本化粧品検定特級コスメコンシェルジュを有する美髪・美肌研究家。日々、頭皮や毛髪、お肌について研究し、正しい情報を広める活動を行っている。
こすり洗いは絶対ダメ!洗い方で髪ダメージはこんなに違う!
まず初めに、同じシャンプーで洗って乾かしてを5回繰り返した、人毛の毛束をご覧ください。
見た目でも、ダメージ具合の違いが分かりますよね?左のAの毛束はパサついて広がっているのに対し、Bの毛束はまとまりがあります。
触ってみるとその違いはより顕著で、左のAの毛束はパサついてザラザラした手触りですが、右のBは手触りが滑らかです。
上から光を当てて、マイクロスコープで拡大して見るとこのように、Bの毛束はまっすぐまとまっていて綺麗に見えますが、Aの毛束はまとまりがなく、うねりがあるのが観察できます。
この2つの人毛の違いはただ一つ、洗い方です。
右のBの人毛はシャンプーを手に取り、泡をしっかり立ててから、泡で人毛を包み込むように洗ったのに対し、左のAの人毛はいわゆる「こすり洗い」をしました。洗っている様子を動画でご覧ください。
髪は濡れた状態だと、乾いている時よりも柔らかく、より小さな力でキューティクルがはがれたり、髪が伸びたりと、ダメージを受けて傷みやすいことが分かっています。そのため、髪をこすり洗いすると、髪どうしが摩擦によってダメージを受けてしまい、先ほどのような傷んだ状態になってしまうのです。
一方、泡で髪を洗うと泡がクッションの役割を果たし、髪どうしの摩擦を防ぎ、最小限のダメージで洗うことができます。
頭皮は指の平で揉んでマッサージしながら洗うのが◎
頭皮も髪同様、ゴシゴシ強い力で洗ったり、爪を立てて洗うのは、頭皮を傷つけてしまうためNGです。そのような洗い方をしていると、頭皮に赤みが出てきたり、痒みを感じるようになってしまいます。
頭皮も予洗いをしっかりした後、泡をたっぷりなじませ、マッサージするつもりで指の腹で頭皮を揉みながら洗いましょう。
泡で汚れはしっかり落ちる!大事なのは泡立てること
泡で髪を優しく包みこむような洗い方では汚れが落ちないのではないか?と心配される方も多いでしょう。ここで、泡洗いでの洗浄実験をお見せします。
泡での人毛洗浄力テスト
【実験方法】
毛束計量→ワックス塗布→1分放置→毛束計量→与洗い20秒→しっかり泡立て→シャンプー20秒→流し20秒→ドライ→毛束計量
茶髪の人毛を使用し、ワックスタイプのスタイリング剤をしっかりつけた後に、先程の泡で包み込む洗い方でシャンプーをしたら汚れ落ちはどうなるのか実験します。
なるべく正確な実験結果を得られるように、0.001gまで測れてかつ風除け付きの精密はかりを使用しました。
結果はご覧の通り!洗浄前と洗浄後で差はたったの+0.001gと、ワックスがしっかり落ちて元の毛束の重さに戻っています。
こすり洗いをしなくても、汚れはしっかり落ちることが分かりますね!
決め手は気相率84%以上!
大手メーカーの花王さんが公開している泡実験で、しっかり泡立てると泡が汚れを吸着してくれることが分かっています。
画面右の大きな泡は、油を包み込まずはじいているのに対し、画面左のきめ細い小さな泡は、油をぐんぐん泡の中に包み込んでいるのが分かります。どちらも同じ洗浄剤なのに、泡立て方でこれほどの違いが生まれるなんて驚きですよね。
花王さんは、この小さな泡の状態にするには気相率84%以上にする必要があると述べています。
気相率と言われるとなんだか難しく感じますが、ようはしっかり泡立てて、泡に空気を含ませれば良いということ。それを手軽に叶えるのが、100円ショップでも売っている泡立てネットです。
泡立てネットなら、少量のシャンプーで質の良い泡が簡単に!
