インボイス制度で業務委託美容室は終わる!?美容師の収入は?

更新日:2021/11/11
美容室社長中村英二

インボイス制度が導入されたら、業務委託美容室の経営がひっ迫し、美容師の報酬も減り、業務委託美容室がなくなってしまうのではないか?という噂が流れていますよね。本当のところはどうなのでしょうか?制度によって美容師さんの所得や業務委託美容室経営の利益がどう変わるのか、イラストで図解しながら分かり易く解説。金額のシミュレーションや、制度開始までにやらなければいけないことも要チェックです!

インボイス制度とは?

2023年10月1日から複数税率となった消費税の仕入税額控除の金額を正しく計算する方式として導入されるのが「インボイス制度」。 正式名称を「適格請求書等保存方式」と言い、適格請求書(インボイス)とは、売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。

適格請求書とは

適格請求書(インボイス)とはどういうものかと言うと、消費税率が10%に改正された平成30年10月1日から義務付けられている「区分記載請求書」に「インボイス制度の登録番号」「適用税率」「消費税等の額」が追加された請求書のことを指します。

適格請求書と区分記載請求書と請求書等保存方式の違い

具体的には請求書に下記の内容を記載する必要があります。

  1. 発行者の氏名または名称
  2. 取引年月日
  3. 取引内容
  4. 取引金額
  5. 交付を受ける者の氏名または名称
  6. 軽減税率の対象品目である旨
  7. 税率ごとに合計した対価の額
  8. 税率ごとの消費税額及び適用税率
  9. 適格請求書発行事業者の登録番号

この適格請求書を保存することで、買手側はその消費税分を仕入税額控除として扱うことが可能になります。逆に、請求書が正しい適格請求書でなければ、買手側はその消費税分を控除できません。

そして適格請求書は「適格請求書発行事業者」でなければ発行できません。この「適格請求書発行事業者」になるためには、税務署に登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。

適格請求書発行事業者の登録方法

業務委託美容師、フリーランス美容師への影響は?収入は減る?

インボイス制度が開始したら、業務委託サロンで働く個人事業主・フリーランス美容師さんへどういった影響が考えられるのか、パターン別に見ていきましょう。なお、大きく影響が出るのは、現在年収1,000万円以下の免税事業者の美容師さんです。

インボイス制度開始後の美容師の対応表

美容室から適格請求書の発行を求められる。報酬の歩率は変わらない場合

取引先(業務委託美容室)から適格請求書の発行を求められ、応じる場合。美容師は「適格請求書発行事業者」として登録し、登録番号や税率、税額を記載した適格請求書を発行することになります。課税事業者となるため、その年の確定申告から消費税の支払い義務が生じます。それまで免税事業者だった方は消費税の支払い分、所得が減るでしょう。

美容室から適格請求書の発行を求められる。消費税分、歩率を上げてくれる場合

美容師は「適格請求書発行事業者」として登録し、登録番号や税率、税額を記載した適格請求書を発行します。消費税の支払いを考慮し、美容室が報酬の歩率を上げてくれる場合、あなたの所得は大きく変わらないで済むでしょう。

美容室から適格請求書を提出できないなら、消費税分報酬を減らすように言われる場合

取引先(業務委託美容室)から「適格請求書を提出できないなら、消費税分は報酬から差し引いた額で請求書を発行してほしい。」と言われ、応じた場合、業務委託美容師は消費税分収入が減ることになります。

美容室は適格請求書も求めず、報酬も変えない方針の場合

取引先(業務委託美容室)は、適格請求書の発行を求めないし、その分報酬も引かないで、消費税分を取引先が負担してくれる方針である場合。美容師は免税事業者のまま働けるますし、収入や所得も以前と変わらないで済みます。

中村英二

大きく上記の4パターンが考えられます。では実際、金額のシミュレーションをしてみましょう。

年収660万円の業務委託美容師さんのインボイス後収入シミュレーション

年間の売上が600万円で、消費税60万円も報酬として受け取っていた免税事業者の美容師さんの場合とします。

受け取る報酬支払う消費税
現状660万円(税込)0円
①課税事業者になる+報酬は変わらない660万円(税込)30万円※
②課税事業者になる+報酬が5%アップ663万3千円(税込)33万円※
③免税事業者のまま+報酬が消費税分下がる600万円(税抜)0円
④免税事業者のまま+報酬は変わらない660万円(税抜)0円
※簡易課税方式を適用した場合
中村英二

