女性の薄毛|原因と今日からできる対策方法とは?

更新日:2024/03/21
毛髪診断士由樹

男性に比べて女性の薄毛は少ないとされていますが、近年薄毛を気にする女性が増加しています。

女性の場合は女性ホルモンの減少が要因となって頭髪全体の密度が低くなることが多いですが、他にも加齢、糖化、妊娠、ストレス、菌、間違ったヘアケアなど、その原因は単純ではないと言われています。

このページでは、女性の薄毛の原因と、今日からできる対策について詳しく解説をします。

この記事を書いた専門家

毛髪診断士講師&日本化粧品検定特級・由樹

公益社団法人日本毛髪科学協会の毛髪診断士®講師、日本コスメティック協会のスキンケアマイスター兼、日本化粧品検定特級コスメコンシェルジュを有する美髪・美肌研究家。日々、頭皮や毛髪、お肌について研究し、正しい情報を広める活動を行っている。

女性の薄毛の症状

薄毛の女性の頭皮

女性の薄毛は多くの場合、男性と違い生え際は保たれ、髪全体が薄くなり、中が透けたような感じになるのが特徴です。この見た目から「1カ所に限られていない」という意味の『びまん性脱毛症』とも言います。

なお、産後脱毛の場合は前頭部を中心にびまん性に脱毛します。

男性型脱毛症の方は産毛になるのが特徴ですが、女性の薄毛の場合太さは平均0.062mm。中には産毛も認められますが、多くは産毛のよう柔毛ではなく硬毛で、かつ毛数が少なくなるのが特徴です。

原因

ではなぜ薄毛になるのでしょうか?続いて女性の薄毛の主な原因について解説します。

女性型脱毛症(女性ホルモンの減少)

「女性の男性型脱毛症(FAGA)」とも呼ばれていますが、男性ホルモン依存では説明できない場合があり、現在は「女性型脱毛症」と呼ばれるようになってきました。主な原因は女性ホルモンの一種「エストロゲン」の減少です。

女性ホルモン(エストロゲン)は、皮膚をみずみずしくすると同時に、毛包の成長期期間を延長させる作用を持っています。

40歳のころから閉経にかけて、この女性ホルモンの分泌が急激に減ることによって頭頂部の毛の数が減り、細くなってしまうのです。

頭頂部から前頭部の髪の分け目が、ちょうどクリスマスツリーのように見えます。また、前頭部の生え際の毛は残ることが多いです。

加齢による変化

年齢とともに前頭部が後退したり、髪全体が薄くなる人がいます。健康な髪は2~4本の毛包(髪の根もとを包んでいる部分)が集まり、毛群という束になって生えています。この毛群の毛髪数が加齢によって減少するのです。

30代までの平均毛髪数は、頭頂部、後頭部ともに2~3本とほとんど変化が見られませんが、40代の平均毛髪数は約2.2本。50代は約2.0本と、40代を過ぎると減少していきます。さらに、伸びは遅く、ハリがなくなってきます。

糖化

老化の一現象として誰にでも起こっているのが「糖化」です。「糖化」とはタンパク質と余分な糖が結びつき、タンパク質が変性・劣化し、AGEs(糖化最終生成物)という老化物質を生成することをいいます。それにより新陳代謝を衰えさせ、老化現象を引き起こします。

このAGEsは、体の中でつくられるだけでなく、食べ物の中に含まれており日々私たちの体内に取り込まれています。糖化が進むと皮膚のコラーゲンが糖と結びつきAGEsとなって溜まっていきます。蓄積された部分の皮膚はたるみ、シワになりますし、シミもできます。

この糖化による脱毛への影響が2015年にヨーロッパで発表された研究結果で明らかになりました。体にAGEsがたまると髪の毛根にある毛乳頭細胞にもたまります。すると毛乳頭と毛母細胞がスムーズに働けなくなるため、十分に毛髪が成長しないうちの抜け毛などのトラブルが発生します。

また、糖化により皮膚を構成する主要なタンパク質であるコラーゲンが変性すると頭皮が硬化して髪の育成を妨げたり、毛根を支える力が弱まり髪が抜けやすくなることが分かっています。

ダイエット

女性の中には「綺麗になりたい。」という想いからダイエットをする人が少なくありません。肥満の状態を改善するのはもちろん良いことですが、極端なダイエットは身体を飢餓状態にしてします。

ダイエットで食事制限をしすぎたり、栄養分をとらないで満腹感を得ようとコンニャクや食物繊維類ばかりの食生活をすると、毛根にある毛母細胞も栄養不足をおこしてしまうのです。結果、切れ毛や断毛など毛の質の低下を招き、さらには、脱毛を招くことに…。