シャンプー1mlを手に取って泡立てた時と、泡立てネットで泡立てた時の泡立ちを比べてみましょう。
手で泡立てると、1mlのシャンプーでは泡はほんの少しの量しか作れません。一方で、泡立てネットを使うと、泡がどんどん作れ、20秒間の泡立てで1mlのシャンプーで400mlのカップに山盛りになるほど作ることができました。
手で泡立てた時より細かい泡が簡単に作ることができますし、コスパもとても良いですよね。なお今回使用したのは、100円ショップで購入した洗顔用の泡立てネットです。特別なものでなくてもこれだけの泡を作れるというわけです。
実際にシャンプーで使うなら、縦横がそれぞれ20㎝くらいある大き目の泡立てネットの方が一度でよりたくさんの泡ができるのでおすすめ。
ここまでで、洗い方で髪の毛へのダメージが随分と変わることがお分かりいただけたかと思います。
続いて、洗い方同様に頭皮の状態を大きく左右するシャンプー中の成分についてお話をしましょう。
髪や頭皮を傷めるシャンプーとは?
毎日使うシャンプーの内容成分によっても、髪や頭皮へのダメージが大きく変わってきます。ここでまた一つ実験結果をご覧ください。
シャンプー剤によるヘアダメージの比較実験
2種類の美容室専売シャンプーを使い、与洗い20秒→泡での包み込み洗い20秒→流し20秒→ドライ1分を50回ずつ行いました。その結果がこちら。
左の毛束に比べて右の毛束は全体的にパサついて広がっているのがお分かりいただけると思います。
マイクロスコープで拡大した部分を見ると、右の毛束には枝毛になってしまっている部分がありますし、白くていかにも傷んでいる毛も見受けられます。この白い箇所はキューティクルがはがれ髪の内部のタンパク質が外に流れてダメージ毛になってしまった状態です。なぜこの様な違いが起こるのでしょうか?
片方のシャンプーに洗浄力や脱脂力がとても高く、刺激も強い洗浄成分が含まれているのが原因です。そして、これは定期的に切る髪よりも頭皮、つまり肌にも大きく影響を及ぼします。
「洗浄剤による洗いすぎ」で乾燥肌・敏感肌に
近年、日本人は乾燥肌や乾燥性脂性肌、乾燥性敏感肌で悩む人が増えていますが、その原因の一つが「洗浄剤による洗いすぎ」だと言われています。
実は日本は世界的にみてシャンプーする頻度が高い国。毎日シャンプーする人の割合も諸外国と比べ高いのです。
そして、シャンプーなどの洗浄剤には、毎日使用するには洗浄力や脱脂力が強すぎる洗浄成分が含まれていることが多々あります。そのようなシャンプーを毎日のように使っていると、先ほどの例のように髪はパサついてきます。
頭皮においても同様で、肌が正常に機能するのに必要な水分や油分をとりすぎてしまうことによって、肌のターンオーバーが乱れ、肌のバリア機能が正常に働かなくなり、乾燥肌や乾燥性脂性肌、乾燥性敏感肌などの肌トラブルを引き起こしてしまうのです。さらにダメージ毛の場合には、シャンプーによってタンパク質変性が起こる可能性もあります。
せっかく毎日髪を綺麗にしようと洗髪しているのに、実はそれによって髪や頭皮を傷めてしまっているのです。
頭髪にダメージがある人が避けた方が良い成分
洗髪方法に気をつけても、シャンプーのせいで髪や頭皮にトラブルが起こっていたら悲しいですよね?そこで、続いて髪のダメージや、頭皮にかゆみやふけなどのトラブルがある人が避けた方が良いシャンプーについてお話しします。
実際に使ってみないと本当に自分に合うのか分からないとはいえ、合わなそうなものを避けて、なるべく良いものを選ぶことは可能です。
シャンプーの表示成分をチェックし、科学的に判断を
頭髪にトラブルがある方がシャンプー選びで気を付けるべきは、肌や髪に優しい成分で構成されているかどうか。
幸い化粧品に分類されるシャンプーなら、全成分表示が義務づけられていますので、誰でも購入前に確認することができます。大抵の場合シャンプーの裏面に記載されています。
