女性の薄毛|原因と今日からできる対策方法とは?
男性に比べて女性の薄毛は少ないとされていますが、近年薄毛を気にする女性が増加しています。女性の場合は女性ホルモンの減少や妊娠などによるホルモンバランスの乱れなどが要因となって頭髪全体の密度が低くなることが特徴的です。
この記事を書いた専門家

公益社団法人日本毛髪科学協会の毛髪診断士®兼、日本化粧品検定1級取得のコスメコンシェルジュ、スキンケアマイスターの資格を有する美髪・美肌研究家。日々、頭皮や毛髪、お肌について研究し、正しい情報を広める活動を行っている。
女性の薄毛の症状

女性の薄毛は多くの場合、男性と違い生え際は保たれ、髪全体が薄くなり、中が透けたような感じになるのが特徴です。この見た目から「1カ所に限られていない」という意味の『びまん性脱毛症』とも言います。なお、産後脱毛の場合は前頭部を中心にびまん性に脱毛します。
男性型脱毛症の方は産毛になるのが特徴です。一方女性の薄毛の場合太さは平均0.062mmで、中には産毛も認められますが、多くは産毛のよう柔毛ではなく硬毛で、かつ毛数が少なくなるのが特徴です。
原因
ではなぜ薄毛になるのか。女性の薄毛の主な原因について解説します。
女性型脱毛症
「女性の男性型脱毛症(FAGA)」とも呼ばれていますが、男性ホルモン依存では説明できない場合があり、現在は「女性型脱毛症」と呼ばれるようになってきました。
女性ホルモン(エストロゲン)は、皮膚をみずみずしくすると同時に、毛包の成長期期間を延長させる作用を持っています。40歳のころから女性ホルモンの分泌が減ることによって、相対的に男性ホルモンが優位となり、頭頂部の毛の数が減り、細くなるのです。 頭頂部から前頭部の髪の分け目が、ちょうどクリスマスツリーのように見えます。また、前頭部の生え際の毛は残ることが多いです。
加齢による変化
年齢とともに前頭部が後退したり、髪全体が薄くなる人がいます。健康な髪は2~4本の毛包(髪の根もとを包んでいる部分)が集まり、毛群という束になって生えています。この毛群の毛髪数が加齢によって減少するのです。
30代までの平均毛髪数は、頭頂部、後頭部ともに2~3本とほとんど変化が見られませんが、40代の平均毛髪数は約2.2本。50代は約2.0本と、40代を過ぎると減少していきます。さらに、伸びは遅く、ハリがなくなってきます。
糖化
老化の一現象として誰にでも起こっているのが「糖化」です。「糖化」とはタンパク質と余分な糖が結びつき、タンパク質が変性・劣化し、AGEs(糖化最終生成物)という老化物質を生成することをいいます。それにより新陳代謝を衰えさせ、老化現象を引き起こします。
このAGEsは、体のなかでつくられるだけでなく、食べ物の中に含まれており日々私たちの体内に取り込まれています。糖化が進むと皮膚のコラーゲンが糖と結びつきAGEsとなって溜まっていきます。蓄積された部分の皮膚はたるみ、シワになりますし、シミもできます。
この糖化による脱毛への影響が2015年にヨーロッパで発表された研究結果で明らかになりました。体にAGEsがたまると髪の毛根にある毛乳頭細胞にもたまります。すると毛乳頭と毛母細胞がスムーズに働けなくなるため、十分に毛髪が成長しないうちの抜け毛などのトラブルが発生します。また、糖化により皮膚を構成する主要なタンパク質であるコラーゲンが変性すると頭皮が硬化して髪の育成を妨げたり、毛根を支える力が弱まり髪が抜けやすくなることが分かっています。
ダイエット
女性の中には「綺麗になりたい。」という想いからダイエットをする人が少なくありません。肥満の状態を改善するのはもちろん良いことですが、極端なダイエットは身体を飢餓状態にしてします。ダイエットで食事制限をしすぎたり、栄養分をとらないで満腹感を得ようとコンニャクや食物繊維類ばかりの食生活をすると、毛根にある毛母細胞も栄養不足をおこしてしまうのです。結果、切れ毛や断毛など毛の質の低下を招き、さらには、脱毛を招くことがあります。
ストレス
過度なストレスは心身の健康状態に悪影響を及ぼします。そしてそれは、毛髪の成長にも影響を及ぼす可能性があります。外傷や手術でのストレスや、インフルエンザなどの高熱によるストレス、精神的ストレスなど、様々なストレスで生じます。
出産
産後脱毛症は、出産後2~5カ月ころからはじまり、前頭部を中心にびまん性に脱毛します。
妊娠後期に入ると女性ホルモン(エストロゲンの分泌が増えますので、本来休止期に入るはずの毛包が、成長期期間のままとなり、脱毛しなくなります。出産が終わると、女性本来のホルモン状態に戻るため、成長期が延長されていた毛包が一気に休止期に入り、脱毛するのです。
脱毛の程度は人によって異なりますが、激しい場合には頭髪の45%に及ぶことがあります。ただし、ホルモンバランスの異常による一過性の脱毛ですので、放置しておいても約半年でもとに戻りますので、不安に思う必要はありません。見た目が気になる場合は、太めのバンダナなどで薄い前頭部を隠して、おしゃれを楽しみましょう。
間違ったヘアケア
正しいヘアケアは頭髪を健康な状態に保ちますが、間違ったヘアケアは逆に頭皮や頭髪を傷めてしまいます。特に頭が痒いと感じていたり、フケが出ている人は現在のヘアケアが間違っている可能性が高いです。
頭皮を洗う際に爪を立てていたり、頭皮マッサージのつもりで硬いブラシで頭皮を叩いていると、頭皮や頭皮の下の皮下組織まで傷めかねません。また、洗浄力の強いシャンプーの使用や、熱いお湯での洗髪は、頭皮に必要な油分まで洗い流してしまいます。逆にすすぎが不十分だとシャンプーやコンディショナーが残っていて、頭皮環境が悪化します。
喫煙
喫煙は健康に悪影響を与えることからも想像できる通り、毛髪にも悪影響を及ぼします。毛の成長は血流と深い関係がありますが、タバコのニコチンは血管を収縮させ、血流を低下させてしまいます。本来なら毛母細胞に血流で運ばれるはずの栄養が上手く運ばれなくなってしまうため、髪に悪影響を与えるのです。しかも、ニコチンは血流を促進するビタミンEを破壊してしまいます。
また、タバコを吸うことで、薄毛、抜け毛を引き起こすテストテロンやDHTが増加するといった研究結果がアメリカのハーバード大学から発表されています。さらに、喫煙によって育毛に必要なアミノ酸も減ってしまいます。
薬剤
薬剤を使用した際の副作用として脱毛することがあります。報告のほとんどは、抗がん剤の細胞分裂抑制作用と、ステロイド剤の男性ホルモン作用によるもので、他の薬剤はまれです。
疾患
鉄欠乏性貧血、甲状腺機能異常症、膠原病、亜鉛欠乏症などの内科疾患でも生じることがあります。梅毒性などの感染症。
今日からできる対策

