美容師の為のハサミの選び方|おすすめの種類・メンテナンスの注意点は?

更新日:2024/02/12
美容室社長中村英二

美容師のマストアイテムと言えばハサミ。ヘアカット業務においてなくてはならない大切な仕事道具ですよね。

ただ、理美容バサミはさまざま種類・ブランドがありますし、値段も数万円から数十万円とピンキリ。「一体どれにしたらいいのか、何本買っておくべきなのか?」と迷う方も多いのではないでしょうか?

今回は、美容室を複数店舗経営する私中村英二が、理美容バサミの企画・開発・製造・メンテナンス事業をおこなう株式会社刃物屋トギノンさんへ伺い、理美容バサミの種類や失敗しない為の選び方、メンテナンスの注意点などをインタビューしてきました。

さらに、4人のトップスタイリストに、現在実際に使用しているハサミと、それらを選んだ理由をヒアリング!これからハサミを買おうと思っている美容学生さんや、買い替えようと思っているスタイリストさん必見です!

話を聞いた専門家

株式会社刃物屋トギノン・田島悠貴主任

理美容バサミの企画・開発・製造・メンテナンス事業をおこなう株式会社刃物屋トギノンの横浜営業所営業部主任。日々サロン周りをしながら美容師の声に耳を傾け、その人に合うハサミを提供し、用途に合った研ぎへと導く、理美容バサミのプロフェッショナル。

株式会社刃物屋トギノンは、「刃物のまち」として有名な岐阜県関市で刃物の研ぎ屋として活動をスタートし、1980年に縫製業向けの刃物レンタルサービスとして創業。その後、理美容向けのハサミの製造販売を開始した。

創業時から受け継がれている、使い込まれた刃物を研ぎ直す「研ぎ」の技術によるメンテナンスを強みとし、その技術を根底においた妥協しない製品づくりで、世界特許を取得しながら革新的で高品質な理美容ハサミを提供し続けている。現在年間研ぎ数、10万丁本!理美容バサミ企業として売上、研ぎ本数共に日本一を誇る。

ハサミの選び方のポイント

田島さん、まずは美容師がハサミを選ぶ時、どういう点に注意したら良いのか、選び方のポイントを教えて下さい!

ハンドルの種類、長さ、刃の形状の3つの特徴を踏まえた上で、実際に手に取って、試し切りして選ぶことをおすすめしています。

ハンドルの種類で選ぶ

理美容のハサミには大きく分けてふたつの形があります。リバース(あるいはメガネ)タイプとオフセット(あるいはソード)タイプです。

リバースタイプ

リバースタイプは指を通す二つのリングが揃っている、伝統的な形です。メガネハンドルとも言います。

オフセットタイプ

オフセットタイプは、動刃側(親指側)のリングの柄が短く段違いのようにリングが配置されているタイプです。

こちらのほうが、少しの指の動きで大きな開閉感を得られ、手の負担が少ないとされています。そのため、比較的バリエーションが豊富なのはオフセットタイプになります。

ダウンタイプ

オフセットのハンドルそのものを、刃先~ネジの延長線上より下げた位置にしたダウンタイプというものもあります。

こちらは、イスに座ってカットする際や、上の方でチョップカットする際、肘や肩、腕の負担軽減を企図して設計されています。

代表的なハンドルの種類は以上ですが、どれに優劣があるというよりは、それぞれのスタイリスト様、お店の教育方針に沿って選んでいただくことをおすすめします。

リングの大きさ、小指掛けの有り無しは、コームとのバランスで選んで

ハサミの持ち手のリングの大きさと、小指掛けの有り無しは、コームとのバランスで選んで下さい。

まず、大きいコームを使う場合はリングが小さくないと上手く持てません。つまり、リングの大きさはコームの大きさとのバランスで考えてください。

また、小指掛けの有無はコームの持ち方で選んで下さい。多くの場合は、利き手でコーミングをし、カットをする際には反対の手にコームを持ち替え、利き手でハサミを持ってカットします。この場合は、小指掛けがあった方が安定する為、小指掛け有りタイプをおすすめします。