ストレス

過度なストレスは心身の健康状態に悪影響を及ぼします。そしてそれは、毛髪の成長にも影響を及ぼす可能性があります。外傷や手術でのストレスや、インフルエンザなどの高熱によるストレス、精神的ストレスなど、原因は様々。

出産

産後脱毛症は、出産後2~5カ月ころからはじまり、前頭部を中心にびまん性に脱毛します。

妊娠後期に入ると女性ホルモン(エストロゲンの分泌が増えますので、本来休止期に入るはずの毛包が、成長期期間のままとなり、脱毛しなくなります。出産が終わると、女性本来のホルモン状態に戻るため、成長期が延長されていた毛包が一気に休止期に入り、脱毛するのです。

脱毛の程度は人によって異なりますが、激しい場合には頭髪の45%に及ぶことがあります。ただし、ホルモンバランスの異常による一過性の脱毛ですので、放置しておいても約半年でもとに戻りますので、不安に思う必要はありません。

見た目が気になる場合は、太めのバンダナなどで薄い前頭部を隠して、おしゃれを楽しんで。

近年の研究では、頭皮にいる菌が薄毛や白髪の原因になっているという報告があります。

コリネバクテリウムは増え過ぎると薄毛のきっかけに

コリネバクテリウムは、日本人ほぼ全員の頭皮にいる常在菌の一つで、普段は皮脂を代謝して脂肪酸を作り出し、頭皮を弱酸性に保つ役割をしています。

ですが、コリネバクテリウムは増え過ぎると、頭皮に炎症が起こりやすくなることが分かってきました。

株式会社ミルボンが数百人に及ぶ女性の頭皮からスカルプフローラを採取して解析を行ったところ、頭皮に炎症がある人たちの頭皮には、炎症がない人の頭皮に比べコリネバクテリウムの量が異常に多いことが分かったのです。

また、培養細胞を用いた実験からコリネバクテリウムが多いと、毛根部の細胞活性を低下させてしまうことも確認されています。

老化菌!?エンテロコッカス

頭皮常在菌全体のたった0.1%存在するだけでも、髪のエイジングを加速させてしまうことから「老化菌」と呼ばれている菌があります。それが「エンテロコッカス」。

エンテロコッカスは乳酸菌の一種で、古くから腸や口の中に存在することが知られていました。これが実は、一部の人の皮膚にも存在しており、代謝の過程で過酸化水素を作り出して頭皮に酸化ダメージを与えることが近年の研究で分かってきたのです。

過酸化水素は頭皮に酸化ダメージを与え、やがて炎症にもつながる老化促進物質ですから、薄毛を発生させるリスクが高まります。

研究結果によると、20代では約30%の人の頭皮にごくわずかにしか存在しなかったエンテロコッカスが、50代になると約93%の頭皮で検出されました。そして年齢とともに、エンテロコッカスの占める割合も増加傾向にあることが分かっています。

※引用元:「印象派髪がすべて 大人髪のトリセツ」著者:伊藤廉

エンテロコッカスは顔の皮膚にいるとシワができやすいという研究結果もあります。女性としては居てほしくない菌ですね。

間違ったヘアケア

正しいヘアケアは頭髪を健康な状態に保ちますが、間違ったヘアケアは逆に頭皮や頭髪を傷めてしまいます。特に頭が痒いと感じていたり、フケが出ている人は現在のヘアケアが間違っている可能性が高いです。

頭皮を洗う際に爪を立てていたり、頭皮マッサージのつもりで硬いブラシで頭皮を叩いていると、頭皮や頭皮の下の皮下組織まで傷めかねません。

また、洗浄力の強いシャンプーの使用や、熱いお湯での洗髪は、頭皮に必要な油分まで洗い流してしまいます。逆にすすぎが不十分だとシャンプーやコンディショナーが残っていて、頭皮環境が悪化します。

血行不良による頭皮の硬さ

2015年には、「頭皮が硬い人ほど、薄毛になりやすい」という研究結果がメーカーのライオンから発表されています。

その研究によると、「薄毛グループ」は「薄毛でないグループ」と比較して頭皮が硬く、「薄毛の程度」と「頭皮の硬さ」は相関関係があることが分かっています。

さらには、薄毛グループの「頭皮の硬さ」を引き起こしているのは頭皮の乾燥で、その乾燥は「血行不良」に由来すると考えられます。

喫煙

喫煙は健康に悪影響を与えることからも想像できる通り、毛髪にも悪影響を及ぼします。

毛の成長は血流と深い関係がありますが、タバコのニコチンは血管を収縮させ、血流を低下させてしまいます。本来なら毛母細胞に血流で運ばれるはずの栄養が上手く運ばれなくなってしまうため、髪に悪影響を与えるのです。しかも、ニコチンは血流を促進するビタミンEを破壊してしまいます。

