男性美容師は要注意!人生で最も体臭が発生する年代と、その対策とは?

更新日:2024/11/08
毛髪診断士由樹

近年では体臭や口臭などによって周囲の人に不快感を与える「スメルハラスメント(スメハラ)」という言葉が世間で使われる程、ニオイに対して敏感な人が増え、ドラックストアではさまざまなニオイ対策グッズを目にするようになりました。

ただ、体臭にも種類があり、発生部位や、年代による発生量が違うため、するべき対策も変わってきます。特に、30代後半から40代のミドル世代男性の後頭部から発せられる”使い古した油”のようなニオイは、美しいヘアスタイルを提供する美容師としては、見過ごせないでしょう。

このページでは、代表的な3つの体臭の特徴とその対策について、美容師さんに知っておいてもらいたいポイントを詳しく解説します。

この記事を書いた専門家

毛髪診断士講師&日本化粧品検定特級・由樹

公益社団法人日本毛髪科学協会の毛髪診断士®講師、日本コスメティック協会のスキンケアマイスター兼、日本化粧品検定特級コスメコンシェルジュを有する美髪・美肌研究家。日々、頭皮や毛髪、お肌について研究し、正しい情報を広める活動を行っている。

人生の中で最も体臭が発生しやすい時期は40代

男性の体から発生するニオイで代表的なものと言えば、「汗臭」「ミドル脂臭」「加齢臭」の3種類です。

それぞれ臭いの原因や発生部位は異なりますし、年代によってニオイの強さに変化があります。

体臭別、ニオイ指数の推移

※引用元:https://www.lucido.jp/library/smell/

40代では、汗の臭いである「汗臭」に加え、「加齢臭」が発生しはじめ、40才前後でピークとなる「ミドル脂臭」も加わります。

つまり40代は、3種類のニオイが混じり合う、人生の中で最も体臭が発生しやすい時期といえるのです。

汗臭

主に脇から強く感じられる「汗臭」は、新陳代謝が活発な10代半ば~20代半ばに強く感じます。汗臭は、皮膚にいる常在細菌が、汗や皮脂をエサとして代謝することで発生。汗をかきやすい脇を中心に発生し、酸っぱいニオイが特徴です。

汗臭の対策

まず一番の対策は、汗をかいたら早めにシャワーで洗い流すこと。シャワーをあびられない時は、汗を特にかいたと感じた部分だけでも水洗いしたり、ぬるま湯で濡らしたタオルでやさしくふき取るだけでもOK。

なお、シャワーは1日に何回浴びても大丈夫ですが、石鹸やボディソープの使用は1日1回まで。特に強いアルカリ性の石鹸で何度も洗うと、肌荒れの原因になります。

制汗剤やシートを利用するときは、アルコールフリーで刺激が強すぎないものを選びましょう。

スプレータイプの制汗剤を一度に全身にかかるほど大量に使用すると、汗が正常に出なくなり熱中症のリスクが高まることもあるので、やりすぎには注意して下さい。

汗=嫌なもの・余計なものととらえがちですが、本来は身体の体温調整や、体内の余分なものを排出するという、身体にとって大事な役割があるということも忘れないでくださいね。

加齢臭

「加齢臭」は、40代から徐々発生しはじめ、50代半ば以降から本格的に発生するニオイで、古本や枯れ草のようなニオイに例えられています。

私たちの体は、皮膚のうるおいを保つために皮脂を分泌していますが、年齢を重ねると皮脂中の「パルミトレイン酸」が増加します。このパルミトレイン酸と皮脂が酸化して生じる「過酸化脂質」が結びつき、皮膚常在菌によって酸化・分解されてできる物質の一つが「ノネナール」で、これが加齢臭の原因です。

加齢臭の対策

加齢臭は食事を見直すことで抑えられます。動物性脂肪の摂りすぎに注意し、酸化を抑制する食品がよいといわれています。例えば、ビタミンCを含む柑橘類や、ビタミンEを含むかぼちゃやアーモンド類。また、ポリフェノールを含む豆乳やごまなどを積極的にとりましょう。