一方、利き手でハサミとコームを一緒に持ち、コーミング後、コームを持ち替えずにハサミでカットするという方もいらっしゃいます。この場合は、ハンドルは眼鏡タイプで小指掛けがないタイプをおすすめします。

コームの持ち方はお店の方針や流派によって異なるため、アシスタントでこれからハサミを買う人は注意したいですね。

長さで選ぶ

理美容バサミの長さはインチで表記されるものがほとんどです。トギノンは、刃先からリングの淵までを基準に計測し、5.3~7.5インチまでの長さでラインナップを構成しています。

美容師さんが比較的好まれるのは6インチ前後が多いのですが、メンズカットが多い方やお店の方針によって長いハサミを使われる方もいらっしゃいます。

選び方は、ブラントカットをする際をイメージして、刃を中指に乗せ、指の付け根に刃先が届かないくらいが安心と言われています。

刃の形状で選ぶ

刃は、カットの用途や技法によって最適なものが変わってきます。

直刃

直線的な刃は直刃といい、毛髪をよく捉えるため、ブラントカットやチョップカットに適しています。

笹刃

刃が笹の葉のように弧を描いているものは笹刃といい、意図的に髪を逃がしながら切るためスライドカットやストロークカットに適しています。

柳刃

柳刃は、笹刃ほどではないが、直刃より少しだけカーブがついたもの。直刃よりもサクサク切れ、やわ切れもできると最近人気の形状です。

ハマグリ刃

刃のしのぎ部分がハマグリの貝殻のような形状に名称が由来しています。刃角度が鋭いため髪への食い込みが良く、柔らかく滑らかな切れ感となります。

段刃

刃のしのぎ部分に段がついている形状。刃の厚みを抑えることができるため、理容シザー、特に仕上げ(ぼかし・フェード)に適しています。

シャーク刃【トギノンオリジナル!】

トギノンオリジナルのシャーク刃というものもあります。こちらは、より髪を捉えるように、刃の表面に山と谷のようなギザギザ形状の刃となっております。

アール

アールシザーは刃先がカーブしているのが最大の特徴です。刃先がカーブしているため、毛先にカーブをつけてやわらかい仕上がりにしたい時に適しています。さらに、毛先にカーブをつけることで、ハネを防いでツヤ感を出し易いです。

上記はカットシザーの刃の種類です。さらにここから、セニングの刃の形状の種類についても解説します。

V溝刃

V溝刃はセニングの中では最も伝統的な形状。櫛刃の先端にある溝で捉えた毛を、棒刃と挟んで毛髪を切断します。その構造上、切れが重くなりがちなのが難点です。

また、研ぐと棒刃一面に刃が付く為、閉じたときにカットする必要がない髪にも刃があたってしまい、キューティクルを痛めて、枝毛などの原因になる場合もあります。また、研ぎたては毛を引きやすく、刃が馴染んで抜けが良くなる頃には、毛髪を押しつぶしたような切れ方になる可能性があるというジレンマがあります。

溝なし刃

溝なし刃は、溝がない分、V溝刃に比べて切れ味は柔らかいのが特徴です。定期的に研がないと、毛を捉える量が変化しやすく、また研ぎ調整そのものが難しい傾向にあります。

階段型櫛刃

溝が階段状になっている刃。動かして使う際に抜けが良くなるように企図された、現在多くみられる形状です。

両櫛刃

棒刃側も櫛刃形状にし、毛髪へ触れる刃を最小限にした形状。良い状態であれば、従来のV溝よりも毛髪へのダメージや抜けに優位性があります。しかし、研ぎ調整が難しいというデメリットがあり、次第にどのメーカーも次回作を作らなくなって、現在はあまり見かけられなくなりました。

こうやって一覧にすると、刃の形状だけでも沢山の種類があることが分かりますね!

V溝刃のセニングは専門学校の授業で私も使ってましたが今現場で使用している人はいませんし、アールシザーは10年以上前に流行りましたが最近は見かけなくなりました…。理美容バサミも日々進化しているのですね!