働く美容師さんにとって一番嬉しいのはもちろん「④免税事業者のまま+報酬は変わらない」でしょう。これなら、面倒な登録作業や、消費税の支払いを気にしなくて済みます。

この中で一番収入が下がるのは「③免税事業者のまま+報酬が消費税分下がる」となった場合です。これは10%の消費税が報酬として支払われないため、報酬が高かった方ほど、減額が大きく感じますね。

簡易課税方式とは?

簡易課税方式とは、ざっくりいうと、事業区分毎に決められた「みなし仕入率」を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額として、売上に係る消費税額から控除できるというものです。

サービス業は50%ですので、支払う予定の50%は控除できます。その為、インボイス制度が開始し課税事業者になった後も、売上の10%を消費税として支払うのではなく、実際には売上の5%程度の支払いで済むということです。

美容室オーナーに早めに確認を!

今後の収入が気になる方はご自身が現在働いている美容室がどの方針を取る予定なのか、オーナーに早めに確認を取ることをおすすめします。収入が下がる可能性がありますし、「適格請求書発行事業者」登録が必要な場合もあります。

また、「現在、業務委託美容室への転職活動真っ最中!」という方も、インボイス制度導入後の報酬はどうなるのか、サロン見学時にでも質問しておきましょう。

適格請求書発行事業者の登録方法

業務委託美容室への影響は?

続いて、インボイス制度が開始したら業務委託美容室はどうなるのでしょうか?噂通り、経済状況は悪くなるのか?影響とやるべき対策をみていきましょう。

インボイス制度開始後の美容室の対応表

美容師に「適格請求書」を発行してもらい、報酬は変えない場合

働いている業務委託美容師さん全員に「適格請求書発行事業者」として登録してもらい、請求書を「適格請求書」の形式で発行してもらう場合、美容室はこれまで同様、報酬に係る消費税分の仕入額控除が受けられます。また、美容師への報酬も変えないため、お店のキャッシュは変わらないで済みます。

美容師に「適格請求書」を発行してもらい、報酬を上げる場合

働いている業務委託美容師さん全員に「適格請求書発行事業者」として登録してもらい、請求書を「適格請求書」の形式で発行してもらいます。さらに、課税事業者となって消費税を払うことにより所得が減少する美容師さんの為に、報酬の歩率を上げることにしました。その場合、報酬の歩率を上げる為、その分人件費が上がり、お店のキャッシュが減るでしょう。

美容師が免税事業者のままなので、消費税分報酬を下げる場合

働いている業務委託美容師さんが免税事業者のままの場合、「適格請求書」を発行してもらえません。なので、美容師の報酬を消費税分引いた歩率に変えることとしました。報酬を下げたので、仕入れ額控除は受けられずとも、お店のキャッシュは大きくは減らないでしょう。

美容師が免税事業者のままで、報酬は変えない場合

働いている業務委託美容師さんが免税事業者のままの場合、「適格請求書」を発行してもらえません。その場合、美容師の報酬に係る仕入れ額控除が受けられません。(経過措置期間あり)

さらに、美容師さんの報酬も以前のまま変えないのであれば、お店のキャッシュが以前よりも減るでしょう。

中村英二

業務委託美容室のオーナー側は、働いてくれる美容師さんたちに「適格請求書発行事業者」登録を求めるのか否か、それに伴い収入を上げるのかなどの経営判断が求められます。

年間売上7,000万円の業務委託美容室のインボイス後キャッシュシミュレーション

年間の売り上げが7,000万円で、利益が1,500万円の美容室の場合とします。なお、業務委託料は売上の50%と仮定します。

利益仕入額控除後の消費税額キャッシュイン
現状1,500万円0円1,500万円
①美容師に適格請求書を発行してもらう+報酬は変えない1,500万円0円1,500万円
②美容師に適格請求書を発行してもらう+報酬を5%上げる1,482万円0円1,482万円
③美容師が免税事業者のままなので、消費税分報酬を下げる2200万円700万円1,500万円
④美容師が免税事業者のままで、報酬は変えない1,500万円700万円800万円
中村英二