パッケージがナチュラルテイストだからと言ってお肌に優しいとは限りません。また、残念ながら「お肌に優しい」と書いてあるからと言って、本当にそうとは限りません。大事なのは、成分を見て、ご自身で科学的に判断できるようになることです。
「こんなにたくさん書いてあったら何が何だか分からないよ…。」という方もご安心ください。
化粧品は配合量順に記載する必要があり(1%以下は順不同)、シャンプーを判断する上で特に重要なのは初めから5番目くらいまでです。そこにシャンプーの構成の約6~7割をしめる水やBGなどの溶剤、その後に約2~3割ほどを占める洗浄成分すなわち界面活性剤が記載されています。
界面活性剤の種類は膨大で、さまざまな目的でさまざまな化粧品に配合されますが、シャンプーにおいては主に洗浄、起泡、泡安定、増粘などの目的で配合されています。この界面活性剤こそがシャンプーの質を大きく左右する、着目すべき成分なのです。
洗浄力や脱脂力が強く、刺激も強い界面活性剤は避けて
まず頭髪にダメージがある人が避けたいのは、洗浄力や脱脂力が強すぎる洗浄成分です。市販のシャンプーによく配合されていて、洗浄力や脱脂力が強い成分の例を挙げておきましょう。
- ラウリル硫酸Na
- ラウレス硫酸Na
- オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
上記の界面活性剤の共通点は、洗浄力が脱脂力が高く、かつ泡立ちが良い点。そして何よりコストが安く、大量生産し易いという共通点があり、多くの洗浄剤に配合されています。
ラウリル硫酸Na
「ラウリル硫酸Na」は洗浄力、脱脂力、起泡力がとても高く、食器用洗剤や歯磨き粉によく配合されている硫酸系の陰イオン界面活性剤です。分子が小さく残留性が高く肌への刺激性も高いということが一般に認知されるようになり、現在日本ではシャンプーには以前よりも配合されなくなりました。
ラウレス硫酸Na
「ラウリル硫酸Na」に代わって頻繁にシャンプーに配合されるようになったのが「ラウレス硫酸Na」。これは「ラウリル硫酸Na」を改良したもので、「ラウリル硫酸Na」に比べて肌への残留性が軽減されていますが、とはいえ洗浄力や脱脂力はかなり高く、肌への刺激もあります。
なお先ほどの、50回シャンプー実験で傷んでしまった人毛を洗ったシャンプーには、水の次に多くこの「ラウレス硫酸Na」が配合されていました。
オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」も洗浄力が強く、とても泡立ちが良い成分で、ワックスや皮脂などの汚れをしっかり落とす作用があり、肌や髪の表面を一掃するような洗浄成分です。
毎日シャンプーをする人が、上記のような洗浄力や脱脂力が強い成分が配合されたシャンプーを使用してしまうと、本来必要な水分や油分(皮脂)を取りすぎてしまい、頭髪に悪影響を与えることになります。
頭皮のかゆみやふけ、髪のダメージが気になる方はまず、今ご自身の使用しているシャンプーに上記の成分が入っていないか確かめてみて下さいね。
お湯洗いだけで皮脂汚れの7割は落ちる
実は、基本的にぬるま湯でしっかり洗えば7割の皮脂汚れは落ちます。
また先の実験結果のとおり、オイルやワックスなどのスタイリング剤も、シャンプーをしっかり泡立てれば、泡がスタイリング剤を吸着してくれますので、そこまで洗浄力や脱脂力が強い必要はないのです。(ハードスプレーはのぞく)
皮膜形成成分入りのシャンプーは強すぎる洗浄成分を隠している可能性有り⁉︎
シャンプーの中には、強力な皮膜形成成分が配合されているものがあります。皮膜形成成分とはつまり髪や肌をコーティングする成分のこと。
代表的なのはアモジメチコンやジメチコンなどのシリコーン類。これらはトリートメントや、クリームなどにも配合されるもので、成分自体は何ら問題ありません。