手に取って試し切りをする

ここまでお話しした、このハサミは何に向いているというのは、あくまで形状から結びつけているものです。実際に自分に何が合うのかは、手に取って、試し切りをしていただくことが最善と考えています。

トギノンではハサミのサンプルをご用意していますし、試し切り用のウィッグもご用意しております。持つだけではなく、切っていただくことで、より実感が増すと考えているからです。ぜひ試し切りをして自分に合った一丁を選んでくださいね。

迷ったら、ハサミ屋に客層やコームの持ち方を伝えて

迷って決められないという場合は、遠慮なくハサミ屋に聞いてください。先にお伝えしたコームの持ち方はもちろん、担当するお客様が男性が多いのか、女性が多いのか、どの年代が多いのか、そしてショートやボブが多いのか、ロングが多いのかで、おすすめのハサミは異なります。

上記のような詳細なお話しをお聞かせいただければ、あとはハサミ屋が美容師さんの手の大きさを見て、おすすめのものを提案できますので、お悩みの場合はぜひご相談下さい!

何を何丁持ってる?トップスタイリストのハサミをチェック!

続いて、現場で働いているトップスタイリストは実際に何を何丁持っているのかを聞いてみましょう!

トップスタイリスト・佐藤福姫さんのハサミ

佐藤福姫さん

美容師歴15年。現在はスタイリストとして活躍しながら、家事育児に励むママ美容師。一客一客に寄り添った接客・技術に定評がある、Anphiの人気スタイリスト。

自身がママであることを活かし、世の中のママが日常でお手入れしやすいヘアスタイル提案を得意とする。

カットシザーDC55N|KIKU

KIKUのカットシザーDC55Nは、先輩のおすすめで購入からずっと愛用しているハサミです。5.5インチで細かい作業ができるのと、インナーセニングを入れたりするのに重宝しています。

KIKUのDC55Nは、もう10年以上使用しています。研ぐ度にもちろん細くなっていくのですが、この細さがすごく良いんです。実は少し前に同じものを再購入したのですが、新品は太く感じてしまい、結局今も箪笥にしまったままになっています(笑)。

カットシザーDIA58|TRACKS SCISSORS

カットシザーの2丁目はトラックスシザーのDIA58。ドライカットをすることが多くなり、ドライとウェットを使い分けるのが面倒で、両方できるハサミを探していたところ、通っていた美容室の美容師さんが使っていると聞いて購入しました。

パワーがあり、そんなに力を入れなくても切れるので、スピードアップになります。ドライ・チョップに加え、スライドカットもいけて便利な1丁です。

セニングシザー232L|KIKU

KIKUのセニングシザー232Lは、カット率10%なので、細かい作業をやりやすく、色々なところに重宝しています。顔周りや前髪、サイドバングをつくるときにはこちらを使っています。

セニングシザーBLOW13|TRACKS SCISSORS

トラックスシザーさんから「レザーで切ったかのような質感が出ますよ。」と勧められて購入したのがBLOW13。カット率18-23%のセニングシザーです。

ハサミ選びの際には、サイズが大きいと手を切ってしまったりするので、サイズ感にはこだわります。愛用は5.5~5.8インチです。

研ぎは、長いお休みに入る前に出しています。だいたい、年に2回くらいですね。

トップスタイリスト・野口純平さんのハサミ

野口純平さん

美容師歴17年。Anphi矢向店の店長。複数店を経験し、Anphiの創業メンバーとして長年サロンを切り盛りする縁の下の力持ち。得意な施術はカラーとヘアアレンジ。個人発信にも力を入れ様々な取り組みを行う。

Dr.scissors|TOGINON

カットシザーのメインは、TOGINONのDr.scissorsを使用しています。それまで使用していたハサミよりもインチが短いもので、ブラントがしっかり切れるものが欲しくて選びました。