また、タバコを吸うことで、薄毛、抜け毛を引き起こすテストテロンやDHTが増加するといった研究結果がアメリカのハーバード大学から発表されています。

さらに、喫煙によって育毛に必要なアミノ酸も減ってしまいうことも分かっています。喫煙は百害あって一利なしです。あなたが今タバコを吸っていて、かつ髪の毛を太く健康にしたいのなら、ぜひ禁煙にチャレンジして下さいね。

紫外線

紫外線がお肌によくないということは皆さんよくご存じでしょう。そしてこれは、髪や頭皮にも同じ。

まず、強い紫外線を浴びると頭皮は炎症を起こします。強くなくても長時間浴び続けることで、頭皮は乾燥して硬くなりますし、頭皮で活性酸素が増えて、肌の老化が進みます。

髪の毛は紫外線ダメージよってパサつくのはもちろん、頭皮環境が悪化すれば、生えてくる毛にも影響を及ぼしてしまうのです。

薬剤

薬剤を使用した際の副作用として脱毛することがあります。報告のほとんどは、抗がん剤の細胞分裂抑制作用と、ステロイド剤の男性ホルモン作用によるもので、他の薬剤はまれです。

疾患

鉄欠乏性貧血、甲状腺機能異常症、膠原病、亜鉛欠乏症などの内科疾患、梅毒性などの感染症でも生じることがあります。

今日からできる対策

ヘアケアする中年女性

食生活に気をつける

健康な髪を保つためには、毎日の食事の中で髪に良い栄養素を取ることが大切です。ファーストフードや揚げ物などの食事を控え、バランスのとれた食生活を心がけましょう。

特に毛はケラチンという硫黄を含んだたんぱく質でできているので、含硫アミノ酸を多く含んだタンパク質をしっかり摂取することをおすすめします。

含硫アミノ酸が多い食品は、アジ、サバ、イワシ、サンマや白身の魚、脂肪の少ない鳥のささみやひれ肉、チーズなどの乳製品や卵など、それに豆腐や納豆です。

食事で摂取したタンパク質は、まず生命維持に不可欠な筋肉や内臓などに優先して使われ、髪や肌、爪は後回しにされがち。

一食あたり20gを目安に摂るようにしましょう。不足すると髪のパサつき・切れ毛などのトラブルにつながります。

質の良い睡眠を心掛ける

健やかな髪が育つには、寝ている間に分泌される「成長ホルモン」が必要で、夜10時~深夜2時の間に、最も活発に分泌されると言われています。

深夜遅くまで起きているなど、不規則な生活をしていると成長ホルモンも正しく分泌されず、髪の成長も妨げられてしまいます。健康な髪の毛を育てるために、規則正しい睡眠習慣を心掛けましょう。

質の良い睡眠をとるためには、寝る前にスマホやパソコンの画面を見る等の交感神経を活発にするような行為は控えましょう。寝る前にカフェイン入りの飲み物を飲むのもNG。

紫外線対策をする

髪や頭皮にとって強い紫外線は悪影響ですので、日傘や帽子などでしっかり紫外線対策を行いましょう。

特に春と夏は、日中10時から14時までの外出はなるべく避けて下さい。その時間帯に、1日の約半分の紫外線が地表に降り注ぎます。

紫外線対策方法

  • 日傘や帽子を活用する
  • UVスプレーを使う
  • 髪の分け目を変える
  • 10時~14時の外出を控える

ヘアケアを見直す

元気な毛を生やすためには健康な頭皮が必要。薄毛が気になる方は、毎日行うヘアケアを見直すことをおすすめします。

日本人の多くの方はほぼ毎日シャンプーで頭皮を洗いますが、これは世界的に見ても頻度が高いです。それを踏まえた上で、洗髪方法は以下のポイントを気をつけてください。

正しい洗髪方法

  • 目の粗いブラシで髪のもつれと汚れをとる
  • 38度くらいのお湯で髪と頭皮を十分に予洗いする
  • シャンプーを泡立たせてから、頭皮になじませる
  • 爪を立てずに、指の腹で頭皮を洗う
  • 洗い残しがないようによくすすぐ
  • トリートメントは髪の毛だけにつける
  • 髪をタオルで挟むようにやさしくドライ
  • ドライヤーは20㎝離す&一か所に当て続けない

