外国人美容師の実情をインタビュー!|日本の美容室での働き方は?
実際に東京都の美容室で働く外国人美容師キムさんに、日本の美容室で働くことになった経緯や、なるまでに大変だったこと、働いてみて良かったこと、悪かったことなどをお伺いしました。
美容師の就労ビザがないなか、外国人の方が日本の美容室でどうやって働けるようになったのかも、実経験をもとにお話しいただいています。現在、美容学校で学んでいる最中の外国人の方必見です!
今回話を聞いた人
韓国ソウル生まれの韓国人。もうすぐ在日10年。現在は日本人の奥さんと、お子さんと暮らすパパ美容師。趣味は韓国料理を作ること。
韓国などのアジアの美容室の現場で日本のヘアカタログを使ってヘアデザインをしていることで興味を持ち、日本で美容師として働きたいと考えるように。その後、韓国でも名が知られている日本の美容学校・山野美容短大に進学し、卒業後は某大手美容室チェーンに7年勤める。
現在は美容室Anphiで業務委託スタイリストとして活躍中。将来は日本で美容室を経営するのが夢。
日本で美容師として働こうと思った経緯
キムさんは、韓国生まれ韓国育ちだと伺っていますが、日本で美容師として働こうと思った経緯を教えていただけますか?日本には前から興味があったのでしょうか?
僕は中学生時代にボーイスカウトをしており、日本のガールスカウトと交流したり、来日した経験もあり、その頃から日本に馴染みがありましたね。
学校卒業後は、韓国にて料理人として働いていましたが、知人にデザイン系の仕事をしている人が多く、デザイン系の仕事に転職したいと考えるようになったんです。母に「美容師が合うんじゃない?」と言われたことをきっかけに、美容師の仕事に興味を持つようになりました。
韓国や台湾などのアジアの美容室で日本のヘアカタログを参考にしていた
実は、韓国や、台湾、香港などのアジアの美容室へ行ってみると、日本のヘアカタログを参考にヘアスタイルを決めることが多いです。デザインカラーやヘアアレンジなど、日本のヘアデザインを参考にしていることが多く、「日本にはこんなに個性的なヘアスタイルが多いんだな!」と興味を持ち、日本の美容師技術を学びたいと考えるようになりました。
イギリスのヴィダルサスーンアカデミーとも悩みましたが、日本の方が韓国から近いことが決め手となり、韓国でも有名な日本の山野美容短期大学へ進学を決めました。
韓国などの美容室で日本のヘアカタログが利用されていたんですね!それは嬉しい驚きです。実際に日本の美容学校へ通ってみていかがでしたか?
山野美容短期大学へ通い、卒業した先輩に話を聞いてみたら、日本で学んだ技術で世界の様々なところで活躍していると聞いて、「やはり日本の技術は世界に通用するんだな!」と確信を持つことができました。それを信じて、日本で頑張っていこうと決意しました。
日本で美容師になるまでに大変だったこと
日本で美容師になるまでに、外国人だからこそ苦労されたことも多かったのではないかと思います。特にどんなことが大変だと感じましたか?
スタッフによる外国人に対する差別
みなさんよく「日本語での会話が大変でしょう。」とおっしゃいますが、実際会話はそんなに問題ではありません。一番の問題は、一緒に働くスタッフとの人間関係。外国人に対する差別でした。
例えば、日本人が仕事で何か一つミスしても、「これは間違っているよ。次からは気を付けてね。」で済むと思います。
一方それが外国人の場合、何か一つ間違えてしまうと、先輩や同僚に「やっぱり外人だから…。」「それはあなたの国の文化?日本はこれが普通なんだけど。」というように言われ、「じゃあやらなくて良いよ。」とすぐに諦められてしまうことが多かったです。
こちらはやる気で準備してきているのに、そのように言われてしまい、仕事の機会を奪われてしまうことが何度もありました。特に、お店に馴染むまではそういう扱いを受けることが多く、一緒に働く仲間に信用してもらえないというのが一番辛かったです。
なるほど…一生懸命やろうとしているのに「外国人だから、できないよね」というように匙を投げられてしまうことがあったんですね。それは辛いですね。
そうですね。なので、偏見の目で見られない様に周りのスタッフに気を遣い、全て合わせられるように努力しました。職場のみんなから認められるようになるまでがとても大変でしたね。
努力されたんですね。日本の美容室へ入社されるまでで大変だったことはありませんでしたか?