切れ味がとても良くて気に入っています。ベースを切る時はほとんどコレです。

エクスカリバーENB-63D|BMC

カットシザーの2本目はBMCのエクスカリバーを使用。これはトップのチョップを入れたり、ドライ後に切るのに使っています。

シンシアC27-F|BMC

セニングシザーは、同じくBMCのシンシアC27-Fを使用しています。カット率15%くらいで、平均的に削げて、どちらの面でも使えるので重宝しています。

ハサミは、先輩やカットが好きな方におすすめを聞いてメーカーを選び、最終的に手に持ったフィット感と開閉の仕方で決めています。

研ぎの頻度は年に1回、夏休み前など自分の長期休みの前にトギノンさんにまとめて研ぎに出しています。

トップスタイリスト・泉川さんのハサミ

泉川さん

美容師歴20年、Anphiのトップスタイリスト。経験を活かした幅広いスタイル提案と、卓越したカット技術がお客様から人気。何でもできるオールラウンダーだが、中でもショートカットを得意とし、顔周りのカットには強いこだわりがある。

ハサミを選ぶ際は、実際に持った時のフィット感、そして何より切った時の感覚を大切にしています。その為、試し切りは結構してきました。結果、写真の7丁を10年ほど愛用しています。

理想は「指で人の髪を切りたい」くらいなので(笑)、”指の延長上のハサミであるか”が選定基準です。

7丁を使い分けているってすごいですね!ではまずカットシザーから教えて下さい。

カットシザー|ノーブランド

ドライ用のシザーです。ロングのレイヤーなどの間を抜いたりする時に使用しています。

縦で間を抜いていくように使っていて、刃が立ちすぎてしまうと使いづらいため、このシザーはあえて研ぎ屋に6年ほど出していません。

カットシザー|ノーブランド

刃に少しアールが付いていて、毛が滑り易いハサミです。スライドカットやメンズの根元の量をとる時に使用しています。その為、刃先を少し細くしています。

アールシザーR-slider 60|島理研

島理研のR-slider60は、刃先がしっかり曲がっていて、刃元のアールがより強くついているため、ショートのスライドカットや、襟元等に向いています。

スーパー笹刃といって、よりカーブがついていて滑りが良い点が気に入っています。

カットシザー0150|KANO-STYLE

KANO-STYLEの直刃のカットシザーです。ブラントカット、チョップ、メンズの刈り上げに使っています。パワーがあるので、バッサリ切る時はこれです。

セニングシザーSPECTЯA-30|島理研

カット率が25%のベーシックに使えるセニングシザーで、特徴は動刃と静刃両方ともに刃が付いている点です。両方からしっかり切れるので、セニング特有のひっかかりがありません。

この島理研のSPECTЯA-30は、試し切りした瞬間に「買おう!」と思いました。そのくらい、抜群の使い心地です!

セニングシザー0315|KANO-STYLE

カット率が50~60%くらいのKANO-STYLEのセニングシザーです。カット率が高いのですが、割とスカッと抜けるので、実際に切っている感覚としては「半分も梳いていないかな」という感じです。

女性の前髪をちょっと切りたい時等に使います。根元側もしっかりとれるのが良いですね。

セニングシザー|GOD HAND

カット率35%のセニングシザー。毛量が多い人の最初の毛量調整に使っています。

サイズはだいたい6インチのものを使っています。

メンテナンスは、あえて研ぎに出していない1丁を除いて、3カ月に1回研ぎに出しています。今のサロンになってから客数が多いため、必然的に出すペースが早くなりましたね。

テクニカルディレクター・大和田誠さんのハサミ

大和田誠さん

美容師歴18年、Anphiで売上常にNo.1のテクニカルディレクター。数々のコンテストで優勝し、日本一になった経験を有する。さらに、社外講習の講師や審査員、テレビ出演など、多方面での実績を持つ。日々のサロンワークでは日々トレンドを意識した再現性のあるヘアスタイルを提案し、髪の悩みの多い世代に特に人気。

普段サロンに持って行っているのは上の写真の7丁です。中でもメインで使うのが写真右から3丁、サブでその隣の2丁、さらにごくまれに残りの2丁を使用しています。

では、メインで使用している3丁と、サブで使用している2丁について詳しく教えていただけますか?