上記の表はものすごくざっくりではありますが、美容室のキャッシュの状況はどれを選ぶかによって大きく変わってくることがわかりますね。

なお、経営者の方ならお分かりだとは思いますが、お店の機材や内装、備品の買い付け先が「適格請求書」を発行してくれれば、その分は仕入れ控除額に含むことができます。その為、たとえ人件費の消費税分の控除が0になっても、控除全てが0になることはないでしょう。

早めにキャッシュをシミュレーションして、適切な経営判断を!

ご自身のサロンの数字を当てはめて、全てのパターンでシミュレーションをしてみて下さい。そして、控除額が減りお店のキャッシュが減るリスクと、美容師の収入が減ることで起こりうる離職のリスクを天秤にかけて、どちらかを選ばなくてはいけません。スタッフから質問された時に、しっかり返答できるように早めの決断をおすすめします。

サロンのお客様への請求書を「適格請求書」にすべき?

基本的にサロンへいらっしゃる一般消費者は、消費税云々の話がないので、適格でない請求書を受け取っても影響はありません。ただし、中には事業者のお客様で、サロンで使ったお金を経費で落とす方もいらっしゃるでしょう。その場合、「適格請求書」でなければ、仕入税額控除できないため、それをきっかけにサロンを変えてしまうなんてこともあるかもしれません…。

経過措置について

インボイス制度は2023年10月1日からスタートですが、しばらくは「経過措置」期間があります。ですので、「適格請求書発行事業者」以外からの仕入れに関わる消費税額の控除が、2023年10月1日から一気に0になるわけではありません。

インボイス制度の経過措置

2023年10月1日~2026年10月1日までは、80%の控除が認められます。2026年10月1日~2029年10月1日までは、50%の控除が認められます。よって、「適格請求書発行事業者」以外からの仕入れに関わる消費税額の控除が不可となるのは、2029(令和11)年10月1日以降です。

適格請求書発行事業者の登録

登録はいつからできる?

適格請求書発行事業者への登録申請は2021(令和3)年10月1日から提出が可能です。2023(令和5)年10月1日から登録を受けるためには、原則として2023(令和5)年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。

登録方法

登録するには、納税地を所轄する税務署長に対して登録申請書を提出する必要があります。提出方法は下記の3種類です。

  1. 所轄の税務署へ持参
  2. 所轄の税務署へ郵送
  3. e-Taxを利用した電子提出

e-Taxならご自宅のパソコンや、スマートフォンから簡単にできるのでおすすめです。必要なものも下記の2つだけです。

【事前に準備が必要なもの】

  • 電子証明書(マイナンバーカード等)
  • 利用者識別番号等
中村英二

e-Taxでの登録方法は、下記リンクの国税庁のホームページにあるマニュアルに詳しく書いてありますので、ご確認下さい。

まとめ

インボイス制度が開始したら、全ての業務委託美容師の報酬が下がるわけでも、業務委託美容室がなくなるわけでもありません。美容室毎の方針によって、美容師さんの報酬が下がる場合も、変わらない場合もあります。ですので、気になる美容師さんは早めにご自身のサロンオーナーに確認をしましょう。また、今転職先を探している方も、サロン見学時にでも、インボイス制度開始後のサロンの方針を聞いておくことをおすすめします。

業務委託美容室のオーナーにとっては、難しい経営判断となるかもしれません。キャッシュに余裕があるサロンであれば、今までの報酬を保証してあげることが一番良いとは思いますが、経済状況によっては苦しくなるかもしれませんね。今回挙げた4パターンを自身のサロンの数値に置き換えて、シミュレーションをすることをおすすめします。共に美容室業界を盛り上げる為に頑張りましょう!

この記事を書いた人

中村英二

神奈川・東京に大型美容室Anphiを複数店舗展開する会社、株式会社イーグラント・コーポレーションの社長。「美容師ファースト」を掲げ、日々より良いサロン創りに奮闘中!

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