美容師免許を取得できても「美容師」として働けない現実
山野美容短期大学の先生に、「日本では美容師としては働けないよ。」と言われたのが衝撃でした。
まさか美容師の免許は取れるのに、就労ビザに「美容師」がないから働けないなんて思ってもみなかったので…。それは他の留学生も同じで、みんな「日本の技術を学んで、日本で美容師として活躍したい。」と夢を持って留学してきた人ばかりで、とてもショックを受けていました。
短大に僕と同じ韓国人が他に6人いましたが、僕以外はみんな学校卒業後に母国へ帰ってしまいましたね。
日本の制度の問題ですね。卒業後に同級生の韓国人は帰ったけど、キムさんは帰らずに済んだのはなぜでしょう?
僕は日本で美容師になると決意して留学してきたため諦めきれずに色々と調べました。そして縁が合って、友人から「美容師としてではないけれど、働き手として受け入れてくれる美容室がある。」と聞き、その美容室へ入社することができたのです。
その美容室では外国人の受け入れを行っており、卒業後に「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを取得して働けることになりました。
「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得されたんですね!ただそれだと、美容室に勤められても美容師としては働くことは認められていませんよね?
はい。このビザでは、美容師としてお客様のヘアデザインを創ることはできませんが、受付や、一部のアシスタント業務はすることができ、日本の美容室の現場で技術を見て学ぶことができました。
その後、日本人女性と結婚したことにより、活動制限のない「日本人の配偶者等」の身分系ビザに変更でき、晴れて美容師として働くことができるようになりました。
働き先にAnphiを選んだ理由
勤めていた美容室を辞めて、Anphiへ転職することにした理由を教えて下さい。
第一に、マンツーマン施術で自分の担当のお客様に集中できる点です。
それまで勤めていた会社でさまざまな店舗を経験しましたが、どのお店でも、アシスタントもスタイリストも自分の指名のお客様だけでなく、他のお客様の施術にも入らなければいけませんでした。
その為、1人のお客様に集中できなく、作業クオリティが低くなる問題が度々発生していました。お客様からのクレームに繋がったり、トラブルになって、お店の雰囲気が悪くなることもありました。
Anphiでは、ほとんどの時間を自分の担当のお客様のために集中できるため、自然とお客様満足度も高まり、評価してもらえるところがすごく良いです。
ありがとうございます。他に、他の美容室ではなくてAnphiを選んだ理由はありますか?
働くみなさんが明るく、前向きな方ばかりで惹かれました。
これほどやる気がある店長さんや、スタッフさんは久しぶりに見た気がします!サロン見学時や、体験入店時に、みなさんの明るさに触れて、頑張っていけると思いAnphiへの入店を決めました。
入店後、人間関係などは問題ないですか?
以前の職場で悩んでいた人間関係の部分もAnphiはすごく良かったです。
マンツーマン施術ですのでスタッフ同士で施術を掛け持ちすることはありませんが、電話対応や受付、掃除などといった必要最低限の業務はみんなで協力をしながら、お互い助け合って、気持ちよくサロンワークを行えています。
現在の働き方や報酬
現在、週5~6日で9時~19時まで働いています。
キムさんのとある一日
- 6:30
- 起床
奥さんと朝食、出勤準備
- 7:30
- 出勤
子供を起こし、美容室へ出勤
- 8:30
- 美容室入店&掃除
お店到着、掃除後自分のスタイリングしながら入客準備
- 9:00
- サロンワーク
1日平均5人〜6人お客様対応しております。様々な悩みが多いお客様がいらっしゃいますが、細かくカウンセリングして最も適切なスタイルを提案しております
- 19:00
- 退勤
- 20:00
- 帰宅、夕飯の準備
お風呂に入った後に、毎日奥さんに料理を教えながら一緒に作っています。得意料理はもちろん韓国料理です!