fuma shark light|TOGINON

一番メインで使っているブラント用のハサミはTOGINONのfuma shark lightです。これは刃にギザギザが入っていて毛が逃げないのが特徴で、ワンレンやラインで切りたい時にしっかり切れるので気に入っています。

カットシザー|TRACKS SCISSORS

このTRACKSのカットシザーは開閉が軽いので、刈り上げ等で使用しています。トラックスシザーは、持ち手の部分が選べたり、支点の部分が選べるのが良いですね。

Queen Type-R|TOGINON

セニング用にメインで使用しているのは、TOGINONのQueen Type-Rです。カット率は18%。櫛刃ではなくて棒刃に細かなギザギザが付いている珍しいタイプです。

私は基本オフセットが多いのですが、セニングは裏返ししても切れるように眼鏡タイプにしています。

カットシザー|TOGINON

こちらもTOGINONのカットシザーです。10年以上前に購入して以来ずっと使用しており、刃がかなり小さくなっていいます。その為、 チョップカットや削りたい時など、細かい作業をする際に使っています。

ART 27SNL|KOUHO SCISSORS

KOUHOのセニングシザーは、もう16-17年使用しています。刃が大きいですし、櫛の隙間が大きいので毛が抜けやすく、硬い毛や太い毛の方をザクザク鋤きたい時に使っています。カット率は15~20%ほどです。

大和田さんはハサミはトギノンが多いのですね。何か理由がありますか?

アシスタント時代のお店にトギノンの方が月に1回程出入りしていたのがきっかけです。トギノンさんならハサミをローン3年程で無金利で購入でき、かつそのローンを支払っている間はメンテナンス無料というのが、お金がないアシスタント時代には非常にありがたかったですね。

そして何より実際に使用していて使い易いですし、静刃にギザギザが入った他にはないタイプのハサミも気に入っています。

ローンの間研ぎが無料なのは非常に嬉しいですよね。

ハサミを選ぶ時は、どんな点に拘っていますか?また、研ぎに出すペースも教えて下さい。

ハサミを選ぶ際は、『ハサミを実際に手に取って開閉して振ってみて、開閉し易いか、吹っ飛ばないか。』を重要視しています。また、『中心を持ったときにバランスが良いか。』も大切ですね。大きすぎるとブレますし、重たいと振った時にハサミが落ちてしまうので。

研ぎは基本的は年に2回、トギノンさんにまとめて研いでもらっています。繁忙期の12月前は必ず出します。

刃物屋トギノンさんのおすすめは、シザー2丁&セニング2丁

カットシザー2丁(ラインや直線を切る用・スライドカット等曲線を切る用)、セニングシザー2丁(毛量調整用・質感調整用のカット率違い)といった構成をお勧めしています。

こうすることで、シザーとセニングが互いにスペアになり、万が一切れなくなったときに、安心して研ぎに出すことができます。

また、セニングはカット率の低いものと高いものを組み合わせることで、質感用と毛量調節用など用途やお客層で使い分けることができます。レディースやショートカットが多いスタイリスト様は、最近はスライド(ドライ)専用シザーを持たれる方が多いです。

NEO 5.8|TOGINON

NEO5.8は、トギノンベストセラーシリーズの最新作。ブラントチョップ用。持った時のフィット感とやわらかい切れ味で好評をいただいております。

フーマフォルテッシモ|TOGINON

スライドカットに適した一本です。ドライカットで質感や束感を出したいというときに適しています。

クイーンアール|TOGINON

カット率18%のセニングシザー。クイーンシリーズの中でも抜け感がかなり向上したモデルとなっております。

クイーンシグマ|TOGINON

カット率15%とトギノンのセニングシザーの中で一番カット率が低く、束感や質感が作り易いモデルです。棒刃の小さな溝の中にのみ鋭利な刃があり、梳いていない髪に直接鋭利な刃が触れないトギノンオリジナル構造となっております。日・米・独で特許を取得しました。

よくある理美容バサミのトラブル

理美容バサミでよくあるトラブルを教えていただけますか?