食生活に気をつける
健康な髪を保つためには、毎日の食事の中で髪に良い栄養素を取ることが大切です。ファーストフードや揚げ物などの食事を控え、バランスのとれた食生活を心がけましょう。
特に毛はケラチンという硫黄を含んだたんぱく質でできているので、含硫アミノ酸を多く含んだたんぱく質をしっかり摂取することをおすすめします。含硫アミノ酸が多い食品は、アジ、サバ、イワシ、サンマや白身の魚、脂肪の少ない鳥のささみやひれ肉、チーズなどの乳製品や卵など、それに豆腐や納豆です。
質の良い睡眠を心掛ける
健やかな髪が育つには、寝ている間に分泌される「成長ホルモン」が必要で、夜10時~深夜2時の間に、最も活発に分泌されると言われています。しかし、深夜遅くまで起きているなど、不規則な生活をしていると成長ホルモンも正しく分泌されず、髪の成長も妨げられます。健康な髪の毛を育てるために、規則正しい睡眠習慣を心掛けましょう。
ヘアケアを見直す
元気な毛を生やすためには、健康な頭皮が必要です。薄毛が気になる方は、毎日行うヘアケアを見直すことをおすすめします。
日本人の多くの方はほぼ毎日シャンプーで頭皮を洗います。これは世界的に見ても頻度が高いです。毎日頭皮に直接つけるものだからこそ、お肌に優しい製品を使用することをおすすめします。
アミノ酸系のシャンプーは弱酸性で低刺激、髪や頭皮のタンパク質を守りながら洗浄ができるのでおすすめです。

育毛アイテムでケアをする
育毛剤などのアイテムで頭皮環境を整えるもの、一つの対策です。日々洗顔後に化粧水や美容液、クリームなどでスキンケアしているのと同様に、頭皮や髪に良い成分が入った育毛剤でケアしてあげましょう。ただし、ドラックストアの育毛剤コーナーや、ネットで「育毛剤」と検索した時に出てくるものは男性向けで、女性の使用は禁止されているものも多い為、注意が必要です。
男性向け育毛剤・発毛剤を使ってもいい?
男性向けの育毛剤や発毛剤のなかには男性型脱毛症には効果があるが、女性には効果がない、もしくは女性の使用が禁忌とされている成分が入っていることがあるので、育毛剤・発毛剤を選ぶ際は注意が必要です。
女性が使用するべきでない、代表的な成分は「フィナステリド」と「デュタステリド」です。育毛剤・発毛剤の裏面に書いてある「有効成分」をチェックして下さい。また、血流の流れを良くする有名な発毛成分「ミノキシジル」も配合量が少ないものでしたら良いのですが、5%以上を含む医薬品つまり発毛剤の多くは、注意事項を見ると女性の使用が禁止されています。日本皮膚科学会のガイドラインでは、女性向けのミノキシジル外用薬は濃度1%が推奨されています。

女性向けの育毛剤・発毛剤は数多く販売されています。効きそうだからと男性用の育毛剤コーナーから探さずに、まずは女性向けの商品から試してみることをおすすめします。
まとめ
クリニックへ薄毛を相談しに行く予定なら、女性専門のクリニックへ行くことをおすすめします。なぜなら、女性の薄毛の原因は男性と異なることも多く、男性の薄毛の人に多い男性型脱毛症に効く薬は効果がないからです。
クリニックへ行くのを悩んでいる方は、まずは今日からできるヘアケアや生活習慣の見直しをしてみてはいかがでしたでしょうか?髪のケアをしながら体も健康になったら一石二鳥ですよね!
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