ただし、それらがシャンプーに配合されている場合は要注意。そもそもシャンプーは本来汚れを落とすためのものなのに、コーティングするのは矛盾していると思いませんか?洗浄成分が入っている限り、お肌に残ることはプラスにはなり得ません。コーティングはトリートメントでするべきです。
ならなぜ配合しているシャンプーがあるのでしょうか?強力な皮膜形成成分が配合されているシャンプーの成分表示を見ているとある共通点が見えてきました。多くの場合、先にお話しした洗浄力&脱脂力が強い界面活性剤が配合されていたのです。
洗浄力&脱脂力が強い界面活性剤がたくさん配合されていたら本来数回使えば髪がパサつくはずですが、そんなシャンプーは日本では売れませんよね?そんなことにならないように、皮膜形成成分で髪をコーティングすることで、シャンプー後に軋まないようになっているのです。
そのため、洗浄力&脱脂力が強い界面活性剤が配合されているシャンプーの中には、シャンプー直後手触りがとても滑らかになるものがあります。これは皮膜形成成分が配合されているから。
ですが、実際には強すぎる洗浄力や脱脂力が髪の負担となってダメージが蓄積されているので、長期利用していると結局コーティングでは隠しきれなくなり、パサつきやダメージが顕在化してしまいます。
先の50回実験で傷んだ人毛に使ったシャンプーも、もれなく強力な皮膜形成成分が配合されていました。そのため、はじめ10回くらいまでは手触りがトゥルンとしてとても良く感じられました。
しかし、50回を終える頃にはゴワつきやパサつきが出て、この写真のような損傷毛がある状態になってしまったのです。
このようにシャンプーには使用してはじめのうちはとても良く感じるけれど、長期利用するとダメージ毛になってしまうものがしばしばあります。騙されないためには、やはり成分で判断することが重要なのです。
敏感肌の人は、精油入りや構成成分が複雑なシャンプーは避けて
「植物由来」と聞くと「お肌に優しい」「安心・安全」というイメージを連想される方が多いと思いますが、一概にそうとは言えません。特に敏感肌の方は「エッセンシャルオイル(精油)」入りは避けた方が無難です。理由をお話ししましょう。
そもそも、化学物質は精製された人工物のため作りがシンプルなのに比べて、自然のものは成分がとても複雑。まだ解析しきれていない成分が混入している可能性もありますし、自然界のものは天候や産地によって左右されるので、品質にどうしてもバラつきがあるでしょう。
そして、もともと植物には虫や外部の菌類から身を守るための「天然毒素」が含まれていたり、かぶれやアレルギーの原因となる成分があることも忘れてはいけません。
例えば、銀杏の皮の内側のヌルっとした部分の「ビロボール」でかぶれを起こす方がいるのはよく知られていますし、じゃがいもの芽の部分には「ソラニン」という毒素が含まれています。
また、森林浴で深いリラクゼーション効果をもたらす、樹木から発生する「フィトンチッド」という芳香成分は、実は強力な防虫・防腐効果を持っています。つまり「植物由来だから万人にとって安心安全!」とは決して言えないのです。
そして、シャンプーなどに配合される「植物エキス」や「エッセンシャルオイル(精油)」などの植物由来成分は、植物に含まれる芳香成分や毒素、農薬も含めた物質を抽出したものです。
植物エキスはエタノールやBG(ブチレングリコール)などで限りなく薄められているのが一般的ですが、エッセンシャルオイル(精油)は抽出物をさらにギュギュっと「濃縮」しています。
もちろん、天然毒素は製品になる過程で出来る限り除去されています。そのため健康肌で、肌が本来持つバリア機能が正常に働いている人には何ら問題ありません。ローズ油やベルガモット果実油、ティーツリー油などの精油は、アロマテラピーでも用いられている通り、適正量で用いられればさまざまなメリットがあります。