刃物は、使用によって刃が摩耗し必ず切れ味が低下していきます。切れ味が低下した時には次の症状が出てきます。

スベる

刃が髪の毛に食い込まなくて、髪の毛が刃の上を滑ってしまう状態です。つかんだスライスに切れ残りが生じるのが一番わかりやすいサインでしょうか。

パクる

刃と刃の間にパネルが折れて挟まってしまう状態です。刃の摩耗以外に、ネジの緩みや歪みの調整が必要など、様々な要因が重なって起こることが多いです。

刃欠け

美理容バサミの刃は非常に鋭利で繊細です。そのため少し何かにぶつかったり、落下しただけでも刃が欠けてしまいます。刃が欠けた状態で開閉し続けると、刃欠けがより大きくなってしまったり、刃が途中から閉じなくなってしまう可能性があります。

ネジの緩み

ハサミは2つの刃がひとつのネジによって組み付けられ、互いに噛み合って毛髪を切断するという構造になっています。そのため、ネジが適切に締まっていないと、刃同士が噛み合わず、切れない状態になってしまいます。

サビ

ハサミは、水分や薬剤の付着によってサビてしまいます。一度サビると、表面から内部へサビが進行してしまい、完全に取り切ることはできなくなってしまいます。

なるほど。さまざまなトラブルがありますね。では、これらをなるべく回避するためにはどうしたら良いのか聞いていきましょう!

セルフメンテナンスのポイント

ハサミをなるべく良い状態に保つためのセルフメンテナンスのポイントを教えていただけますか?

まず、ハサミの取り扱いの際には下記の4点に気を付けて下さい。

  1. 閉じた状態で保管
  2. 硬いものの上に直接置かない
  3. 薬剤や水滴のふき取り&湿気の多い場所に置かない
  4. 直射日光や夏場の車内を避ける

そして、ハサミはその構造上、どうしても避けていただきたい苦手なものがあります。それは衝撃、水や薬剤、熱です。

これだけは避けて!ハサミが苦手なもの

衝撃

ハサミの刃は非常に鋭利なため、落下やほかのハサミやコームとぶつかるなどの衝撃で欠けてしまうことがあります。欠けた状態で使い続けると、枝毛の原因や開閉ができないなどのトラブルにつながります。

水や薬剤

ハサミは金属の塊であり、どうしてもサビが大敵です。しかも一度サビてしまうと、修繕をするのは非常に難しくなります。ハサミについた薬液や水分は、一日のお仕事が終わった際に拭き取りをお勧めいたします。

精密に調整されているハサミは、熱による金属膨張で狂ってしまう場合があります。直接日光が当たるような場所に長時間放置することがないよう気を付けていただきたいです。

毎日のハサミのセルフメンテナンスのやり方

一日のお仕事が終わりましたら、シザーをセーム皮で拭きましょう。水分や薬剤が付着した状態ですと、サビてしまう原因になります。

拭き方は、峰と呼ばれる刃のエッジ側から皮ではさみ、ネジ元から刃先までを拭き取ってください。また、ネジ元の触点という部分は密着する分、水分がたまりやすくサビやすいです。こちらも拭き取ってください。

さらに、刃裏・触点にシザーオイルを塗布することで、保管中のサビを抑制し次回使用時、開閉感もよくなります。保管時はハサミをしっかり閉じた状態にしておくことも忘れずにお願いします。

最近では、シザーオイルもスプレータイプがあるんですね!これなら吹きかけるだけでOKですから、お手入れが楽で良いですね。

プロに「研ぎ」を依頼するタイミングと注意点

最後に、トギノンさんのようなプロにメンテナンスを依頼するタイミングはいつ頃が良いのでしょうか?研ぎに出す時の注意点などもあれば教えて下さい!

切れ味が落ちる前に研ぎに出すのがおすすめ

「切れなくなってから研ぐ。」という方が多いのですが、理想はその少し前に出していただくということでおすすめしています。

美容師の皆様も、「お客様がもう少し早く(あるいは短いスパンで)来てくれると、綺麗な状態がより保てるのにな…。」と思われたことはございませんか?