入浴時には、加齢臭の発生部位である背中の洗い残しがないように注意することがポイントです。

なかなか洗濯できない冬用の上着などにはニオイが蓄積しやすいです。衣類用の消臭スプレーを使用するとよいでしょう。Yシャツなどのトップスは、冬場で汗をかいていないと思っても、必ず毎日洗濯を。

加齢臭に関与する物質の一つである「過酸化脂質」の生成は、紫外線や熱により加速しますから、紫外線対策をすることは加齢臭対策になります。

ミドル脂臭

ミドル脂臭とは、30代から40代の男性の後頭部から発せられる、不快な油っぽいニオイのこと。

2013年にメーカーの株式会社マンダムが発見し、命名されました。それまで、30代・40代の男性の頭皮臭は、「加齢臭」や「汗臭」と区別されていませんでした。しかしミドル脂臭が発見された現代では、加齢臭とも汗臭とも異なる、ミドル世代特有の体臭として知られています。

30代、40代の男性美容師のみなさん、「自分が使っている枕の色が変わっている…」「枕から油っぽいニオイがする」という経験はありませんか?それこそ、“ミドル脂臭”です。

ミドル脂臭の原因

ミドル脂臭の原因物質は、頭部とその周辺から発生する「ジアセチル」です。ジアセチルは、皮膚の上に存在する「ブドウ球菌」が、汗の中に含まれる「乳酸」を取り込んで代謝することにより、発生します。

さらに、毛穴の中にある皮脂腺からは、皮脂が分泌されています。皮脂の中に含まれる「中鎖脂肪酸」の油臭いニオイと、ジアセチルのニオイが混ざり合うことで、さらに強い悪臭となって漂います。これが、ミドル脂臭の臭いニオイの正体です。

ジアセチルはのニオイはお酢の120倍!?

ニオイ成分 酢酸(酸臭) ジアセチル イソ吉草酸(足臭) メチルメルカプタン(口臭)
嗅覚闘値(ppb,in air) 6.0 0.050 0.078 0.070
酢酸との闘値比較 1 1/120 1/77 1/86

ジアセチルは、酢の主成分である酢酸の1/120の量でもニオイを感じ、口臭や足臭の原因成分よりも少量でニオイを感じる成分です。さらに、加齢臭の原因物質である「2-ノネナール」に比べ、空気中に広がりやすいという特徴もあります。

※引用元:株式会社マンダム|30~40歳代男性特有のミドル脂臭の正体

美容師こそ知っておきたい!ミドル脂臭対策

後頭部を中心に発生する強烈なニオイであるミドル脂臭こそ、美容師さんが対策を詳しく知っておきたいですよね?続いて対策方法を詳しく解説します。

正しいシャンプーの仕方で頭皮を洗う

ミドル脂臭は前述のとおり、後頭部・首の後ろを中心に発生します。そのため、シャンプーの仕方はとても重要です。

特にいつもさっと済ませている人は要注意!落とすべき皮脂が落とし切れていなかったり、シャンプー剤のすすぎ残しのせいで臭っている可能性があります。少し面倒に感じると思いますが、ぜひ今夜から以下の洗い方を取り入れてください。

  1. 髪と頭皮を目の粗いブラシでやさしくブラッシングして、付着した汚れを浮かせる
  2. 38℃程度のぬるまゆでしっかり予洗いする。目安は1分半程度
  3. シャンプーを手に取り、しっかり泡立ててから頭皮につける。泡立てネットを使うとより効果的!
  4. 指の腹を使って、マッサージするように頭皮を揉み洗いする。特に後頭部や耳の後ろは特に入念に
  5. シャンプーが頭皮に残らないように十分にすすぐ。目安としては洗っていた時間の2倍の時間をかけて
  6. コンディショナーやトリートメントは頭皮に付けずに、髪だけにつける
  7. 最後のすすぎも洗い残しがないよう、ぬめりがなくなるまでしっかりと!