ですが、お肌のバリア機能が正常に働いていない方には刺激になってしまう可能性があります。 そのため、精油が香り付け程度に一種類だけ配合されたものならともかく、複数種類ブレンドされているシャンプーは、敏感肌やアレルギー体質の方にはおすすめできないというわけです。
敏感肌の人は成分構成がシンプルなシャンプーを
敏感肌の人は、できるだけ成分構成がシンプルなものを選ぶことをおすすめします。お肌に優しい界面活性剤が入っていていることはもちろん、アレルゲンになり易い精油が複数種類配合されているものは避け、構成成分が極力シンプルなものにしましょう。
構成成分の数が多いほど、いざ肌に合わなかった時に、どの成分が肌に合わないのか原因が分かりにくくなってしまいます。
一方、構成成分がシンプルなら、複雑なものに比べてアレルゲンに当たるリスクは低くなります。もし肌に合わなかった場合でも、原因物質を特定し易く、次はそれを避けることができるでしょう。配合されている成分がシンプルで種類も少ないものが、敏感肌用と言えるものです。
「避けた方が良いものは分かったけど、おすすめのシャンプーを教えて!」という方のために、美容室専売シャンプー全35種類の中からおすすめ15選を選び、ランキング形式で紹介しています。下記のページもぜひのぞいてみて下さいね。
明日お客様に伝えたい!正しい洗髪方法
それではいよいよ、ダメージレスな頭髪になるための正しい洗髪方法を詳しく解説していきます。
①ブラッシングで髪のもつれをとっておく
髪が長い方は、お風呂に入る前にブラシで髪のもつれをほどいておきましょう。なおブラッシングする際は“毛先からやさしく”が鉄則です。洗髪前のブラッシングは、髪についたほこりや汚れを浮かすのにも役立ちますよ。
②ぬるま湯で予洗い
38度くらいのぬるま湯で、髪と頭皮をしっかり濡らしておきましょう。髪の長さにもよりますが、1分半~2分はしっかりと予洗いすることをおすすめします。剛毛&多毛&ロングの方は2分半~3分を目安に。
予洗いをしっかりしておけば、この後のシャンプーの泡立ちもよくなり経済的です。40度を超える熱いお湯でシャンプーをすると頭皮や髪に負担となりますので避けて下さい。
乾燥肌・敏感肌の人は2~3日に1回は「湯シャン」を取り入れて
先ほども話しましたが、お湯だけでほこりはもちろん皮脂汚れの7割は落ちます。その為、乾燥肌や敏感肌の人は、毎日シャンプーをせず、2~3日に1回はお湯だけで洗う「湯シャン」にするのもおすすめです。
ただし、スタイリング剤を付けている人は別。種類にもよりますが、基本的にスタイリング剤はお湯だけでは落ちませんので、その場合は先に話したような、お肌や髪にやさしいシャンプーで洗って下さいね。
③シャンプーはしっかり泡立ててから頭皮、髪になじませる
シャンプーをしっかり泡立てようと、頭皮や髪でゴシゴシすると髪に摩擦が発生し傷んでしまいます。ダメージが気になる方は、シャンプーはしっか手のひらで泡立ててから、頭皮や髪を泡で包み込むようになじませましょう。その後、頭皮を指の腹でマッサージするように洗って下さい。洗う時間は2~3分でOK。それ以上洗いすぎると、乾燥してしまうので気を付けて。
手で泡立てるのが苦手な方は、泡立てネットや泡だて器を使ってください。先に紹介したとおり、こういった小道具を使えば少量のシャンプー剤で簡単にキメの細かい泡がたくさん作れますので、とても経済的です。
どうしても「先に泡立てるのは面倒だしやりにくい」という方は、シャンプーを耳の後ろ辺りで泡立てるようにしましょう。よく頭頂部にシャンプー剤をつけて泡立てる方がいらっしゃいますが、頭頂部は普段紫外線を浴びるなどダメージを受けやすい部位です。耳後ろ辺りなら、紫外線も受けずらく、摩擦も少ない部位ですので、ダメージを軽減できます。
シャンプーは頭皮を洗うもの
髪の毛にスタイリング剤を付けていない方は、髪全体に泡をなじませる必要はありません。頭皮に付けたシャンプーが洗い流される過程で髪にもつくのでそれで充分です。基本的にシャンプーは頭皮を洗うものだとお考え下さい。