実はハサミもそれに似ているのです。下記のカットした髪の断面の写真をご覧ください。

カットした髪の断面

写真左は、切れ味の悪いハサミでカットした髪の断面です。このように切れなくなった状態の刃は、毛髪を押しつぶして切るため、枝毛の原因となり、指通りの悪さやカラーの退色、トリートメント効果の持続性を悪くしてしまったりと、お客様にとってもネガティブな影響を与えてしまいます。

一方で、写真右は研ぎ直した後のハサミカットした髪の断面です。断面の美しさの違いがお分かりいただけると思います。

すごい!同じハサミでも、研ぎに出す前と後ではこんなに髪への負担が変わってくるんですね!

そうなんです。さらに美容師さんご自身にも、指に力を入れないと切れないから手が疲れる、一発で切り切れないため開閉が増えカットに時間がかかる、といったデメリットが生じます。そうならない為にも、切れなくなる前に研ぎに出してください。

また、最近は繁忙期の少し前に出す方が多いです。忙しいときに最大のパフォーマンスを発揮できるよう、定期的な研ぎ直しをおすすめいたします。

研ぎに出す際に、使用用途や要望を詳しく伝えて!

ハサミを研ぎに出す際は、今のお困り事、ご要望や使用用途を詳しくお伝えください

我々は基本的に、よく毛髪を捉え快適に切れるよう刃をつけてきます。そのためスライド用にお使いのハサミをそのように研いでしまうと、返って使いづらくなる可能性があります。

また、どんな風に切れてほしいかも、ぜひ要望をお聞かせください。例えば、お客様のパーマのカールの強さの要望に違いがあるように、同じ”切れる”ということにも違いがあり、我々はお一人おひとりに最高の切れ味を提供していきたいと考えております。

なるほど。研ぎをお願いする時は、遠慮せずに用途や要望を伝えた方が良いのですね!

研ぎから返ってきたら、まずは慣らし切りを

切れるようになったシザーは、いち早くどんどん使いたいですよね。しかし、研ぎたての鋭利な状態で剛毛の毛を切ってしまうと、切れ味が想像よりも早く落ちてしまうことがあります。

研ぎたてのハサミは、最初3人ほど、柔らかい毛の人を選んで慣らし切りをお願いいたします。そうすることで刃が馴染んで、一回の研ぎがより長持ちします。

田島さん、詳しい解説をありがとうございました!

美容師の皆さん、どんなハサミにするか決まりましたか?ぜひ、このページを参考に、あなたにピッタリなハサミを探してみて下さいね。セルフメンテナンスと定期的なプロへの研ぎ依頼も忘れずに!

取材に協力いただいた企業情報

社名株式会社刃物屋トギノン
業務内容理美容バサミの製造・販売・メンテナンス、刃物類の販売 レンタル・修理
本社所在地〒501-3265 岐阜県関市小瀬2238
フリーダイヤル0120-833832
HPhttps://www.toginon.co.jp/
営業エリア 北海道(札幌)/東北(福島、宮城、山形)/関東(埼玉、千葉、東京、神奈川)/中部(静岡、愛知、岐阜、三重)/北陸(富山)/関西(滋賀、京都、兵庫)/中国四国(広島、愛媛)/九州(福岡、佐賀、熊本、鹿児島)/沖縄

刃物屋トギノンさんは、「刃物のまち」として有名な岐阜県関市に本社を置く会社で、そこを中心に北は北海道から南は沖縄まで営業所を置いていらっしゃいます。今回、私が運営する美容室Anphi所属のスタイリストの多くがトギノンさんを利用していたため、取材依頼をさせていただきました。

刃物屋トギノンさんは、いわゆる「研ぎ屋」からスタートした会社のため、製品はもちろん、ハサミを買った後のアフターフォローが抜群に良く、営業所のある地域では営業さんが定期的に巡回して下さっています。なんと、ハサミ購入後、分割払い期間中は研ぎを無料で行ってくれるそうですよ!

この記事を読んで、トギノンさんのハサミが欲しくなった方、また研ぎに出したくなったかたは、ぜひ問い合わせてみて下さいね。ちなみに、トギノンさんからマージンは一切いただいておりません(笑)

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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