    皮脂をしっかり落とそうとして、ゴシゴシ強い力で頭皮をこすり洗いしたり、爪を立てマッサージする行為は、頭皮を摩擦によって傷つけ、頭皮環境を悪化させるためNGです。

    強い力で落とすのではなく、お湯と泡、そして優しい揉み洗いで、余分な皮脂を取り除き、頭部を清潔に保ちましょう。

    酸っぱい物を食べ、脂っこい食事を控える

    ジアセチルの元となる『乳酸』は、酸っぱい食べ物を食べることで減少させることができます。というのは、酸っぱい食べ物に含まれるクエン酸や酢酸は、乳酸を水と炭酸ガスに分解するはたらきがあるから。

    一方で脂っこい食事を取れば取るほど、皮脂が増えて、ミドル脂臭の脂臭いニオイを増幅させてしまいます。脂っこい食事は、できるだけ控えましょう。

    おすすめの酸っぱい食べ物避けたい脂っぽい食べ物
    • お酢(穀物酢、黒酢、りんご酢、もろみ酢など)
    • 柑橘類(レモン・みかん・グレープフルーツなど)
    • 梅干し
    • 脂身の多い肉類(サーロイン、豚バラ肉など)
    • 動物性脂肪の多い乳製品(バター、生クリーム、チーズなど)
    • スナック菓子、カップラーメンなど
    • アイスクリームやケーキなどの洋菓子

    その他にも、野菜・魚・大豆・きのこを中心とした和食には余分な脂質が含まれない料理が多く、ミドル脂臭を抑えやすくなるためおすすめです。

    汗をかく運動・入浴を習慣にする

    本来、汗腺は「ろ過」の工程でアンモニアなどを再吸収し、ニオイ成分の残っていない汗を排出します。しかし、汗腺が衰えるとろ過の工程が不十分となり、ニオイ成分の残った汗を排出します。汗腺の衰えを防ぐためには、普段から汗をかいて、汗腺の機能を鍛えることが大切です。

    毎日30分程度、ジョギングなどの有酸素運動で汗を流せると理想的。運動が難しい場合は、入浴やサウナを利用して、定期的に汗を流すようにしましょう。

    有酸素運動や入浴などは、汗腺の機能を鍛えることはもちろん、血行を促進するメリットがあります。血行が悪くなるとジアセチルの元となる「乳酸」が体内に溜まりやすくなりますから、血行促進することは、ミドル脂臭対策としても有効なのです。

    入浴の際に、頭皮はもちろん、全身のマッサージを定期的に行うことで、血行を良くしましょう!

    紫外線から頭皮を守る

    頭皮がダメージを受けると、皮膚常在菌のバランスが崩れ、雑菌が繁殖しやすくなります。頭皮環境の悪化はジアセチルの生成にも影響を与えますから、紫外線から頭皮を守るように心掛けてください。

    外出時には「帽子」をかぶり、頭皮に降り注ぐ紫外線を物理的にシャットアウト。帽子による頭皮の蒸れが気になる方は、日傘の使用をおすすめします。最近では、シンプルなデザインの男性用の日傘も市販されており、男性の日傘も珍しくなくなっています。

    日傘は、頭皮だけでなく顔も紫外線から守ってくれ、肌老化対策にもなります。この機会にぜひ、日傘デビューをしてみませんか?

    禁煙する

    タバコに含まれるニコチンには、強い血管収縮作用があるため毛細血管を収縮させます(出典:ニコチン | e-ヘルスネット(厚生労働省))。

    せっかく運動や入浴などで血行を促進しても、タバコを吸ってしまったら、ニコチンの影響で血流が悪くなってしまいます。はっきり言って台なしです。

    さらに、タバコのニオイとミドル脂臭が混ざり合うと、とんでもない悪臭に!体臭を気にするのなら、まず喫煙をやめましょう!