④ぬるま湯でしっかりすすぐ
シャンプー剤が残るとフケや痒みなどの原因になります。すすぎ残しのないようにしっかりすすいで下さい。
⑤コンディショナーは頭皮を避け、髪の毛につける
コンディショナーやトリートメントは、なるべく頭皮に付かないように気を付けましょう。髪の毛だけにつけるイメージで。
⑥ぬるま湯でしっかりすすぐ
「洗いすぎるとコンディショナーやトリートメントの効果がない気がする」といって、すすぎをあまくする方がいらっしゃいますが、これはNGです。肌にも髪にも逆効果。38度のぬるま湯でしっかりすすいでください。
コンディショナーやトリートメントには皮膜形成成分が配合されており、しっかりすすいでも必要なコンディショニング成分は髪に吸着して、流れてしまうことはありません。
むしろ、すすぎの際に髪以外の肌にどうしてもコンディショナーが付いてしまうので、体をボディーソープで洗うのは、必ずコンディショナーの後にするようにしましょう。コンディショナーがすすぎの際に背中に付着して、それをお湯で流すだけにとどめると、背中ニキビの原因となります。
⑦タオルでやさしく髪をおさえ、タオルドライしてからドライヤーを
髪をタオルで拭くときも、なるべく髪どうしで摩擦が起こらないように気を付けましょう。ふわふわのタオルで、やさしく髪を挟み込み、水気を取るイメージで。ドライヤーは、基本的に髪から20㎝離して乾かすようにして下さい。最適な距離は購入したドライヤーの説明書に従って。
濡れた状態の髪は、少しの摩擦で傷んでしまいます。決して生乾きのまま寝ないようにして下さいね。
乾燥肌の人はドライヤーの前に乳液やオイルで地肌を保護して
頭皮のかゆみや、乾燥性のパラパラしたフケに悩む方は、ドライヤーの熱を頭皮に直接あてないように、ドライヤー前に、乳液や頭皮用の保湿オイルなどで保護することをおすすめします。
顔用の乳液は、べたつかずのびが良いものが多いですし、敏感肌用などもあります。普段のケアで乳液を使っていて自分の肌に合っているなら、わざわざ頭皮用オイルを買わなくても、乳液で十分ですよ。
洗浄料による「洗いすぎ」は、頭皮とヘアダメージを悪化させる
美容師さんとしては、「しっかり洗って綺麗にする」がセオリーだとは思いますが、最後にあえて、実は洗いすぎは頭皮環境とヘアダメージを悪化させるというお話をさせて下さい。
美容師さんにこそ知ってほしい頭皮の仕組み
頭皮について、その仕組みをみていきましょう。頭皮も顔や体の肌と皮膚の構造は基本的には同じで、どちらも数週間おきにターンオーバーを繰り返しています。
健康な頭皮では、新しい皮膚が生まれ、表皮から角質になり、最終的に垢となってはがれ落ちます。ただし洗いすぎると、必要以上に角質をとってしまうことになり、それを修復するためにターンオーバーが早まります。
ターンオーバーが早くなりすぎると、不完全な角質が作られるため、はがれやすくなり、パサパサとしたフケが出てきます。「フケが出るから不潔」と思って余計に洗いすぎてしまいますと、さらに状況を悪化させます。
そして、もうひとつ覚えておいていただきたいのは、肌の表皮を覆っている「皮脂膜」の重要性。油分である「皮脂」はしっかり洗い流さなければ汚いとお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、皮脂をごっそり取り除くような行為は実は肌の負担になります。
皮脂膜は肌の重要なバリア機能の一部
健康な肌の表層では、皮脂が毛穴から分泌されて表皮にいる「皮膚常在菌」という善玉菌と混じって「弱酸性」の皮脂膜を作り、肌を薄いベールでおおうことによって、紫外線やウイルスなどからお肌を守るバリア機能の役目を果たしてくれています。