- 21:00
- 自由時間
大体映画を見てますが週2回ジムへ行ってます。あと、月一回奥さんと家計の計画などの話しをしております
- 24:00
- 就寝
自由度の高い環境で、自信の技術を発揮しならがも、日々成長できている
技術面で縛られることなく、自分の技術を発揮しながら自由に働くことができています。
日本の個性的なヘアスタイルが好きで日本の美容室へ来た自分としては、以前勤めていた美容室で技術面のしばりが多く、店長のやり方通りにやることを求められることに不満がありました。
その点、Anphiではさまざまな流派の美容師が働いているため、技術面で「必ずこうしなければならない。」といった、縛りはありません。自由度が高いため、自身の技術を発揮しながらも、他のスタイリストのデザインを見たり、アドバイスをもらえたりすることができます。
もちろん、Anphiに入店したばかりの頃は、この自由さに慣れなくて戸惑う時もありましたが、慣れた今では、この自由度こそ外国人美容師として働く武器だと考えるようになりました。「この店なら、自分はまだまだ成長しながら働ける!」と感じています。
報酬について
もともとAnphiへ入社を決めたのは「稼ぎたい」というより「働き方の自由さ」に惹かれたのが理由でしたが、働きはじめたばかりとは思えないくらい稼げています。努力した分、報酬で自分に戻ってくるシステムなので、やる気がある人にはかなり魅力的だと思います。
限界まで自分を追い込んで働かなくても、しっかりと稼げるところが良いですね。
日本で美容師として働いてみて感じたこと
実際に日本で美容師として働いてみて感じた、良い点や悪い点について率直な感想を教えて下さい。
時代にそぐわない”良くない伝統”がある
お店によりますが、日本の美容室では「昔からの伝統」と言って、ひどい業務をさせられることがあります。
例えば、僕は以前の勤め先で、アシスタント時代にオープン前1時間半ほど、毎日一人でお店の掃除をしなければいけませんでした。さらに言うと、床を拭く時もモップなどの道具は使わずに、手で雑巾で磨くというのが伝統だからと強制させられていました。とても非効率的なやり方だと感じました。
これは外国人にとってだけでなく、日本人からしても良いことではないのでは?と思います。
それは、時代にそぐわない悪しき習慣ですね。毎朝1時間半の1人掃除、よく辞めずに堪えましたね!
日本のお客様は本当に優しい
日本のお客様は本当に優しいです!外国では、お客様が決めたヘアスタイルに対して、美容師が技術的に難しいと伝えても、「絶対にこれでなくてはイヤだ!」と押し付けるお客様がたまにいらっしゃいます。でも、日本ではそのようなお客様はまだ見たことがありません。
民族的な文化の違いかもしれませんが、こちらの説明をしっかり聞いて下さり、理解して下さります。
日本の美容師は技術も理論の知識もしっかりと理解している
日本の美容室で働く美容師さんは、技術も理論の知識もしっかりと理解しているので、普通に仕事をしている分にはお客様とのトラブルもないと思います。
これが日本で働く外国人美容師が目指すべきあり方だと思います。
日本で美容師を目指している外国人の方へ一言
確かに現在、日本の就労ビザに「美容師」はありません。僕の同級生もみんな、自国へ戻ってしまいました。それでも探せば、僕の様に日本に残って美容室で働く方法はあります。
直接お客様のヘアデザインはできなくても、アシスタントとして技術を学べ、日本式のヘアデザインにふれることが可能です。ぜひ諦める前に、情報を探してみて下さい!
また、自分のモチベーションアップになり、それを引き出してくれる仲間がいる居場所を見つけることが、外国人にとって一番の目標だと思います。自分はその店がAnphiだと確信しています!
キムさん、貴重なお話をありがとうございました!
2022年10月から東京都内の国家戦略特区において外国人美容師育成事業が開始されました。他地域の国家戦略特区において外国人美容師育成事業の開始が予定されています。日本の美容室で外国人美容師を働き手として受け入れるお店が増えるかもしれませんね!