毎日頭皮に直接つけるシャンプーは、洗浄力の強すぎない製品を使用することをおすすめします。

アミノ酸系やお酢系のシャンプーは弱酸性で低刺激、髪や頭皮のタンパク質を守りながら洗浄ができますよ。

入浴で体を芯から温めてリラックスを

薄毛の女性の中には、頭皮が固く凝り固まって血行不良に陥っているケースがあります。改善には湯船にゆっくり浸かって、体を芯から温めることが大切です。

さらに、入浴は副交感神経を優位にしてリラックスするのに最適。リラックスできる入浴は女性ホルモンの分泌を促しますので、ホルモンの減少による薄毛に悩む女性にはぴったり。

適切な温度は個人差がありますが、冬場は40度前後、夏場は38度前後がおすすめです。逆に、42℃以上の熱いお湯に浸かると交感神経を優位にさせ、心身を興奮状態にしてしまうので、避けましょう。

セラミド等の保湿成分が入った入浴剤を入れれば、お肌にも◎湯上りはすぐに冷えないように、あたたかい恰好をして下さいね。

頭皮をやさしく揉むようにマッサージする

先述の通り、硬いブラシで頭皮をたたくような行為はNGですが、頭皮を指の腹を使ってやさしく揉むようにマッサージすることは、頭皮の血行不良を改善するために有効です。

お風呂で髪を洗うついでにマッサージしたり、お風呂上りのドライヤーの前に、頭皮用のエッセンスや育毛剤を付けてマッサージするのがおすすめです。

育毛アイテムでケアをする

育毛剤などのアイテムで頭皮環境を整えるもの、一つの対策です。日々洗顔後に化粧水や美容液、クリームなどでスキンケアしているのと同様に、頭皮や髪に良い成分が入った育毛剤でケアしてあげましょう。

ただし、ドラックストアの育毛剤コーナーや、ネットで「育毛剤」と検索した時に出てくるものは男性向けで、女性の使用は禁止されているものも多い為、注意が必要です。

男性向け育毛剤・発毛剤を使ってもいい?

男性向けの育毛剤や発毛剤のなかには男性型脱毛症には効果があるが、女性には効果がない、もしくは女性の使用が禁忌とされている成分が入っていることがあるので、育毛剤・発毛剤を選ぶ際は注意が必要です。

女性が使用するべきでない代表的な成分は、「フィナステリド」と「デュタステリド」。育毛剤・発毛剤の裏面に書いてある「有効成分」をチェックして下さい。

また、血流の流れを良くする有名な発毛成分「ミノキシジル」も配合量が少ないものでしたら良いのですが、5%以上を含む医薬品つまり発毛剤の多くは、注意事項を見ると女性の使用が禁止されています。日本皮膚科学会のガイドラインでは、女性向けのミノキシジル外用薬は濃度1%が推奨されています。

女性向けの育毛剤・発毛剤は数多く販売されています。効きそうだからと男性用の育毛剤コーナーから探さずに、まずは女性向けの商品から試してみることをおすすめします。

女性におすすめの育毛剤・頭皮用化粧品は?

日々紫外線やドライヤーなど、日々過酷な乾燥環境に置かれている頭皮を潤すためにも、セラミドなどの保湿成分入りのものをおすすめします。

プラスで、抗炎症にはグリチルリチン酸2K、抗糖化にはプテロカルプスマルスピウム樹皮エキス、血行促進には酢酸DL-α-トコフェロール(ビタミンE誘導体)などが配合されているもの。再生医療で注目を集めているヒト幹細胞培養液も、薄毛が気になる女性にとてもおすすめです。

さらに、頭皮常在菌のコリネバクテリウムに対してはシソ科の植物エキス、老化菌エンテロコッカスに対しては、グリシン、フィチン酸が配合されたものなど、ご自身の頭皮の状態にあったものを選ぶことが重要になってきます。

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さらに、頭皮常在菌にも着目し、ヒノキチオールとグリセリンを配合。頭皮環境を整えてくれます。

クリニックに治療へ行くべき?

クリニックへ薄毛を相談しに行く予定なら、女性専門のクリニックへ行くことをおすすめします。なぜなら、女性の薄毛の原因は男性と異なることも多く、男性の薄毛の人に多い男性型脱毛症に効く薬は効果がないからです。

クリニックへ行くのを悩んでいる方は、まずは今日からできるヘアケアや生活習慣の見直しをしてみてはいかがでしょうか?髪のケアをしながら体も健康になったら一石二鳥ですよね!

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