この「皮脂膜」を頻繁にとってしまうとどうなるでしょう?紫外線やウイルスなどの外部刺激からお肌を守れなければ、頭皮環境を悪化するだろうということは容易に想像ができますよね。ひどい場合は炎症を起こしてかゆみが出てくることもあります。
顔を毎日洗顔料で洗って何もケアしなければ、乾燥したり、肌が荒れますよね?頭皮も同じことです。むしろ頭皮はドライヤーを当てる分、さらに過酷な環境にあると言えるでしょう。
髪も、洗うときにはどうしても髪どうしがこすれあうのでキューティクルが傷みます。どんなに肌や髪に優しいシャンプーを使ったとしても、ダメージゼロになることはありえないのです。
日本のシャンプーの歴史と世界のシャンプー事情
日本人のシャンプーの頻度について掘り下げる前に、日本の洗髪頻度の歴史的推移をご覧ください。
洗髪頻度の推移
平安時代 | 年1回ほど |
---|---|
江戸時代 | 月1~2回(最も高頻度な江戸の女性で) |
昭和戦後 | 月1~2回 |
昭和30年頃 | 1回/5日 |
1980年代 | 2~3回/週 |
1990年代半ば | ほぼ毎日(10-20代女性) |
2015年 | ほぼ毎日(10-50代女性) |
実は1980年代前半頃は日本人もシャンプーの頻度は週2~3回でした。みなさんのおばあさんやおじいさんも毎日シャンプーしていない方がいらっしゃいませんか?
ページ中ほどで、日本人のシャンプーの頻度が世界的に見ても高いというお話をしました。頻度が高いのは、気候や、水質が軟水で硬水の国にくらべて洗ってもバサバサになりにくいなどの理由もありますが、最大の要因は1987年に起こった「朝シャン」ブームです。
1980年代前半頃は日本人もシャンプーの頻度は週2~3回でしたが、「朝シャン」ブーム以降シャンプーの頻度が大きく上がったのです。ちなみに「朝シャン」は1987年の新語・流行語大賞に選ばれています。
日本のシャンプー頻度の高さが話題になったのは、2015年に海外大手市場調査会社のEuromonitorが、世界16カ国のシャワー事情を調査し発表したことがきっかけです。
この調査によると世界のシャンプーの平均は約3回。シャワーはほぼ毎日浴びるが、シャンプーは2日に1回だけというのが世界平均なのです。パリにいたっては、シャンプーは週2回程というのだから驚きですよね。
つまり何がお伝えしたいかというと、「毎日シャンプーをしないと不潔」というのは、はっきり言って気にしすぎだということ。実際、シャンプーは2~3日に1回にすることを提唱している日本の皮膚科の先生もいらっしゃいますよ。
頭皮や髪のダメージが気になる方は「湯シャン」や「洗髪休み」の日を取り入れて
頭皮にかゆみや乾燥性のフケが出る方や敏感肌の方、髪のダメージが気になる方は、ぜひスタイリング剤をつけない日を設け、お湯だけで洗う湯シャンを取り入れたり、洗髪自体をお休みする日を設けてみて下さい。
もちろん、頭皮も髪も健康で、毎日部活で汗をかいているような若い学生さん方は、1日1回シャンプーをしていただいて問題ありません。
ただ、頭皮にトラブルがあったり、ヘアカラーやパーマなどでのダメージが気になる方には、シャンプーを頭髪に良いものに変え、ダメージレスの正しい洗い方を実践するに加えて、たまにはシャンプーをお休みするということをおすすめしたいのです。
頭皮や髪の状態に合わせて適切な洗髪をし、ダメージレスな頭髪を目指してくださいね!
- 洗浄力や脱脂力が強く、刺激も強い界面活性剤は避けて
- 敏感肌の人は、精油入りや構成成分が複雑なシャンプーは避けて
- こすり洗いは絶対ダメ!泡で包み込むように洗って!
- シャンプーはしっかり泡立てることで、髪どうしの摩擦を軽減できる
- 1分半~2分はしっかりと予洗いをする
- すすぎ残しのないようにしっかりすすぐ
- 乾燥肌の人はドライヤーの前に乳液やオイルで地肌を保護して
- ドライヤーは、基本的に髪から20㎝は離して乾かす
- 乾燥肌や敏感肌の人は、シャンプーをお休みする日を設けて